ビントロで知られるビンチョウマグロの水揚げが好調です。2022年の記録的な不漁から一変した状況に関係者からは喜びの声も上がっていますが、この豊漁はいつまで続くのでしょうか。

 宮城県の気仙沼漁港では、半月ほど前からビンチョウマグロの水揚げが好調です。

 今シーズンの水揚げ量は24日時点で約7000トン。2022年はわずか6トンと記録的な不漁だっただけに、関係者からは喜びの声が上がっています。

 気仙沼漁協臼井靖参事「3年前に1万1000トン強の水揚げをしましたが、それに次ぐような勢いではないかなと思っています。(今後、一本釣り船は)カツオ漁に変わっていきますけども良いスタートを切ったのではないかなと思います」

 この日、魚市場には気仙沼市の水産加工会社ミヤカンの社長、福島康夫さんの姿がありました。

 ミヤカン福島康夫社長「前年1年間本当に無かったものですから、待ちに待ったこの気仙沼のビンチョウが上がってくれて大変喜ばしいことだと思っています」

 ミヤカンでは、ビンチョウマグロを使ったツナ缶を製造しています。ほとんど水揚げが無かった2022年は、ツナ缶の出荷を一時停止するなど厳しい状況でした。

 ミヤカン福島康夫社長「通常であれば毎月生産のタイミングがあったんですけど、2022年は原料が手配できなくて手持ち原料でしか回せなかったものですから、製造のできない月が何カ月かありました。やはり漁があって水揚げが続く限りは、私どもの使用量に合わせて買い増していきたいなと思っております」

 それにしても、なぜビンチョウマグロが豊漁となっているのでしょうか。マグロに詳しい専門家は次のように話します。

 水産資源研究所青木良徳主任研究員「熱帯・亜熱帯で生まれた後、その一部が日本周辺まで北上回遊してきます。黒潮の蛇行によって黒潮からの暖かい水が、房総から常磐沖にかけて暖かい水が北の方まで移動して、その中にビンチョウが入り込んできて、結果的にその海域での豊漁につながったと考えています」

 ビンチョウマグロの豊漁はいつまで続くのでしょうか。

 水産資源研究所青木良徳主任研究員「東の方へ移動しようとしても冷たい水があったんですけど、もう冷たい水も暖かくなってきているので6月中には東の方に移動してもおかしくないとみています」

 【ビンチョウマグロの豊漁につながっている黒潮の大蛇行ですが、この影響で不漁になるものもあります。サンマです。サンマは冷たい海に向かって南下してきます。黒潮の大蛇行によって三陸沖の水温が上昇し、サンマが日本から離れていっていて秋以降も水揚げ量の回復は厳しい見通しとなっています。

 海水温によって取れる魚も変わってくるので、漁業関係者にとっては大きな問題となっています。