17日深夜、愛媛県と高知県で最大震度6弱を観測する地震があり、これまでに12人がけがをしています。

最大震度6弱に見舞われた高知県宿毛市。被害が大きかったのが、市中心部の飲食店です。 居酒屋『酒菜 八坂』店主・西田友和さん:「ひどいと思っていたけど、ここまでひどいかと。(地震が)くるくると思っていたけど。予約も入っていたし、これからの営業どうしようかと」

近隣の別の居酒屋では、壁がはがれ落ちる被害も出ました。 居酒屋『三階』店主・中田常博さん:「揺れがすごかった。こっちにでてきたらぐちゃぐちゃ。天井が落ちて店に入れなかった」

街の中には、崩落して半分がなくなった橋。子どもたちの学び舎に地割れも確認されました。

同じく、最大震度6弱が観測された愛媛県愛南町。石垣が並び、観光客も訪れる場所ですが、一部が決壊しました。

愛媛県と高知県を結ぶ幹線道路は、土砂崩れで一時通行止めになりました。

今回の地震、人的被害は多くはありません。しかし、高知も愛媛も震度6弱を経験するのは初めてです。 揺れを感じた瞬間、住民の脳裏をよぎったのは。 住民:「南海トラフが来たのかと。津波が怖かったです」 住民:「地震が起きた瞬間、津波を連想して、高台に逃げた人がいました」 住民「何が心配って、地震もだけど、津波ですよ」

今回、震度6弱が観測された愛南町や、5強が観測された宇和島市は、どちらも、南海トラフ地震が発生すれば、高い津波に襲われると警戒されている地域です。気象庁は、南海トラフ地震とは発生のメカニズムが異なるため、今回の地震による影響ないと説明しています。

もし、次くる地震が南海トラフだったらどうすればいいのか。 愛媛県の西の端に位置する伊方町。“日本一細長い半島”と言われる地形なのですが、国道は1本だけ。そのため、ある取り組みが進められています。

国道が通行不可になったとき、自分たちで道を切り開けるよう、チェーンソーの訓練を住民たちが行ってきました。 リゾート地区自主防災会長・福岡十四男さん:「特にここは傾斜地が多いので、道路が狭くて、木が生い茂っていて、倒木は、常に頭に入れておいたほうがいいなと。(行政からの支援を)期待してもタイムリーに来るとはわからない。来てもらったらラッキーだというくらいに思った方が」

住民たちが行政の支援について不安に思うのはわけがあります。県の想定では、ヘリの物資輸送が可能ということを理由に、伊方町は南海トラフが起きても孤立集落が出ないとされているからです。町としては、この想定の見直しを考えているといいます。 伊方町役場総務課・畑中保人さん:「個人的には孤立ゼロはないだろと思います。国道197号がメインになっているんですが、土砂崩れ等により、道がふさがれると、行く先がなくなる集落もあるのでは。細い半島ですので」

大災害が起きたとき、最も大事なインフラである水道。今回は、その対応の早さを感じさせる場面もありました。 高知市や四万十市から駆け付けた給水車。宿毛市が断水したわけではないですが、少し濁った水が出るため、派遣されました。特筆すべきは、18日午前9時半には、給水が始まるという迅速ぶりです。

南海トラフへの備えは、海を挟んだ九州でも始まりました。 今年2月、大分県佐伯市に九州で初めてとなる“ひずみ計”が設置されました。ひずみ計とは、地下の岩盤プレートの伸び縮みを観測する機器。南海トラフの想定震源域の各所に設置し、大地震の予測に活用されているのですが、西の端である大分にはありませんでした。

ひずみ計は、廃校となった小学校のグラウンドの地下550メートルに埋め込まれています。1000キロの岩盤が、わずか1ミリ、動いただけでも覚知できるといいます。

いつ、どこで大地震が起きるか予想しづらい南海トラフ。重要なのは、その予兆をより細かく、広範囲でとらえることだといいます。

産業技術総合研究所・板場智史主任研究員:「(プレートの境界がゆっくり沈む)スロースリップは、実は豊後水道や日向灘でも起こっていることがあって、詳しく把握するためには、起こっている場所を取り囲むような観測をする必要があります。(九州での設置で)西側の情報がより増えることになるので、どの範囲が滑っているのか、どのぐらいの滑り量なのか。より詳しく正確に把握できるのではと期待しています」

◆改めて警戒感が高まっている南海トラフ地震。発生した場合、最大震度7、津波の高さが最大30メートル超で、最悪の場合、30万人以上の死亡が想定されています。

南海トラフ地震とは、陸側のユーラシアプレートと、海側のフィリピン海プレート、2つのプレートの境界で発生する地震です。

17日の地震は、海側のプレートの内部で発生。気象庁は、発生のメカニズムが南海トラフ地震と違うとしています。

そして、もう1つ、過去に南海トラフ沿いで起きた地震には、大きな特徴があります。震源域の東側と西側で、“時間差”で大きな地震が起きています。 例えば、1854年、安政東海地震(M8.6)の約32時間後、安政南海地震(M8.7)が起きました。また、1944年、昭和東南海地震(M8.2)の2年後、1946年に昭和南海地震(M8.4)が起きました。この4つの地震すべてで、津波が発生しています。

もし、出されれば史上初めてということになりますが、気象庁は、想定震源域で大きな地震が続けて起きる可能性が高まった場合、『南海トラフ地震臨時情報(調査中)』を発表します。

これは、大きな地震が続けて起きる可能性が高まっているかを調べ始めたことを意味します。

地震発生から5~30分後に発表。発表の基準となるマグニチュードは6.8以上です。17日夜の地震は、マグニチュードは6.6だったので発表はありませんでした。地震発生のメカニズムが違っても、マグニチュード6.8以上なら発表します。

『南海トラフ地震臨時情報(調査中)』が発表された後、専門家らによる『評価検討会』で、先に起きた地震が巨大地震と関連があるかどうか調査。地震発生から2時間後をめどに、検討会の調査結果を受けて、臨時情報を発表します。この情報は3種類あります。

『巨大地震警戒』 先に起きた地震がプレート境界で、マグニチュード8.0以上と判明した場合、さらに、新たな巨大地震が起きる可能性が高まったとして、津波からの避難が間に合わない地域では、自治体が住民に避難指示を出します。1週間、避難を継続します。

『巨大地震注意』 先に起きた地震がプレート境界でマグニチュード7.0以上、または『ゆっくり滑り』が観測された場合など、日頃からの地震への備えを再確認しましょう。

『調査終了』 いずれにも当てはまらない場合です。