銘柄米が1年3カ月ぶりの水準に値下がりです。安くなる一方でコシヒカリが今後食べられなくなるかもしれない、そんな危機的な状況に陥っています。一体なぜなのでしょうか。

■「急に下がった」コシヒカリが安い

 コメ売り場には大きく「緊急値下げ」の文字が。気になる価格は…。

 高いコメの象徴だった「コシヒカリ」も、いまや税抜きで3000円を切る価格です。

 客が次々と手に取っているのも…。

70代 「安かった」

 やはり、コシヒカリ。

70代 「おいしいほうがいい」 40代 「コシヒカリばかり食べている、おいしい」 70代 「急に値段が下がった。5キロにしてはだいぶ下がった」

 なぜ、安くなっているのでしょうか。

新鮮市場 東本郷店 飯田智成店長 「複数の問屋が値段を下げてきたので、新米が出るまでに(在庫を)調整したい問屋のあらわれ」

 卸売業者から届いた見積書を見せてもらうと、茨城県産の「コシヒカリ」の仕入れ値は3月は5キロで3380円。それが今月には3080円。この2カ月で300円下がっていました。

飯田智成店長 「高いよりは安い方が断然いい」

■なぜ?コシヒカリがピンチ

 8日午後、発表された全国の銘柄米の平均価格も値下がり、5キロ3800円台とおよそ1年3カ月ぶりの安値水準です。

 ただ、農家の間では今、ある危機感が広がっています。

ゆうゆう農園 山田浩之代表 「コシヒカリの(作付け)面積を減らしていかないといけない。一気に暑くなりすぎて品質が低下している。コシヒカリ自体が高温耐性の品種ではない」

 去年、農家は苦い経験をしました。

 コメ不足もあり、主力のコシヒカリを多めに作付け。しかし、記録的な猛暑が直撃しました。

山田浩之代表 「胴割れが起きたり、穂はつくが穂の中に実が入っていない状態になってしまい、品質・収量が見込めなくなってきている」

 暑さに弱いコシヒカリの弱点が浮き彫りになったのです。

 そこで今年、農家は大きな決断をしました。コシヒカリの作付面積を減らし、暑さに強い品種へ切り替えたのです。

山田浩之代表 「長期予報を見ていると、今年は暑くなると」

 茨城県の農園があるエリアのここ1カ月の平均気温が平年より2℃ほど高くなっています。そして、この夏も暑くなる見通しです。

■救世主?究極米「ZR1」とは

 猛暑が新米作りを揺るがすなか、救世主になるかもしれない新しいコメが誕生していました。

コメ農家 木原民雄さん(66) 「ZR1の苗になります」

 広島の農家が見せてくれたのはアルファベットと数字の名前。全農と農研機構が共同開発した「ZR1」。

木原民雄さん 「ZEN-NOH(ゼンノウ)、RICE(ライス)、第1号ということで『ZR1』」

 ちなみに、「Z」にはこんな意味も…。

木原民雄さん 「Z世代の生産者や消費者にもっと浸透してほしい」 「(Q.Z世代の『Z』でもある、木原さんもまだまだお若い)いいえ、もう66歳ですから若くないです」 「(Q.まだまだ若いです)いいえもう…若くないです」

 と、和やかな空気も流れますが…この新品種、“究極のコメ”を目指しています。

 広島では今年初めての試験栽培。最大の特徴は…。

木原民雄さん 「最近猛暑が続いているが、暑さに強いタイプの品種。穂が出た後に出る葉っぱ『止葉』がピンと真っすぐ上に立っている。その葉っぱが日陰を作って、もみを太陽の熱から守ることで暑さに強いと言われている」

 「ZR1」は暑さに強い品種と、収穫量が多い品種を掛け合わせて生まれました。

 実験では、コシヒカリより高い温度に耐えられるという結果も。

 農園がある世羅町では去年、35℃以上の猛暑日を14回記録。広島では危険な暑さが続くことも珍しくありません。

 さらに「ZR1」がすごいのは暑さに強いだけではないことです。

木原民雄さん 「一粒が大きいので収量が取れる、コシヒカリと比べて倒れにくい、病気にも強い」

 暑さに耐える、収穫量がある、病気に強く稲が倒れにくい。「ZR1」はこの3つを備えた次世代型のコメといえるのです。

 ただ、コメはやはり味が命です。コシヒカリと比べて、どう違うのでしょうか。

全農米殻部 事業企画課 斎藤寛史さん  「一番の違いは粘りが控えめ、非常にさっぱりしておいしい。業務用なので寿司用とか用途に合っているという評価」

 まだ試験段階のため、流通は一部の業務用のみ。今後、栽培する農家が増えれば、5キロいくらで販売されるのでしょうか。

木原民雄さん 「おそらく他の品種とブレンド米として販売するのでは。(5キロ)3000円前後」