宮城県大崎市にオープンし、大人気の高級チョコレート専門店です。商品の製造には障害のある人たちが携わっていますが、チョコレートが障害者雇用が抱える低賃金という課題解決につながるかもしれないと注目されています。

 10月29日、大崎市のJR古川駅の近くにオープンした久遠チョコレート宮城古川店です。
 オープン以来、高品質で間違いのない味とおしゃれで色鮮やかな手作りチョコレートを求める人で連日にぎわっています。
 「すごいおいしいチョコレートだっていうから、ちょっと遠かったんけど来てみました。すごいきれいなチョコレートしかなくて迷いましたね」「以前にお土産として、栃木県にしかなかった時にもらってすごくおいしくて、今まで食べたチョコレートの中で1番おいしくて、宮城県にできたと聞いて来ました」

人気商品QUONフルーツ

 人気商品は、上質なカカオをベースにドライフルーツやナッツを混ぜ合わせた、QUONテリーヌと、イチゴやリンゴなどのドライフルーツをひとつひとつ丁寧にチョコレートで包んだ、QUONフルーツです。

 久遠チョコレートは、障害を持つ人の雇用や就労促進を目指す愛知県の一般社団法人ラ・バルカグループが展開するチョコレートブランドです。
 全国に57の拠点を構え、年商は約18億円と大人気のチョコレートです。

 宮城古川店は、仙台市などで障害を持つ子どもたちの短期入所や、放課後のデイサービスなどの支援事業を行っているkibidangoがフランチャイズとして運営しています。
 働いているスタッフ10人のうち3人が障害を持っている人で、主に商品の製造に携わっています。
 kibidango二階堂未央社長「(障害を持った子どもたちが)大人になった後の就労ってどうなるのかなと考えてきて、私たちで言えばかっこいい会社に勤めたいとか、誰からもあの会社で働いてるんだいいねとか言ってもらえる会社に彼らは勤められているのかな思った時、無いなら作った方がいいと思ったんですね」

障害者3人が商品を製造

 人気商品に使用するナッツを砕いているのは、発達障害を持つ五十嵐拓也さんです。
 五十嵐拓也さん「ホームページを見て調べて、ここに通いたいなと思った。今までいろんな事業所に行ってたんですけど、こういう(おしゃれで働きやすい)事業所は初めてなので」

 こちらの店舗は、障害を持つ人が雇用契約を結ばず1週間に1回など自分のペースで働くことができる、就労継続支援B型の事業所として宮城県の認可を受けています。
 事業所の運営にかかるスタッフの人件費や光熱費などは関係団体から必要に応じて支払われますが、工賃と呼ばれる障害を持つ人への賃金はビジネスで得た利益から支払わなければなりません。

 厚生労働省の調査によると、宮城県の2020年の月額の工賃は平均で1万7247円と全国平均を1500円ほど上回っていますが決して高くはありません。
 自分のペースに合わせて働くことができるメリットがある一方、工賃が安いという課題もあり、県の担当者も向上を目指していくとしています。

 このような状況を改善しようと、ラ・バルカグループが利益率の高い高級チョコレートに着目し店舗を出したとことろ人気となり、全国で事業を展開するまでに成長しました。
 オープンから1カ月以上が経ちますが、大崎市の店舗も売り上げは順調に伸びているということです。
 kibidango二階堂未央社長「現状、スタート段階でこの地域の水準より高い水準で(工賃の)支払いができています」

高級チョコレートに着目

 厳選された高品質の原材料のみを使い高単価で利益率の高い商品を販売することで、県の平均を上回る工賃の支払いが可能になったということです。

 この日、五十嵐さんは店の看板商品の一つ、QUONフルーツを作るため、溶かしたチョコレートにドライフルーツを浸ける作業に初めて挑戦しました。
 五十嵐拓也さん「自分不器用なんであんまり細かい作業できないんで。でも、やってるうちにできるようになる。すごくスタッフの皆さんが良い方で本当にやりやすい。自分に自信が持てる」

働く喜びと自信

 良質な商品を提供し正当な報酬を得ることで、障害を持つ人が働く喜びを感じたり自信を持てるようにしていきたい。久遠チョコレートにはそんな思いが詰まっています。
 kibidango二階堂未央社長「障害者が作ったからかわいそうだから買ってあげるみたいな感覚で買っていただきたくなくて、欲しいから買うんだけど障害者が作ったんだと言う感覚でいて欲しいなと思っています」

 久遠チョコレート宮城古川店を運営する企業の担当者は、目標とする理想の社会について次のように話していました。
 kibidango二階堂未央社長「障害のある方も普通に生活できる賃金をもらって働いていけるのが、一番社会としてはいい状態だと思っています」