8月3日投開票の仙台市長選挙です。若者が就職などを機に首都圏へ流出する問題が深刻な中、4人の候補者に対策を聞きました。

 任期満了に伴う仙台市長選挙に立候補しているのは、現職と新人の計4人です。
 学都・仙台と言われ、多種多様な教育機関を有する東北で唯一の政令指定都市ですが、若者の流出に歯止めがかかっていません。
 ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャー天野馨南子さん「雇用人口ダム大決壊状態なんですよ。仙台市があるから大丈夫とはもう宮城県は言えない状況になっていて、危機的状況にあると言っていいと思います」

 学都・仙台と言われ学生が集まる仙台市には、本部を置く4年制大学が11校に上り多くの優秀な人材が輩出されてきました。東北各県をはじめとする県外から進学する若者も多く、約5万人の学生が仙台市で学んでいます。

 一方で、将来を支える若者世代の仙台離れは深刻化の一途をたどっています。彼らが行き先として目指すのは首都圏です。
 高校生「私はやっぱり関東とか、もっと都会な場所に出たいなと思ってます。仙台市の中心部くらいしか若者だと行く所が無いので」
 大学生「関東はやっぱり楽しい街のイメージがあって大きな企業が集中しているので、関東に行く人も多いのかなと思います」「やっぱり東京でしかできない職業とかが結構多かったりすると思うので、そういう差が出ているのではないか」

 2024年、仙台市の転入者数から転出者数を引いた転入超過数は全体で807人の転入超過となっています。年代別では、専門学校や4年制大学を卒業する年代が含まれる20代前半が733人の転入超過です。転出する人よりも転入してくる人の方が多く、一見すると良いことなのですが人口動態に詳しい専門家は、どの地域に人が転出しているのか、その行き先を分析することが大切だとしています。
 ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャー天野馨南子さん「宮城県からせっかく978人純増させてても1181人東京都に出し、431人神奈川に出してしまっていますので、東京圏に雇用人口を取られた分を何とか宮城県と東北から集めて733人増やしているという状況です」

 更に20代前半は転入超過でしたが、その上の世代になると20代後半は588人、30代前半は303人など転出者が転入者を上回る転出超過に変わります。
 ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャー天野馨南子さん「結婚や出産という年代になった途端にどんどんどんどん減らしはじめているということは、人口構造上、未来人口にもつながらないということになります。東京都に課税者、課税人口を捧げる課税者牧場でしかなくなってるということに早く気がついてほしい」

 若者に地元企業を選んでもらうことが流出を止める第一歩、人口問題解決の主役は企業だとして、行政に求められるのは脇役としての支援と指摘します。
 ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャー天野馨南子さん「行政は若者が就職で地元の企業を選ぶための大応援をしなくてはならない。それは安易にお金を渡すことではなくて企業さんの採用や人材育成の戦略、最先端が東京圏にあるからそういう事例をきちんと引っ張ってきて情報収集して、経済界さんに流してあげるということはするべきだと思います」

 仙台市長選挙に立候補している候補者たちは、この問題をどのように考えているのでしょうか。

 現職の郡和子候補は、地元企業と学生のマッチングや起業を希望する人への支援に力を入れたいと話します。
 郡和子候補「地元の企業の皆さんたち、人材の確保でずいぶんお困りになっているところがあると思う。学生さんのうちから企業の経営者の方と色々とお話し合いをしていただいて会社の魅力を伝えてもらい、感じてもらう取り組みもしたい、してるんですけども強化していきたい」

 新人の野田紀子候補は、仙台市に若者を引き留める政策ではなくやりたいことがやれる環境をつくることが大切と話します。
 野田紀子候補「やっぱり他の地域で色々な経験されますから、その中で仙台市がなかなか良い所、良い場所だ、例えば研究するにしても仕事するにしても良い所だということが分かっていただけるのが一番」

 新人の菅原武大候補は、子育て政策を充実させることで一度仙台市を離れた若者が戻ってくると主張します。
 菅原武大候補「まずは子育て全面に行きますけども、流出しているものを止めるっていうのは私はする必要はないと思います。1回外に出て自分はどこまでやれるんだ、何がやれるんだというのを見て今度は仙台市で一緒に子育てもやれればラッキーだねって感じになれば。一回出ていくのは私全然止めないです」

 新人の松本剛候補はAI産業を支援し、若者のチャンスが広がる企業づくりが必要と話します。
 松本剛候補「仙台市には、もっともっと若い方たちがチャレンジできる場が必要だと思っています。そして企業には、若い人材をもっと採用しやすくなるような環境づくりが必要だと思っています。特にその中でもこれからますます成長が見込まれているようなAI産業、こちらの方に仙台市としても応援していければと思っています」

 一方で、当事者の若者たちが望むことは様々です。
 大学生「企業がやっぱり首都圏に集まっているというのが結構でかいところなのかなと思うので、そういう大手企業だったりとかが配置できるような環境づくりとかを行政はするべきなのかなと思います」「仙台市の魅力が分かりづらいので、大学の授業とかで行政に仙台市にはこういう魅力があってこういう働きやすい環境なんだよっていうのを教えるような授業みたいなのがあれば、より仙台市にも人が定着しやすくなるんじゃないかなと思います」「自分の地元はスタートアップに力を入れているなという感じがするので、何か新しく起業するためにすごく支援しているのでなのでそれ関連ですかね」

 若者たちと仙台の今後を決める仙台市長選挙は、8月3日に投票日が行われ即日開票されます。