スマートフォンを手放せない若い世代を中心に認知症に似た症状を訴える人が増えています。都内の病院に専門の外来が開設されて1週間余り、使い過ぎによる弊害と対策を取材しました。

■スマホの“だらだら”使い 脳に危険信号

「(スマホを)1日6、7時間は触っているかも」 「気付いたら3時間くらい見ちゃう」

 こんな人も…。

「(スマホの使用は)20時間55分?『TikTok』や『YouTube』とかが多い」

 スマホのだらだら使い。実は、脳に危険信号がともっています。

■“スマホ認知症”とは

金町駅前脳神経内科 内野勝行院長 「最近“スマホ認知症”を訴える患者がかなり増えています」

 長い時間使い続けることで物忘れや集中力の低下など認知症に似た症状が現れる「スマホ認知症」。

内野勝行院長 「“記憶のごみ屋敷”ですね。起きて仕事をしている間、情報はどんどん(脳に)入ってくるので整理整頓する時間が実は必要。本来ぼーっとしたりする大切な時間にスマホを使うので、荷物だらけの部屋にさらに荷物が大量に放り込まれる。あの荷物はどこに置いたんだっけと、(情報が)引っぱり出せなくなる。結果、忘れたり、思い出せなくなる」

■2000万人が予備軍

 すでに2000万人が予備軍とも言われ、10代のおよそ3割が一日6時間以上スマホで動画を見ているという調査も。

「聞いたつもりだけど、覚えていないことがある」 「関係ないかもしれないが、人の名前をよく忘れる」

■初の“スマホ認知症外来”開設から1週間

 若い世代だけではありません。「スマホ認知症外来」の開設から1週間。30代から40代の受診も増えているといいます。

 どう防げばいいのでしょうか。

内野勝行院長 「スマホと距離を置きたくなる習慣化。寝室に持ち込まない。目覚まし時計で起きるとスマホをちょこちょこ見なくて済む」

 他にも、スマホを見ずに知らない道を散歩、キャンプやサウナなどでスマホ断ち、脳の疲れを取るには昼寝も効果的だといいます。

■家族で話し合い使用制限→成績向上

 横浜市に住む奥平彩音さん(14)と詩音さん(12)の姉妹。実は、スマホ使用に時間制限を設けたことで実際に成績が上がりました。

東北大学 応用認知神経科学センター 榊浩平助教 「同じ時間、勉強している子どもたち同士を比べて、SNSやスマートフォンの使用時間が長ければ長いほど成績が下がってしまう」

 成長期の子どもにはスマホの使用時間と成績に相関関係があり、使用時間が長いほど成績が下がるというデータがあります。

中学3年 姉 彩音さん 「多い時に10時間くらい使っていた」

■家族で3つの“スマホルール”

 姉はヘビーユーザー、妹は4月にスマホデビューという奥平家では東北大・榊助教の指導のもと、家族で話し合って3つのルールを決めました。

 使用時間は一日2時間まで。やるべきことを終えるまでスマホはケースの中へ。食事中、勉強中はスマホを出さない。

 それほど厳しいとは思えない目標ですが、これには理由が…。

榊浩平助教 「親が無理やりルールを作って、それを子どもに押し付けるような形になってしまうと、子どもから見ると親が敵になってしまう」

 勉強時間の設定や破った場合の罰則などもなく、ゆるい感じで始めたそうです。

彩音さん 「(Q.2時間経ってプチって切れちゃうわけ?)はい」 「(Q.プチって切れた時の感情どうだった?)『(設定で)切れた』って思いました」 「(Q.でもその後、勉強はした?)いや、してない…」

 スマホ断ちした時間を勉強だけに向けたわけではなく、彩音さんはピアノの練習、妹の詩音さんはダンスの練習なども行っていました。

■2週間後 早くも結果が!

 そんななか、2週間後に早くも結果が。

母 奥平悠子さん 「点数も少し前回よりは少し伸びたかなっていうところと、あとは、ちょうどその時、英検の試験があったんですけれども、それも無事、合格することができたので」

 一体、何が変わったのでしょうか。本人は…。

「スマホを長時間使わなくなってから色んなことに目が向くようになって、色んなことが意識付けられる」

 集中力や視野の広さがアップしたという実感。両親としては、こんな予定外の成果もあったそうです。

父 奥平敏裕さん 「色々、普段よりも深い話とか、会話をしようというところに意識が向くようになったので、家族の会話の密度というところが以前よりは濃くなったかなと思います」