イランがイスラエルに対し、180発以上のミサイルを発射しました。報復の連鎖が全面戦争に発展する恐れはあるのか、外報部デスクに聞きました。
■報復の連鎖…イランが大規模攻撃
空襲警報が鳴り響き、エルサレムの上空にはいくつもの光の玉。時にそれは閃光(せんこう)を放ちました。
イランがイスラエルに向けて発射したミサイルです。
エルサレムにいるテレビ朝日の記者が避難したのは、ホテルの地下シェルター。その最中にも…警報が鳴りました。
避難した男性 「列車に乗っている時に携帯の警報が鳴りました。子どもたちを怖がらせたくなかったが、走って逃げた」
イランが放った弾道ミサイルは180発以上。イスラエル軍はその大半を迎撃したと発表しました。
中東に駐留するアメリカ軍も迎撃に加わっています。
アメリカ バイデン大統領 「分析中ではあるが、現時点の情報では攻撃は阻止され無力化された」
ただ一部のミサイルは着弾しました。
被害は出ているものの、イスラエル側の死者は確認されていません。
また、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸にもミサイルが落下し、パレスチナ人1人が死亡したと報じられています。
イランのペゼシュキアン大統領はSNSに「正当な権利に基づき、断固たる対応をした」と投稿しました。
7月から先月にかけては、イランを訪問していたパレスチナのイスラム組織「ハマス」の政治部門トップ、レバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」の最高指導者が相次いでイスラエルに殺害されています。
ヒズボラは1982年、イスラエルがパレスチナ・ゲリラ掃討を名目にレバノンに侵攻した際、抵抗組織として誕生。イランが創設に関わり、支援を続ける組織です。
イランは4月にもドローンやミサイルでイスラエルを攻撃していますが…。
アメリカ国防総省 ライダー報道官 「今回の攻撃は大規模で前回の2倍程度でしょう」
イスラエルのネタニヤフ首相は反撃を示唆しています。
イスラエル ネタニヤフ首相 「イランは大きな間違いを犯した。代償を支払うことになる」
■全面戦争になる?外報部デスク解説
報復の連鎖で全面戦争の恐れはあるのでしょうか。その答えは「イランが攻撃に踏み切った理由にある」と中東取材を続ける外報部・荒木デスクはそう指摘します。
テレビ朝日外報部 元カイロ支局長 荒木基デスク 「イランは直接攻撃を受けた訳ではありません。ただ、イランが直接支援するガザ地区のハマスやレバノンのヒズボラの指導者が相次いで殺害されました。これは、イスラム教シーア派世界のリーダーを自認するイランとしては、主権が侵されたという意識を持っています。こうした国内の世論に対して、イランの指導部が何もしない訳にはいかなかった、それが報復として今回の攻撃につながったわけです」
そのイラン、イスラエルの反撃があれば「より破壊的で破滅的になる」と警告していますが、本音はそうでもないようです。
荒木基デスク 「本音ではイランも全面戦争など望んでいません。今回のイランの攻撃の程度を見ると、イスラエル側がある程度防ぐことができるくらいにとどめているようにも見えます。つまりイスラエルの被害は最小限にとどめつつ、イランの側のメンツも立つ、ここで一度打ち止めにしたいとの思惑が感じられます。この後。イスラエルの反撃が限定的なものにとどまれば、全面戦争という事態にまでは至らないと考えられます。しかし、イスラエルでは『イランの核施設に報復攻撃する計画』も伝えられ始めていて、攻撃の規模によっては事態がさらに悪化する可能性も捨てきれません」
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