16日に最大震度6強を観測した地震では、宮城県山元町で唯一の病院が被災し、救急や発熱患者の受け入れに影響が出ています。
 2021年2月の地震でも深刻な被害を受けた病院。地震発生から1週間。命をつなごうと奔走する医療現場を取材しました。

 宮城病院若佐孝男事務部長「四隅の柱の根っこが壊れたんですよ。一番ひどいのはこの柱なんですけど、こっちは地中に入っていく所の基礎が壊れて、鉄筋がむき出しになっちゃったんで」
 山元町にある国立病院機構宮城病院。内科や脳神経外科など14の診療科がある町内唯一の病院で、亘理町や丸森町のほか、福島県からも患者が通院する県南地域の医療拠点の一つです。

 しかし、16日。山元町では震度6弱の揺れを観測。宮城病院では、複数箇所で壁が崩れたほか、配水管が損傷して床が水浸しになるなどの被害が出ました。さらに、コロナ禍で発熱患者に対応できる専用の診療室にも。
 宮城病院若佐孝男事務部長「ここが感染症の部屋で、ここに空気清浄機と陰圧の機械があるんですけど、そっちのガラスが壊れちゃったのでここが使えない。建物全体が使えなくなっちゃったので」
 地震の影響で、新型コロナのワクチン接種も中断を余儀なくされました。

前年に続き再び地震で被災

16日の地震で被害

 宮城病院が地震の被害を受けたのは、今回が初めてではありません。
2021年2月に起きた福島県沖地震でも建物や医療機器に深刻な被害を受けました。2021年11月に改修工事が本格化した矢先、再び地震に見舞われたのです。
 宮城病院若佐孝男事務部長「だいぶ調査に時間がかかって、耐震補強工事をこういう形でやろうと決めて工事が始まったばかりだったので、同じくらいの強さの地震が来たということで。
 また調査してみないと、どういう復旧方法があるかまだはっきり全体像はつかめない」

 被害が集中したのは、救急搬送された患者を受け入れる外来病棟。壁が崩落、柱も破損し外来病棟が使用できなくなりました。
 他の診療科の空いている部屋を借り、何とか救急患者を受け入れていますが、普段の6割ほどにとどまっています。

医療を継続

地域の医療を守る

 「3月22日朝のミーティングを始めます」
 宮城病院永野功院長「余震があって水が出てくるとか、あるいは天井に何らかの損傷が出てくる可能性がある時は、速やかに患者さんの避難を心掛けなきゃいけないと思いますので、よろしくお願いします」

 地域医療の砦を守る。職員たちは、診療を続けようと、総出で散乱した医療関係の資料や水浸しになった床の片付けなどに奔走。
 幸い、医療機器の被害は免れたため、外来診療は継続することができました。
 一部の診療室は被害が大きく使うことができませんが、脳神経外科の医者が、内科の診療室を間借りするなどして対応しています。
 患者「いつも診てもらう先生だから、先生の顔見ると安心する」「難病を持っているので、すごく助かっています。ここが開いててなかったら行き場がない」
 宮城病院安藤肇史医師「ここら辺の地域で唯一の病院なので、患者さんも高齢の方が多くて、実際うちが止まっちゃうと岩沼とか大河原とかあるいは相馬の方とか結構離れた所まで行ってもらうしかなくなりますので、可能な限りは、使えない部屋も出て不都合はあるが、現時点では(診療)できますので、続けていきたいと思います」
 地震の影響で中断していた新型コロナのワクチン接種も急ピッチで体制を整え、22日から再開しました。

住民の命を守るために

住民の命を守る

 わずか1年で2度の大地震に襲われた宮城病院。被害額は5億円以上。それでも住民の命を守るために。
 宮城病院永野功院長「亘理郡では入院施設がある病院はここだけなので、様々なことを町あるいは地域からの要請もございます。早くそれを回復して、日常に戻して今まで当院が担ってきた役割をきちっと行えるように努力していきたいと思っています」