南アフリカ・ヨハネスブルクで22日に開幕したG20(主要20カ国・地域)首脳会議で、高市早苗総理は本格的な首脳外交を展開した。一方、中国政府は対日批判を強めており、李強首相と高市総理の接触があるかに注目が集まっている。ただ、中国は7日の総理答弁後、高市総理と李氏の会談予定がないと強調している。就任1か月で支持率が急上昇する高市政権。ANN世論調査によると、高市内閣の支持率は、就任直後の58.7%(10月25~26日調査)から、わずか3週間で67.5%(11月15~16日)へと上昇。前回比8.8ポイント増という急伸。
こうした中、中国政府は対日批判を強めている。SNS上では高市総理を揶揄する風刺画が拡散され、国連では、傅聡国連大使が「日本は常任理事国入りの資格はない」と発言。さらに11月19日、中国の国家安全省が「近年、日本によるスパイ活動を摘発し、国家の安全を守ってきた」と声明を公表し、日本人に対する摘発強化とも捉えられる姿勢を示した。20日には、中国外務省の毛寧報道局長が、マカオで24日から予定されていた「日中韓文化相会合」の延期を発表。日中関係の緊張が動物園にまで波及した。北京日報のSNSが11月20日に発信した「両国関係が悪化すれば、新たなパンダ貸し出しは停止され、日本からパンダがいなくなる可能性がある」との投稿が波紋を広げた。国内で飼育されているジャイアントパンダは、東京・上野動物園のシャオシャオ(雄)とレイレイ(雌)の一組のみ。その双方が来年2月に中国へ返還される予定で、返還後の新規貸与について、中国の四川省・中国ジャイアントパンダ保護研究センターは「両国関係の状況から回答できない」と明言を避けた。中国国内の警戒は、対日感情の高まりとともに日本企業関係者にも波及している。2023年3月、アステラス製薬の邦人社員が反スパイ法違反容疑で拘束され、今年7月には3年6か月の実刑判決が下された。2014年の同法施行以降、邦人の拘束は17人に達する。
中国外務省の毛寧報道局長は20日、「日本の指導者が台湾など重大な原則問題で誤った発言を行い、中国国民の怒りを引き起こした」と強調。同外務省は14日に中国国民に対し日本への渡航について注意喚起。その影響は早速、空の便に表れ始めている。17日の香港紙によると、中国の航空会社で、日本行き航空券 約49万1千件がキャンセル。また、中国国際航空、上海―大阪などを来年3月まで減便。中国東方航空も減便を決定。インバウンドの減少による日本経済への打撃は、年間で1兆7900億円、GDP0.29%の損失とする試算を、野村総合研究所エグゼクティブエコノミスト・木内登英氏が示している。中国外務省の毛寧報道局長は17日、「日本社会で中国市民を対象とした犯罪事件が増加している」と懸念を表明。日本政府は中国側の主張を事実無根と反論している。
国家安全保障に関する発言が内外に波紋を広げる中、高市総理は10日、先の国会答弁について「撤回・取り消しはしない」と明言した。だが、特定事案を想定した発言を控える姿勢を示した。そのうえで、「特定のケースを想定したことについては、この場で明言することは慎もうと思う」とし、具体的な事例を交えた答弁のあり方について一定の反省を示した。また、高市総理は21日、「戦略的互恵関係の包括的推進、建設的かつ安定的な関係の構築という大きな方向性を確認した」として、先月末の習近平国家主席との確認事項を強調。また、存立危機事態については、「実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合的に判断する」と述べた。同日の会見で木原官房長官は、高市総理の過去の発言について「ケーススタディのように取られてもおかしくないような内容があった」と指摘したうえで、「誤解を招くようなことがあれば、今後は極めて慎重に対応しないといけない」と語った。21日の高市総理の発言を受けて、中国外務省の毛寧報道官は「もし日本側が本当に日中の戦略的互恵関係を発展させたいのであれば、直ちに誤った発言を撤回し、中国との約束を着実に実行に移すべきだ」と苦言を呈した。
★ゲスト:宮本雄二(元駐中国大使/宮本アジア研究所代表)、久江雅彦(共同通信特別編集委員) ★アンカー:杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)