アメリカのトランプ政権による相互関税の上乗せ分の停止期限が迫るなか、日米の交渉は難航しているとみられます。経営への打撃を避けようとする企業の動きを取材しました。
■トランプ関税 上乗せ停止期限迫る
トランプ大統領 「何枚かの書簡に署名した。月曜日に送付する」 「(Q.書簡を受け取るのはどこの国ですか?)月曜日に発表する。今は言えない」
一方、日本政府は5日夜、赤沢経済再生担当大臣がラトニック商務長官と2度の電話会談を行ったと発表しました。
■先行き不透明…企業は打開策模索
トランプ関税の行方に振り回される日本。国内の自動車部品メーカーではすでに影響が出ています。
松本興産 松本めぐみ取締役 「100種類の製品のうち、2~3製品ぐらいがお客様からの(注文)内示がちょっと減ってきたりはしている。トランプ関税が今後何%課されるか分からないんですが、それを見込んで作る台数をちょっと絞ってきたりはするのかなというふうには受け取っております」
埼玉県秩父市にある松本興産は、自動車のエンジンに使用する部品をはじめ、空調や車載カメラの部品などを製作しています。
松本めぐみ取締役 「特に自動車業界で一番命取りになるのが『在庫』。在庫を持てば持つほど資金繰りが苦しくなる」
メーカー側が生産台数などの結論を持ち越すと、工場側は仕入れた材料や作った部品などを在庫に抱え、次の仕事を受けづらくなります。さらに、工場が稼働しない間も人件費などがかかるため、現時点でも工場側の負担になっています。さらなる追加関税に耐えられるのでしょうか。
松本めぐみ取締役 「乗り越える自信はあります。急にアメリカ国内で今、日本が持っている中小企業の技術力をすぐにやろうというのもなかなか難しいと思う。多分、他国にはまねされないと思うので、やっぱり日本のクオリティーは大丈夫だろうと思う」
トランプ関税に備えつつも、松本社長はインバウンド用のお土産になる「お箸」や「キーホルダー」といった、新たな商品作りなどの対策も行っているといいます。
一方、富士通はトランプ関税の影響をより詳しく分析できる新たなサービスを始めました。
富士通 AI戦略・ビジネス開発部 山田智偉シニアマネージャー 「グローバルサプライチェーンマネジメントシステムを提供。弊社の特徴は、AI(人工知能)が自動的に損失を算出し、AIが自動的に対策案を提示することができる仕組みを提供」
自動車産業を例にした場合、材料の調達、部品の製造、組み立て、自動車の製造。海外へ輸出するまで様々な工程があり、そこに倉庫や輸送などの要素も入ります。
その複雑なサプライチェーンのシステムの中から「コスト」や「品質」「法務」などの観点でAIが問題点を探し出し、解決策までを提示。
単純に「製造コスト」が安い国であっても品質が悪い、輸送費が高い、自然災害や有事のリスクが高いなど、それぞれ専門のAIエージェントが総合的にアドバイスします。
では、トランプ関税対策にどんな応用が…。
山田智偉シニアマネージャー 「私が聞いた限りですと、自動車業界に関して最終的な自動車を作る単位では、最大7回国境をまたいで実は関税がかかっている」
部品単位では、「アメリカの工場で生産」などの理由で7回も国境をまたいでいるものがあり、当然そこには利益分と関税分が上乗せされます。その都度、生産コストも上がり、企業側は利益が下がることになります。
仮に関税35%が発動したとなると、AIがそれを考慮に入れたうえでのコストを判断し、「別の国」や「別の工場」で生産するなどの新たな選択肢を提示するというわけです。
山田智偉シニアマネージャー 「『因果AI』です。何か事象が発生する時に、その事象ってなぜ起きているのか?というのを数値的に分解して提示する」
物事の「因果関係」を探る最新のAI。結果に対する原因を探ることはもちろん、原因となる事柄から結果の予測もできるということです。