犬や猫の飼い主が適正に飼育できない状況に陥る、多頭飼育崩壊です。動物愛護団体に寄せられる相談は後を絶ちません。多頭飼育崩壊の現場を取材しました。

 仙台市青葉区にある一軒家を活用した保護施設。生後数週間とみられるこちらの猫は、猫屋敷と化した仙台市内や県北部の住宅から保護されました。
 上野比呂企アナウンサー「本当に普通に猫たちは生きてるだけなのにって思ってしまいますよね」
 おりたてネコものがたり岩渕涼代表「本当に、本当に偉いなと思います。涙が出ちゃった。多頭(飼育)はやっぱり怖いです。多頭にならないうちになんとか手があれば」

ほとんどが多頭飼育崩壊からの保護

 猫を保護したのは青葉区の動物愛護団体、おりたてネコものがたりの岩渕涼さん(64)です。現在、保護している猫は、多頭飼育崩壊の現場から保護したケースがほとんどです。
 おりたてネコものがたり岩渕涼代表「(猫を保護する住宅は)高齢者の方が今もずっと多いんですけど、高齢者の方が避妊できずに誰にも言えずに。(情報提供を受けて)そこに入った時に1匹2匹だろうなと入るんですけど、数えたら40匹、えーとかっていうのばっかりです」

 岩渕さんは、これまで自宅の空いたスペースを活用し、多い時では120匹以上の猫を保護していました。5月からは、支援者の協力で仙台市青葉区中山に一軒家を無償で借り、この場所で約100匹の猫を保護しています。
 おりたてネコものがたり岩渕涼代表「(この部屋にいる)この子たち35匹急に来たので避妊、去勢しなくちゃいけない」

立ち退き部屋に取り残される

 保護した35匹がいた多頭飼育崩壊の現場です。この一軒家に住んでいた80代の男性が家賃を払えず、立ち退きした後の部屋の中に取り残されていました。
 大家「全然連絡が取れない時期があって、警察に入ってもらったことがあったんですよ。それで猫が(視界に入っただけで)20匹近くいたって」

 この家でのペットの飼育は禁止されていました。
 岩渕さん「(掃除したので)結構、きれいにはなっているんですけど」
 上野アナウンサー「確かに、臭いは結構残ってますね」
 おりたてネコものがたり岩渕涼代表「ここはこのままですけど、天井から猫がどんどん降ってくるので、ここで捕獲器をかけて捕獲器に入った順から持って行って、1カ月近くは通っているかいないか確かめました」

 なぜ、多頭飼育崩壊に陥ったのか。猫は繁殖力が極めて高い生き物です。妊娠期間は約2カ月で、一度に出産する数は4匹から8匹です。
 ほぼ100%妊娠するため、環境省では計算上1匹のメス猫から1年後には20匹以上、2年後には80匹以上、3年後には2000匹以上に増えると試算しています。

多頭飼育崩壊の苦情

 国が全国で実施したアンケート調査によると、2018年に寄せられた多頭飼育に関係する苦情は2149件で、このうち3割以上が10匹以上飼育しているというものでした。
 岩渕さんの団体への相談は、年に1件あるかないか程度でしたが、2021年11月以降、40匹近く保護してほしいという相談が6月までに3件も相次いでいます。いずれも一人暮らしで経済的困窮が原因とみられています。

 9日、岩渕さんに宮城県北部に住む50代の男性から助けを求めるメールが届きました。
 「飼っている猫のことで悩んでいます。私は一人暮らしです」
 幼いころから猫を飼っていた男性。
 助けを求めた男性「(飼っていたのは)1匹から2匹くらいでした。管理できなくなったのは2、3年くらい前からです」

 経済的にゆとりはなく、猫に避妊・去勢手術はしていませんでした。その結果、出産を繰り返し約40匹に増えたのです。
 男性は、住宅ローンを払うことができず、近くここを退去しなければなりません。19匹は既に岩渕さんが保護していて、残る20匹ほどは栃木県の愛護団体が保護することになっています。
 助けを求めた男性「増えないように去勢とかした方が良かったんじゃないかなと思いますけど」

不幸の連鎖を断ち切るために

 不幸の連鎖を断ち切るために避妊・去勢手術が欠かせません。
 おりたてネコものがたり岩渕涼代表「やっぱり1人ができる範囲の頭数って確かにあるんです。だからやはり避妊・去勢で受診する先をきちっと決めて、ボランティアさんにそういうのは相談しながら進めていけば、なんとか自分でもやれるんじゃないかと思いますね。増やさない、自分ができる範囲の猫ちゃんを飼育できるのが一番」