16日の午後4時前、番組のカメラが捉えたツキノワグマの映像です。場所は岩手県・盛岡市の住宅街にあるリンゴ園。実はこのクマ、前の日も全く同じ場所、同じ時間に姿を見せていました。そして、番組では独自にドローンを飛ばし、空からも罠を巧みによけるクマを捉えました。高い危機回避能力を備えた「スマートベア」が人の生活圏に下りてきています。 ■2日連続 クマ激撮 緊迫の一部始終

(下里航平ディレクター)「午後3時45分です。今ですね、クマが果樹園に現れました。体長は1m~1.5mと言ったところで、かなり大きなクマです。」 真っ黒な巨体を揺らし、ゆっくりとした足取りで現れた“クマ”。 (下里航平ディレクター)「何かにおいをかいでエサになるものを探しているように見えます。何かモグモグと口を動かしています。何かを食べているように見えます。」 番組のカメラは、同じ個体と思われるクマを、きのう15日も捉えていました。 (下里航平ディレクター)「今、クマが現れています。時刻はまもなく午後3時です。リンゴの果樹園にクマが現れました」 木に前足をかけて立ち上がり、旬を迎えたリンゴを口にくわえたクマ。 (下里航平ディレクター)「人を恐れていないのでしょうか。住宅街の中の果樹園でツキノワグマがリンゴを食べています。」 さらにクマは木に登り、なっているリンゴをとって降りていきました。 このリンゴ園付近では、数日前から被害が相次いでいます。 (クマ被害にあったリンゴ農家)「11月の3日か4日あたりから、(クマの)糞がありまして、やっぱりリンゴ食われてんだなっていうことに気がついて、それが毎日のように続いて…」 クマが現れたのは、盛岡駅から北に3kmほどの地点―。周辺には学校や保育園もある住宅街です。 Q.小さいお子さんがいると怖いですよね? (近隣住民)「そうですね。あまり外でも公園でも遊ばせられないので…」 番組は危険と判断し、警察に通報。緊急車両が駆け付けました。 (岩手県警)「この付近にクマがいます。屋外にいる方、速やかに屋内に避難してください。」 1時間ほど居座ったクマは、やがて藪の中へ消えていきました。 そしてきょう16日、再び姿を現した巨大なクマ。 (下里航平ディレクター)「いま箱罠の目の前にクマがいます。入るのか?匂いを嗅いで気にしていますね。」 園内には、数日前から捕獲用の罠を仕掛けていました。 (下里航平ディレクター)「匂いは気にしているようですが…あぁ横、横ですね。箱罠の横を通り過ぎて行っています。入らない。戻っていった。戻って来ているような感じですね」 よほど興味を持ったのか、罠の周囲をうろつくクマ。しかし突然… (下里航平ディレクター)「今ですね、クマが走り始めました、逃げています。人がいたんでしょうか、山へと戻っていきます」 駆け付けた警察車両に驚いたのか、その後クマは姿を見せませんでした。 ■赤外線ドローンで“夜行動”明らかに

群馬県のリンゴ園でも… 「クマの姿が見えましたね。」 木々の間を見え隠れしながらゆっくりと動く赤い影。みなかみ町のリンゴ園で、2日連続で「赤外線ドローン」が捉えたクマ。そこから、クマの驚異的な危機回避能力が見えてきました。 (リンゴ農家)「(クマが)自分で食べるために(木に)登って、体重オーバーで枝が折れて、リンゴがみんな落ちちゃったわけ。こうなると、10年じゃ元には戻らない。」 こちらのリンゴ園では、先月の20日から毎日のようにクマが出没。リンゴを食い荒らしていました。 園内に設置されたカメラには、丸々と太ったクマの姿が映し出されていました。 番組ではクマが出没しやすいという夜間に、熱源が赤く表示される「赤外線ドローン」で撮影。飛行開始から1時間後… 「リンゴ園の近くの森の中なんですが、これはクマでしょうか?赤い熱源が動いているのが分かります。」 リンゴ園の外側の森に、クマらしき赤い影が… リンゴ園では、先月からクマ対策として周囲に電気柵などを設置していますが… 「仕掛けてある電気柵の周りを伝うように、リンゴ園に近づいてきているように見えます。」 カメラの映像を確認してみると…午後5時すぎ…ゆっくりとクマが入ってきました。さらに、その後何度も出入りする様子が…実はこのクマ、人が出入りするための柵の切れ目から、リンゴ園の営業終了時間を見計らったかのように現れ、何度も出入りしていたのです。 「すでにリンゴ園の中に入っていますね。足跡が付いているような色も見えます。」 専門家によると、先月から確認されているクマと同じ個体である可能性が高いといいます。 そして翌朝も…午前6時13分、再びドローンはクマの姿を… 「クマの姿見えましたね。」 ドローンに気づいたのか、まもなくクマは茂みに消えていきました。 (リンゴ農家)「昼間出られるとお客さんが来なくなっちゃうんで…もし出くわしてしまえば、かなり影響が出ると思うんで…」 電気柵を器用に避けるクマの能力について、専門家は… (岩手大学農学部 山内貴義 准教授)「完全に学習してしまっていますので、電気柵というのを引いても、あまり効果がない。いわゆる“スマートベア”(知恵をつけたクマ)をつくってしまうと中々捕獲も難しい。そういったクマをつくらないような環境にやっぱり整備していく必要はあると思います。」 ■“空からクマ撃退”猟友会×ドローン

ドローン映像が捉えたクマの実態。こうしたドローンの機能を活用し、クマ被害防止に役立てている猟友会があります。 岩手県岩泉町に住む澤里寛行さん。ハンターとして地元の猟友会参加する一方で、町と連携してドローンを使い、住宅地に出没するクマの追い出しや監視業務を行っています。 午後9時すぎ、クマの監視作業が始まります。ドローンには赤外線カメラやサーチライト、警報音を鳴らすスピーカーなどが装備されています。 この日監視するポイントは、発着地点から約350m離れたリンゴ畑と山の境界付近です。飛行開始からわずか2分… (岩泉町の猟師 澤里寛行さん)「あ、いた!この黒い塊見えますか?親子ですね…」 カメラがとらえた赤い熱源。この熱源を目印にカメラを切り替えると、親子とみられる2頭のクマの姿が… (澤里寛行さん)「今度は少し近づけてみます…」 親熊の体長は約1m。ドローンが近づいても気にしない様子です。 (澤里寛行さん)「子グマが離れている時は(親グマは)リラックスしているので、(山に)帰るまでは結構離れて自由に好き勝手しているのですが、山に帰る時は母クマの後ろにピタッとくっ付くんですよ、賢いというか(子グマは)言うことを聞くんですよ。」 ドローンによる遠隔監視で、猟師のリスクも軽減。システムを導入して3年、クマの意外な生態が見えて来たといいます。 (澤里寛行さん)「個性があって、例えばトウモロコシ畑に電気柵があるのですが、突破方法も一頭、一頭違うんですよ。電気が嫌で5分くらい葛藤して、しばらく待って、えいやって突破する奴もいたり、親が走って突破するのを見て子どももマネして突破してみたり、電気柵に触れるのがどうしても嫌で下を掘って電気柵を回避するクマがいたり、学習してますね。」 岩泉町によると今月14日時点、町内でのクマの目撃情報は380件ほど。150件だった去年の倍以上で、今年は人的被害も1件発生しています。 翌日、再び親子グマを確認した地点にドローンを飛ばします。 (澤里寛行さん)「きのうと同じ場所です。いますね…」 同じ場所に居付いたクマ。しかし、協議の結果、住宅からわずか200mという距離の為、追い出しはしないことが決まりました。澤里さんは猟師として複雑な心境を語りました。 (澤里寛行さん)「“半矢”というんですけど、(クマに)ケガさせたけどトドメを刺せなかった状態になると、人を襲うようになってしまうということで、間違って半矢にしたクマが街に下りてきたら一大事ですから…民家の近くというのは安全地帯なんですよ、動物にとって。猟師が何も出来ないので…」 車に向かってくるクマは、脂肪をたっぷりと蓄えていました。これは、きょう16日、秋田市内で撮影された映像です。1週間前にも… (草薙和輝アナウンサー)「いるいるいる、いますね。あそこにいます。上にいます。はっきりと今、姿が見えました。枝になっている実を今ちぎりました。取りました、取っています。うわっ、くわえていますね。」 あれから1週間、再びその場所に住民と共に行ってみると… Q.柿の実もほとんどないですよね? (柿の木がある家の住民)「そうですね。下にも一切落ちてないので、(クマが)食べたんだろうな」 Q.お子さんはどうされているんですか? 「朝も帰りも送り迎えして、もう1カ月以上は外で遊んでないですね。」 ■2年ごと豊作→クマ大量繁殖!?

クマが人里に大量出没している今年。このような年が、今後さらに頻繁に訪れるかもしれません。秋の主なエサ、ブナの実が豊作になるサイクルは、以前は5年から8年に1度でしたが、どんどん間隔が狭まって、2021年以降は、1年ごとに豊作と凶作を繰り返すようになっています。このサイクルでは、豊作の年に出産した母グマは、1年半で子育てを終えるため、次の出産のタイミングも、また豊作に重なることになります。 (岩手大学農学部 山内貴義 准教授)「秋のエサが多いと、その年の繁殖率が上がると言われていますので、(豊作が)1年おきだと、クマの数が増えていく図式になりやすいと思います。」 さらに、こんな恐れも。 「(豊作で)子どもをいっぱい産んで、翌年、大凶作で里のものに依存する。また翌年、豊作で子どもが増える。で、凶作でまた里に出て、人のものを漁る。そういった“悪循環”のような形で表れてくる可能性は十分考えられる。」 11月16日『有働Times』より