衆議院の3補選で唯一、与野党一騎打ちとなった「島根1区」 ラストサンデーのきょう21日、岸田総理と泉代表が応援に入るなど、両陣営共に総力戦となっています。

■“裏金”めぐり舌戦…自民・立憲“大物”投入の総力戦

裏金事件が表面化して以降、初めて国政選挙の応援に入った自民党 岸田文雄総裁。 (自民党 岸田文雄総裁)「我々自民党が政治と金の問題を通じて、国民の皆さんに大きな政治不信を招いてしまっているということ、厳しい批判を浴びているということ、このことにつきまして、自民党総裁として心から皆様方にお詫びを申し上げる次第でございます」 自民党が擁立したのは元財務官僚の新人、錦織功政氏。 (自民党 新人(公明推薦) 錦織功政 候補(55))「この前の世代から受け継いできた大切なふるさとをより良い形にして、そしてより豊かにしてから次の世代へと引き継いでいく。これが私が残りの人生をかけて取り組みたい仕事なのであります」 対する立憲民主党の泉代表は… (立憲民主党 泉健太代表)「どうか皆さん、本気の、本気の絶対に気の抜けない大きな政治改革の戦いです。相手が総理大臣が来ようと、進次郎が来ようと、小渕優子が来ようと県民の力で皆さん勝ちましょう。よろしくお願いいたします」 立憲民主党が擁立したのは元職の亀井亜紀子氏。 (立憲民主党 元職(社民支援)亀井亜紀子 候補(58))「この度の裏金問題、これは自民党の体質を象徴しています。この島根から、この自民王国で私が勝ち抜くことによって日本の政治をここから変えていきましょう」

与野党一騎打ちになった島根1区には16日の告示後、両党の“大物”が続々と参戦。 (自民党 小渕優子選対委員長)「島根にとっても、そして我々自民党にとっても正念場の選挙戦であります」 (自民党 小泉進次郎元環境大臣)「悪いのは今の自民党です。悪いのは錦織さんじゃありません」 (自民党 石破茂元幹事長)「錦織功政、誰よりも島根のことを知っており、誰よりも島根のことを愛しておる」

(立憲民主党 蓮舫 参院議員)「岸田総理に間違いだと、目を覚ませと、そういう声をぜひ届けていただきたい」 Q.追い風ともいわれていますが? (立憲民主党 野田佳彦元総裁)「それは最後まで気を抜かずにやっつけたいです」 (立憲民主党 小川淳也衆院議員)「もしまともな保守があるとすれば、そのDNAを最も受け継いでいるのは亀井亜紀子さんだと思うんです」 裏金問題の逆風の中、自民党が唯一候補者を立てた島根1区。序盤から激しい選挙戦が展開されています。

ここ島根県は「竹下王国」とも呼ばれ、強固な保守地盤で知られています。 第74代内閣総理大臣、竹下登氏。“参議院のドン”と呼ばれた青木幹雄氏。 (青木幹雄氏)「竹下の第一声が、島根に生まれ、島根で育ち、やがて島根の土となる」 1996年の小選挙区制導入後、島根県では自民党候補が議席を独占。さらに、今回の補選は前の衆議員議長、細田博之氏の死去に伴う「弔い選挙」でもあるのですが…

■“裏金で逆風”の自民vs“保守票”狙う立憲

自民党の錦織氏は“裏金問題の逆風”にさらされていました。 (自民党 錦織功政 候補(55))「私の友人からはよく問われます。『こんな逆風が吹いている時になんでお前は戻ってきて立候補なんかするんだ』と。ですが私ははっきりと申し上げております。このふるさとに貢献するためでございます」 20日、錦織氏が街頭演説を行ったのは松江市で酒屋を営む実家の前。 「このビールケースが錦織功政の原点でございます」 (自民党 錦織功政 候補(55))「この大切な故郷をさらに磨きをかけて、さらに豊かにしてから次の世代へと引き継いでいく」 (自民党 小泉進次郎元環境大臣)「この選挙、いま錦織さん負けてるんです。だけど私はこの勝負、最後は勝つと思っています。なぜか?錦織といえば『逆転の錦織』だから。錦織と聞いたらやっぱり松江は(テニスの)錦織圭さんでした」

21日、岸田総裁は自民党関係者らとの車座対話に参加。お詫びした総裁に参加者からは… (参加者)「今回の補欠選挙、政治と金の問題で我々党員として、まず恥ずかしい気持ちでいっぱいです。我々党員の選挙活動に大きな影響を与えております」 初の総裁入りに地元の自民党関係者からはこんな声も挙がっています。 (地元の自民党関係者)「総理が来てもなんの効果もないよ。色々やってきたのかもしれないけど全然伝わってない。正直かなり地元でも評判悪いよ」

一方…「島根から変えよう」をキャッチフレーズに裏金問題の「追い風」にのる立憲民主党の亀井氏。 (立憲民主党 亀井亜紀子 候補(58))「これまでこの島根県は自民王国と言われ、誰もが名前も顔を知っている有力な大物の議員を何十年も永田町に送ってきました。でも皆さんいま島根県は良くなっているでしょうか」 街頭に立ち、自民党批判を強めていますが、前回の衆院選で2万3000票余りの差をつけられて敗北。比例復活もできませんでした。立憲民主党の本部は、自民党を支持する保守票をどう取り込むかがポイントになるとみています。 (立憲民主党 亀井亜紀子 候補(58))「私自分を保守だというふうに思っておりますし、本来のまっとうな保守とはどういうものかということも含めて伝えていきたい」 そんな亀井氏に対し、聴衆からは… (聴衆)「どうされたいんですか?何をできるんですか?何をされるんですか?聞きたいです」 (立憲民主党 亀井亜紀子 候補(58))「はい、分かりました。まず、公共交通については私は例えば鉄道であれば、鉄道事業法というのが規制緩和で変わってしまったんですけど、鉄道のインフラの部分はちゃんと国が責任を持って税金を入れて維持する」

立憲民主党の小沢一郎衆院議員。ふるさとで眠る竹下元総理の墓前に、その姿はありました。 (立憲民主党 小沢一郎衆院議員)「竹下先生の墓前で自分なりに気持ちを強くして最後のご奉公に頑張りたい。最後の仕上げは政権さ。三度目の正直でもう一度政権をとる」 小沢氏の隣には、竹下元総理。さらにその隣には、田中角栄元総理。小沢氏は同じ田中派で先輩だった竹下元総理を「政治の師」と慕っています。 (立憲民主党 小沢一郎衆院議員)「竹下王国と言われるように、やっぱり基本的に自民党保守の地盤だから、その底力は侮れない。とてもとても勝てるという確証を得るにはまだまだ」

島根入りをした小沢氏の目的…向かったのは松江市内のビル。 (立憲民主党 小沢一郎衆院議員)「忙しいのにすまんね」 亀井氏の選挙を支える連合島根の本部。組織の引き締めを図りました。 小沢氏を笑顔で出迎えたのは、亀井氏の父・久興(ひさおき)氏です。久興氏はかつて自民党で国土庁長官として初入閣。小沢氏と同じ田中派に所属していた古くからの仲です。 亀井氏の父・久興氏は相手陣営の保守票を切り崩すため、かつて自身の選挙を支援してくれた知人や企業に対して働きかけを行ってきたといいます。 (亀井候補の父 亀井久興氏)「懐かしい人間関係がたくさんあるから、皆さんもちょいちょい帰ってほしいということも言われるし、帰ればいろんな出会いがまた出てきますから、そういう人間関係は最後まで大事にしていきたいと思っているんで」

一方、自民党の錦織氏がきのう20日、訪れたのは島根原発が立地する松江市鹿島町。街頭演説には中国電力・島根原発の関係者も集まっていました。 (自民党 錦織功政 候補(55))「これからの我が国のエネルギー自給率の向上、そしてカーボンニュートラル(温室効果ガスの大幅削減)を実現していく、国際公約のためにも原子力発電の活用は不可欠でございます」

関係者によれば、自民党は再稼働をテコに、原発関連に従事する人たちの票の取り込みを狙っているといいます。野党の亀井氏を推薦する連合島根などによれば、電力関連の労組票は2000票ほどあります。 “参議院のドン”と言われた青木幹雄氏の長男、一彦氏に聞くと… Q.自民党は電力の労組票も期待している? (自民党 青木一彦参院議員)「まあ当然のこと、会社の利益が全然違うでしょう。原発を“動かす・動かさないか”」

水面下で行われている、相手陣営の組織票切り崩し。投票率が低くなれば組織票が当落のカギを握ります。 逆風下の自民党…のはずですが、ここは「竹下王国」だと再認識させられる光景も… (自民党 岸田文雄総裁)「どうか錦織さん助けていただくようよろしくお願いいたします」 (聴衆)「総理のため頑張ります!自民党 立て直し」

島根1区補欠選挙。投開票日は28日です。

4月21日『サンデーステーション』より