消防団の担い手不足が課題となっています。地域の安心安全を守ろうと、日々訓練に奮闘しています。

 ホースで放水したり消防車に乗って火災予防を呼び掛けたり、青色とオレンジ色の制服に身を包む彼らは消防士ではありません。普段は会社員や自営業など様々な職業に就く、消防団員です。火事や災害があった時には現場へ駆け付け、地域住民の安全を守ります。しかし、消防団員の数は年々減少しています。

 若林消防団佐藤栄徳さん「地域的な結びつきが薄い世の中になっている感じがするので、自分だけが消防団に入って活動しなくてもいいんじゃないかとか、そういったところもあるのではないか」

 8月31日、仙台市若林区の荒浜訓練場で行われたのは年に1回、若林消防団の団員が日頃の訓練の成果を披露する特別点検です。地域ごとの5つの分団に分かれて、行進と放水の2種目で速さや正確さを競い合いました。

地域の安全安心を守る

 消防団は各市町村が設置していて、団員は普段は別の仕事をしている地域の人たちです。活動する際には、非常勤の地方公務員として扱われます。
 仙台市の場合、年額報酬3万6500円のほかにも出動の度に出動報酬が支払われ、火災の出動では8時間以上で8000円です。

 市町村や階級ごとに異なる消防隊よりも先に現場に到着した時には初期消火を行うほか、残火処理や交通誘導など消防隊員と連携して様々な活動に当たります。
 東日本大震災では自らも被災する中、多くの団員が住民への避難誘導や行方不明者の捜索活動などに従事しました。

 新春恒例の消防出初式で披露される仙台市の無形民俗文化財、階子乗りは高さ7メートルほどのはしごに登り、技を披露します。階子乗りも消防団の活動の1つです。消防団が訓練するのは、団員たちが本業が終えた夜の時間帯です。
 この日は、若林消防団の六郷分団が地域住民に訓練を公開しました。
 地域住民「重要な存在。どうしても頼りにせざるを得ないし頼りになる」

 消防団員は、地域の安全のためになくてはならない存在です。
 「消防団募集しています。お願いします」
 8月に名取市で消防団のPR活動が実施されました。名取市では消防団員400人の定員に対して、45人が不足しているということです。
 名取市消防団斎藤巌団長「消防団員の役割が大きくなってきている。避難誘導もお知らせしないといけないが、重要性は分かっていてもなかなか団員になってくれる人が少ない。皆さんに活動していただければ」

担い手不足でPR

 宮城県では42の消防団がありますが、団員の数は2024年4月時点で1万6840人と、東日本大震災前の2万1700人から2割以上も少なくなっています。減少の理由は々考えられますが、宮城県は地域活動への意識の低下により社会のつながりが希薄化してきていること、勤務時間や勤務地に制約のある会社員が増加したこと、若者がプライベートを重視する価値観になったことなどを理由に挙げています。

 こうした中、震災後に消防団に加入した若林消防団南材分団所属の佐藤栄徳さん(50)は、30人の団員とともに日々訓練に励んでいます。
 若林消防団南材分団佐藤栄徳さん「ピリッとしますね1日が。1日の終わりを最後練習で締めるので、嫌なことはないですね。やっぱり大人の部活って誰か言ってたんですけど、そんな感じがします。みんなで1つのことをやるのは楽しい」
 若林消防団南材分団阿部利明分団長「一番明るくしてくれる人材。素晴らしい人です。地域や町内からも愛されている。佐藤くんですかとかって知られている人物ですね」

 佐藤さんの本業は、不動産会社の代表取締役です。
 若林消防団南材分団佐藤栄徳さん「地域密着は同じですよね。不動産でも大家さんがいて貸主、借主は地域の人で消防団も地域の人なので、そういった意味ではやっぱり共通するところ。全然今まで(地域に)貢献してこなかったので、多少は貢献したい」

 この日は週に1回の夜間の防火パトロールです。佐藤さんは隊員たちと消防車に乗り込み、地域の人たちに火災予防を呼び掛けました。消防団としての大切な活動の1つです。
 佐藤さんが消防団に興味を持つきっかけとなったのは、東日本大震災です。不動産の仕事をする中で、新しい住宅を探す被災者と出会ったことでした。
 若林消防団南材分団佐藤栄徳さん「自分も何かやらなきゃだめだっていうことで、家が壊れた、流された、原発でどうしても避難を余儀なくされた方が仙台市に沢山集まってきたので、何かお手伝いができることがあるだろうなと」

夜間の防火パトロール

 佐藤さんは震災の年の12月に南材分団に入団し地域の安全を守ってきましたが、佐藤さんに続くなり手は少なく現在も定員に5人が足りない状況です。
 若林消防団南材分団佐藤栄徳さん「やっぱりどうしても年齢とともに定年退職で先輩方が抜けていかれるので、抜けていかれた後しっかり補充ができればいいがなかなかなり手が少ない現状がやっぱりある。自分だけ消防団に入って活動しなくても良いんじゃないかとか、そういうところもあるのではないか」

 それでも佐藤さんは、地域に貢献したいという強い思いで消防団の活動を続けています。
 若林消防団南材分団佐藤栄徳さん「幼稚園、小中高校ずっとこっちなので地元を離れたことはない。災害があった時には地域のためにできることがあれば頑張っていきたい」