宮城県大崎市は、2023年春、市役所の建て替えに伴い、敷地内にある樹齢350年以上のクロマツを伐採することにしています。これに対し、一部の市民から、歴史的な意義のあるクロマツを残してほしいという声があがっています。

 こちらが、そのクロマツです。

 高さは、15メートルから20メートル、根元の幹回りは3メートルを超えます。

 クロマツのある大崎市役所は、江戸時代には「代官所」。

 明治・大正期には「志田郡の役所」が置かれてきました。

 江戸初期に植えられたとみられるこのクロマツは、350年にわたり大崎の政治を見守ってきたことになります。

 大崎市の郷土史家・大友文博さん。

 クロマツは市民共有の財産だとして保存を求めています。

【大友文博さん】「この場所がそもそも歴史的な場所。工事する(大崎市)側から見れば簡単に撤去すればと思うかもしれないが、やはり歴史の証人でもあり、ここに残してほしい」

 大崎市は、5月に新しい市役所の運用が始まったらクロマツを伐採し、跡地を駐車場にする予定です。

 クロマツを残した場合、駐車場利用者の安全に問題が生じると話します。

【大崎市財政課 高橋学副参事】「倒木、落枝であったり落雪の危険性があること。駐車場を利用する方々の安全性、利便性を確保するために庁舎前のクロマツは伐採する必要があると判断しております」

 これに対し大友さんは、クロマツの周りをロータリーにして囲えば安全性は保て、観光にも活用できると訴えます。

【大友文博さん】「(ロータリーなら)周りが駐車場になって空間になりますので、エリアとしては非常に(クロマツが)目立つ場所になる。観光とか市民の郷土愛を高める様なものにして欲しい」

 クロマツを残すべきか、市民の間でも意見は分かれます。

【伐採に反対の市民】「こんなに大きくて立派な松なので、子供や孫の代まで残して文化を1つでも多く残してあげたい」

【伐採に賛成の市民】「きれいな駐車場になるためには松は邪魔になるのかなと思う」

 市は伐採に反対する市民にも配慮し、同じDNAを持つクロマツを育て移植したいとしています。

【大崎市財政課 高橋学副参事「健康な台木に接木をして育成することで、クロマツの遺伝子を保存する方法を進めています」