政府が“5キロ2000円”を目指すとしていた、随意契約の備蓄米が、31日から店頭に並び始めました。コメ全体の値下がりにつながるのでしょうか。(5月31日OA「サタデーステーション」)

■5キロ約2000円 ついに店頭に

スーパーのイトーヨーカ堂はきょう、東京・大田区の店舗で、随意契約した2022年産古古米の店頭販売を始めました。

行列に並ぶ人 「5時半に来ました。1番でしたね」

そして、アイリスグループの一部の店舗でも、備蓄米を求め、雨の中、長い行列が出来ていました。千葉の店舗でも行列が。先頭に並んでいた男性は…

列の先頭に並んでいた人 「(Qきょうは何時ごろから?)きのう夜8時。4000円台のお米が下がってくれることを期待したい」

31日、イトーヨーカドー大森店で販売されたのは、5キロの備蓄米500袋。ひと家族ひと袋、税込み2160円の限定販売です。最新の米の平均価格は、5キロあたり4285円(税込)。前年同期比でおよそ2倍です。

■購入した古古米のお味は?

備蓄米を購入した藤田さん 「なんとか無事に買えました。ようやく手に入ってほっと一息ですね」

朝早くから行列に並び、備蓄米を購入した藤田さん。早速、昼ごはんに食べてみると言います。家では、妻と1歳半の娘が待っていました。

藤田さん「ほら、すごいやろこれ」 妻「本当に2000円?」 藤田さん「うん、2100円」

コメの価格が高騰してから、ほぼ毎日、麦などを混ぜたりして、対応してきたといいます。

藤田さんの妻 「あ、でも匂いとか全然普通」 「(Q見た目とかはどう?)見た目も全然遜色ない感じですけどね」

家では、通常10キロの米を2カ月で消費するので、5キロの備蓄米は1カ月分です。炊きあがりはおよそ1時間後…

藤田さん「すごい炊き上がった」 妻「確かにちょっと固めかな。(匂いは)全然変わらないというか、違いが分からないぐらい」

さてお味は?

藤田さん「いや、もう正直全然違いが分からないというか、普通に美味しいです」 妻「いつもと同じ水の量にしちゃったんで、ちょっと固い気がします。若干固い。だからもうちょっと水多めにしたら、もうちょっといいかもしれない」

そして、1歳半の娘まおみちゃんは?

娘「うーん!」

気に入ったようです。

藤田さん「申し分なしというところですかね」 妻「子どもが普通に食べてくれてよかったです。この値段だったら全然続けたいですね」

小泉農水大臣(31日 神奈川・横須賀市) 「東京、千葉、宮城。ここで販売が始まり、いま全部完売したそうです。6月の上旬も無理じゃないかと言われたのが、なんと5月の31日に、それができた。それは本当に多くのみなさんの協力のおかげ」

1日からは、イオンやドン・キホーテの一部店舗でも備蓄米の店頭販売が始まる予定です。

しかし、順調なのは一部の会社だけのようです。サタデーステーションでは、随意契約した39社に取材しましたが、多くが「見通しすら立っていない」という状況でした。

西日本を中心にスーパーマーケットを展開する企業は。

株式会社イズミ 「できるだけ早く消費者のもとにお届けしたいと思っていますが、精米などに時間がかかることから、政府が示す6月初旬に店頭に並べるのは難しい」

■課題は精米 “休み返上”でフル稼働

“精米がネックになっている”という声もあります。米どころとして名高い、新潟県長岡市の精米工場で精米されていたのは、近く販売が予定されている、大手小売りが契約した備蓄米です。

精米工場の担当者 「あきたこまちの備蓄米、令和4年産。本当にキッチキチですね。少しでも早くお客様に届けたいという思いを私たちも伺っていますので。急ピッチで休み返上で動いてます」

精米機もフル稼働です。工場ではきょう、40トンを超える備蓄米を精米したといいます。

■古古古米も放出へ どうなるコメの価格

そんな中、30日、中小のスーパーなどを対象にさらなる備蓄米、古古古米の申し込みが始まりました。

小泉農水大臣(30日) 「隅々までできる限り広く多くの方に備蓄米が届くように、そんな思いで新たな随意契約を始めます」

新たに売り渡されるコメは、2021年産の8万トン。店頭価格は「5キロ1800円程度」を想定しています。農林水産省は31日夕方、申し込み初日の一日で、メールの受付がおよそ1300件あったと発表しました。

住宅地で激安を売りにするスーパーも、30日に申し込みました。

スーパーマルヤス 松井代表 「合計で20トンオーダーいたしました。常に米不足の状況が続いていた中で、これは絶対取りに行きたいと」

申し込んだ理由が切実です。

スーパーマルヤス 松井代表 「(米価高騰で)買い控えは正直ある。ブレンド米と銘柄米両方とも(売り上げの)数量が落ちているので、そこはお店側としては厳しい」

ただしネックとなるのはやはり精米。一部は精米せず、玄米のまま売り出すといます。

スーパーマルヤス 松井代表 「(コメを安く)スピード感を持って消費者様に届けるというところで考えると、精米をしないで玄米ですね」

一方、町のコメ店は。

農家産直米すえひろ 荒金代表 「結論から言うと、見合わせという形になった」

代表の荒金さんは、備蓄米を楽しみにしていましたが…

農家産直米すえひろ 荒金代表 「(小泉)大臣が、町の米屋さんにも販売を、と言っていたので、小規模ロットから買えると思って参加させていただいたが、私たちが考えていたのは1トンでした。条件は(最低申し込みが)10トン、10倍ですから、それではとても売り切れないと思い見合わせました」

今回の備蓄米の売り渡しには、最低10トン以上を申請する必要があるのです。政府は、複数店での共同購入を認めていますが。

農家産直米すえひろ 荒金代表 「それでは(コメ店)2軒で2トンでございますから、あと8トンどうするのかということになってしまいますので。仲間に無理やりというわけにはいきませんので、そこで断念いたしました。お米屋さんに一番古いコメが回るとのことで、そう考えると挙手をする方が凄く少ないように感じました」

ただ、コメ全体の価格への影響には期待しているといいます。

農家産直米すえひろ 荒金代表 「ここまで備蓄米が早く出ましたので。その後、残ってる分を出す可能性もあるようなお話もいただいてます。そうすると、もしかしたら下がって来る可能性もあります」

今後のコメの価格について、スーパーのマルヤスは。

スーパーマルヤス 松井代表 「既に買っている分に関しては原価が高いですので、そこに関してはなかなかすぐには下がらないんじゃないかなと思います。今年の秋できるもの以降に関しては、場合によっては相場が下がるんじゃないかなと思います。なんとも私どもではちょっと予想が難しいです」

そして、自民党の森山幹事長は。

自民党 森山幹事長 「5キロで3000円から3200円ぐらいだと農家の皆さんもコストに見合うし、また少し利益が出るという計算になるのではないかと」

■専門家「高止まり続く可能性も」

高島彩キャスター 「今日から2000円台で備蓄米が店頭に並びましたけれども、一時的なものではなくて、今後長期的におコメの値段は下がるんでしょうか」

板倉朋希アナウンサー 「今回、専門家と農家のお二人にお話を伺いました。現在、スーパーでのコメの平均価格は5キロ当たり4285円ですけれども、この価格が下がっていくのかどうかですが、元農水省の官僚で農業政策に詳しいキャノングローバル戦略研究所の山下一仁さんによりますと、『高止まりする可能性もある。そこには農家に支払う“仮渡し金”が関係している』と言います」

高島彩キャスター 「“仮渡し金”いうのは一体どういったものなのでしょうか」

板倉朋希アナウンサー 「“仮渡し金”というのは、農家に対して各JAが支払う前金のことなんです。例えばコメの生産量日本一の新潟県では、例年8月に提示する“仮渡し金”の最低保証額を、今年はコメの獲得競争の激しさが増しているということで3月に示しています。その金額は、去年はコメ60キロあたり1万7000円でしたが、今年は2万3000円以上を目指しているとしています。ですから山下さんは、この“仮渡し金”が上がっているのでコメの価格が下がらないということですね」 「一方で、新潟県長岡市で年間384トンのおコメを作っている農家の西村さんにもお話を伺いました。農家はJAを通さずに直接卸売業者に売ることもできますが『卸売業者がJAよりももっと高い金額を農家に提示しているので、一般の流通では価格は下がらないし、上がってしまうのでは』と話しています。ただ『農家が直接小売に売ったら3000円台で売ることは可能。農家の適正価格は税込みで3500円』だと言います」

高島彩キャスター 「とはいえ、全ての農家さんが小売店に直接売ることができるかというと、それも難しいですよね」

板倉朋希アナウンサー 「そうみたいですね。課題は品質検査だそうでして、この品質検査を担っているのがJAなど、なんです。ですから各農家さんが小売に直接販売するというのが現実的にはなかなか難しいそうです」

高島彩キャスター 「JAのシステムで変えていかなければならない点はたくさんあると」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏 「コメの値段が下がるためには、やはり流通ルートの見直しは避けて通れないと思うんですよ。農家の直接販売もその1つだと思いますけれども、実現には品質の検査、さらに販売ルートの開拓、これも必要になってくると思うんですよね。今の米騒動をきっかけにして生産者と消費者が納得できる価格で持続可能な米づくりについて、どうすればそれが可能なのか真剣に考えていかなければいけないと思います」

高島彩キャスター 「生産者も消費者にとっても適正な価格というところですね。これが大切になってきます」