トランプ関税をめぐる2回目の日米交渉では両国の“大きな隔たり”が浮き彫りになりました。 そんな中、日本の交渉カードの1つとして浮上した「造船」。アメリカの急所ともいえる分野で突破口が見出せる可能性も。

■トランプ氏“教皇姿”SNS投稿物議

トランプ大統領が2日に自身のSNSで公開したのは、ローマ教皇の伝統的な衣服に身を包んだ“トランプ教皇”さながらの画像。 生成AIで作られたとみられますが投稿の内容は画像のみでどのような意図で公開したのか説明はありません。 先月、フランシスコ教皇の葬儀に参列したばかりのトランプ大統領。 次期教皇について問われ、こう答えていました。 (トランプ大統領)(Q次は誰が良いと思うか?)「教皇?私がなりたいね。私が第一候補だ」

■「車は交渉対象外」米主張に日本反発 

アメリカとの2回目の関税交渉についてきのう石破総理に報告した赤沢大臣。 政府関係者によると、1日の交渉でアメリカ側は自動車などへの関税は 「交渉の対象外」だという考えを示したといいます。 アメリカが交渉の対象としているのは「相互関税」の上乗せ部分14%のみで、日本政府は反発しています。

(赤沢大臣)「一連の関税措置をすべて見直してもらいたいということを強く申し入れ続けていますので、そこの部分についてパッケージの中にきちっと入らないと我々は合意ができないと思ってますから」

■造船業衰退米国の“経済安保”も焦点

そんな中、日本側の交渉の切り札とも指摘されるのが「造船業」でのアメリカへの協力です。 (トランプ大統領)「今はそれほど造っていないが、まもなく非常に早いスピードで造るようになる。これは非常に大きなインパクトを与えるだろう」 「防衛産業の基盤を強化するために、商業や軍事の造船業を復活させる」 (梶川幸司記者)「こちらは世界最大級の規模を誇るノーフォーク海軍基地です。空母をはじめ多くの艦艇が停泊しています」

大西洋に面するノーフォーク海軍基地。港には、最新鋭の原子力空母「ジェラルド・フォード」の姿もありました。 ここは、多くの軍艦を造ってきたことから“造船の街”としても知られています。しかし…

(退役軍人)「(街の人は)みんなかなり給料が低い。造船業などでまともな生活を送るのは難しい。私は1991年からここに住んでいますが、私が来たときには、造船所は常に従業員を募集していました。だけど、その勢いは失われ、人々は解雇されたり、また雇われたりを繰り返しています」

(退役軍人)「(出身地の)フィラデルフィアにも大きな造船所があったが、近年は規模が大幅に縮小してしまった。(造船業復活は)経済のためになるのは間違いない多くの人が職を必要としている」

かつては造船業で世界一を誇ったアメリカも今は世界シェアたったの0.1%。 およそ5割を中国が占めており、韓国や日本にも大きく水をあけられています。 1980年に18万人いた造船業の労働者は、現在40%以上も減り、およそ10万人となっています。

先月28日に中谷防衛大臣と会談したアメリカのフェラン海軍長官。 防衛省によると、アメリカの造船業を復活させなければいけないという危機感を伝えたといいます。

経済安全保障に詳しい細川教授はアメリカの念頭にあるのは、海軍力を増強する中国の存在だといいます。

(明星大学 細川昌彦教授)「造船業は海軍力に直結するものですから、これが痛むと、中国を念頭において格差がどんどん開いていく危機感が背景にあると思います」 「先日の日米の間の関税交渉の場でもですね経済安全保障という項目の中でこの造船業の協力が実は議論されています」

■日本の高い造船技術関税交渉の切り札に

1日の交渉前、小野寺政調会長と共に赤沢大臣と トランプ関税対策を練ったという小泉前選対委員長。

(自民党 小泉進次郎前選対委員長)「中国に対する思いというのは日米で揺るがない問題意識がありますから、トランプ大統領のお言葉は、メイク・アメリカ・グレート・アゲインのMAGAですが、私はメイク・アライアンス・グレート・オールウェイズ(同盟をいつでも偉大に)こういうMAGAだと」

ワシントンでの講演でこれまで以上に日米関係を強化できる分野として造船を挙げていました。

(自民党 小泉進次郎前選対委員長)「私は日本の中で、アメリカの艦船、また軍民共用の船を造る、もしくは修理をする。そういったことに加えて、場合によっては日本がアメリカの造船の拠点に対して直接投資をする、こういったことも私は考え得る選択肢ではないかと思います」

アメリカは、日本の高い技術力に注目。国内の造船業復活のため、 日本からの投資にも期待していて、細川教授は、“造船”は重要な交渉カードになると指摘します。

(明星大学 細川昌彦教授)「日本は技術力ではピカイチだと思います」 「大事なのは同盟国としての信頼感、これがないとやっぱり軍艦とか関わる造船所には関わっていけません。信頼感と技術力、ここを持っているやっぱり日本というのは貴重な存在だと思います」 「相当これはトランプ大統領自身にも刺さるカードだと思います」

5月4日『有働Times』より