仙台市は、世界で初めて津波の避難を呼び掛けるドローンの運用を10月から始めました。従来の防災無線も活用しながら、複数の手段による避難誘導で犠牲者ゼロを目指します。

 仙台市が10月17日から運用を開始したのは、津波避難広報ドローンです。宮城野区の下水処理場の屋上に2機が配備されました。
 津波注意報や津波警報、大津波警報が発表されると自動で信号を受信し、この基地局から飛び立つように設定されていて、海岸にいる人に避難を呼び掛けます。
 仙台市危機対策課佐々木朝一郎課長「仙台市では沿岸部に訪れた皆様、サーフィンとか釣りとかのお客様に津波の避難広報、避難情報が出た際にいち早く避難行動に移っていただくため、今回、情報を多重化するということでドローンの整備を行いました」

津波避難広報ドローン

 仙台市では、津波の避難を呼び掛ける手段として、津波情報伝達システムの整備を進めてきました。東日本大震災前から屋外にスピーカーを設置してきましたが、地震の揺れや津波で実際に使えたのは50基のうち12基でした。
 仙台市危機対策課佐々木朝一郎課長「津波情報伝達システムのスピーカーはある程度の設置はしているんですけれども、一回設置すると簡単には動かせないとか条件もありますので、柔軟に津波の広報をするということでドローンが良いのかなと」

 他の手段として、消防団の巡回車やヘリコプターからの避難誘導がありますが、呼び掛けを始めるまでに時間差が生じます。
 仙台市危機対策課佐々木朝一郎課長「震災の時は、実は津波の広報をするために亡くなっている方がおります。消防団員や市の職員もおります。そういう方もおりますので、危険を伴う作業になります」

 東日本大震災では、避難の呼び掛けや誘導の際に犠牲になった消防団など関係者のが宮城県全体で少なくとも100人を上回っています。
 仙台市では2022年度、国の補助金を一部活用し1億7000万円をかけてドローンを整備しました。年間の維持費は約3000万円です。
 市によると、ドローンを使った津波避難の呼び掛けは世界で初めてだということです。

 津波避難広報ドローン「訓練、訓練、大津波警報発表。巨大な津波の恐れ。避難を指示する」
 基地局を飛び立った2機のドローンは、北に3キロ、南に4キロの範囲で飛行するように設定されていて、高さ50メートルから避難を呼び掛けます。飛行可能時間は約15分間です。

 ドローンにはスピーカーのほか、カメラが搭載されています。ドローンが撮影した映像は市の災害対策本部に送られ、状況の把握や避難の誘導につなげます。更に、夜間での運用を可能にするため、機体にはライトが装備されています。寒さや暑さによる機体へのダメージを防ぐため、温熱ヒーターと冷却ファンも備え付けられ、24時間365日の運用を目指します。
 仙台市危機対策課佐々木朝一郎課長「当面は今回設置したようなコースで運用してみて、その効果とかを見極めていきたい」

 この情報を受けることになるかもしれない人たちは。
 サーファー「実際地震が起こっても分かんないは分かんないので、実際にどのくらいの音の大きさで警報を出してくれるのかは、1回体験してみないと何とも言えないですよね。波の音もザバンザバンって音はするので」
 県外から来た人「あらゆる方法を考えてやっていただけるんだったら良いんじゃないですか。やはり今、文明の社会になってきたので、いろんな手立てを考えてみんなにお知らせするっていうことを考えていけば良いのかな」

犠牲者ゼロを目指して

 命を守る避難広報ドローン。津波防災の日を前にした津波避難訓練で使われました。訓練では、想定の地震が発生した時刻から4分30秒後に飛び立ちました。市の担当者は、ドローンからの呼び掛けがどのくらい聞こえるか確かめました。
 仙台市危機対策課佐々木朝一郎課長「やっぱりこの感じだとドローンの方がもう少し音量があっても良いかもしれませんね」

 風が強いこともあり、600メートルほど内陸にあるスピーカーからの放送の方が圧倒的に大きな音量でした。
 仙台市危機対策課佐々木朝一郎課長「やはり本日のように少し風があったり波が高めですと、聞こえづらいところがあったかなと思っています」

 ドローンを使った画期的な避難の呼び掛け。犠牲者ゼロへ。
 仙台市危機対策課佐々木朝一郎課長「危険な作業を全自動でやれるということで、日頃の訓練を通じて確実な運用態勢を整えていきたい」