30日午前8時25分ごろ、カムチャツカ半島付近で地震が発生しました。震源地は、カムチャツカ半島沖約120キロ地点で、マグニチュードは8.7。東日本大震災以降、世界で観測された最大クラスの地震になります。

ロシアメディアによりますと、沿岸部には、最大4メートルの津波が到達。セベロクリリスクにある水産加工場が被害を受けたそうです。

セベロクリリスクには、合わせて3回の津波が到達したとみられています。3回目が最も大きかったそうですが、すでに住民たちは高台に避難していたということです。

いまのところ、死者が出ているという情報はありません。 建物被害の把握には、1週間を要するという話もあり、実態は、まだ不透明です。

地震そのものによる被害もわかっているものは、一部です。

カムチャツカ州では、幼稚園の一部が倒壊。補修工事によって休園していたため、人的被害はありませんでした。

カムチャツカ州 レベデフ非常事態相 「幼稚園の外壁が崩落したが、園児はおらず、けが人はいない」

沿岸地域や島しょ部では、市民や観光客、数千人が避難しています。

こうした動きが、震源地から数千キロ離れた場所で起きていることが、今回の地震の特徴です。

5000キロ離れたハワイ。 最大3メートルの津波が予測され、観光客が一斉に避難します。

観光シーズン真っ盛りの行楽地は、プチパニックに。市長も、強い口調で避難を呼びかけます。

ホノルル市長 「落ち着いて、協力しながら、高台へ避難してください。深刻な状況でなければ、こうした措置はしません。これは“現実”なのです」

ハワイでは1.7メートルの津波を観測。呼びかけが功を奏したのか、けが人の報告もありません。

太平洋には、より強い危機感を抱いた国もあります。 国土の大半が、海抜5メートルより低いトンガです。予測された津波は最大1メートルですが、万が一に備え、高台に避難しました。結果、人的被害が出ることなく、現在は、津波警報も解除されています。

ロシアのカムチャツカ半島は、過去にも、度々、こうした被害を引き起こす地震が起きている場所です。 特に大きかったのが、1952年に発生したマグニチュード9.0の巨大地震。最大18メートルの津波が発生したといわれています。街は、壊滅状態になりました。

住民には、その教訓が刻み込まれています。

カムチャツカ半島の住民 「1952年の大きな地震と津波の被害を知っています。住民は皆、行動すべきことを、あらかじめ理解していました」

気象庁も、73年前を参考にしています。

最大波が遅れて届く、影響が長く続く。今回の地震と同じ傾向です。

73年前の地震では、波が岸壁を乗り越えた函館港。気象庁に残る調査報告によりますと、造船所や駅前にある商業施設など、広い範囲が浸水しました。

最も高い津波を観測したのは、久慈港の1メートル。 今回の地震でも、現時点で最も高い津波を観測しているのは久慈港です。

久慈港では、潮位の記録も残っていました。地震から6時間を過ぎたころから、高くなったり、低くなったりを繰り返すようになり、少なくとも発生から15時間を過ぎるころまでは続きました。その後の現地調査で、局地的には3メートル以上の高い津波が、押し寄せていたこともわかっています。

◆73年前の津波の時には、岩手県久慈市が地震発生から9時間後に1メートルの津波に襲われた記録がありました。今回も長引いている理由、そして、いつまで続くのでしょうか。国内外の津波や高潮被害に詳しい中央大学の柴山知也機構教授に聞きました。

まずは、長引く要因について、3つあるといいます。

柴山氏は「影響が広範囲で長引く最大の要因は、地震の規模が大きかった」と話します。そして、2つ目が、津波が日本に向かって進んできたことだといいます。

津波が主に進む方向は、どんな断層がどういう方向にどれだけ割れたのかで決まります。今回は、それが日本に向かって進んできたといいます。

そして、3つ目の要因として、柴山氏は「北から日本に向かってきた津波には、地球の自転の影響で、進行方向対してて右向きの力が働く。つまり、大きな方向として、津波が日本列島の太平洋岸に沿って、南に向かいます。津波が伝わり、広がり続けることで、影響が長時間続くとみられる」と話します。

◆今後、いつまで続くのでしょうか。

柴山氏は「73年前と今回、津波の伝わる方向は類似している。津波警報は、注意報に変わったが、この後も前回同様、津波の最大の高さが、第一波よりかなり遅れてやってくる恐れがある」と注意を呼び掛けています。そのうえで「そもそもカムチャツカ半島周辺で大きな地震が起きると、津波の力は大陸に反射するほか、海底地形が複雑で波のエネルギーは屈折したり、一部が反射したりするので、到達時間と津波高さを予測するのが難しい。それでも日本近海であればデータの蓄積があるが、カムチャツカ半島周辺はロシアの管轄で、データ量が少なく予測がさらに難しい」と話します。                                         気象庁は、30日午後7時の会見で「少なくとも、あと1日程度は、津波の高い状態が継続する見込み」として、警戒を呼び掛けています。