「南京事件」から88年を迎えた12月13日、中国共産党の石泰峰・党中央組織部長は追悼式典で、「歴史はこれまでも、これからも証明するだろう。軍国主義の復活の企みや、戦後国際秩序への挑戦は必ず失敗する」と述べた。石氏の発言は、日本の戦前の軍国主義を強く批判する内容ではあるものの、高市政権を直接名指しする表現は回避しており、一定の抑制がうかがえた。今回の発言で直接的な言及を控えた背景には、国内の反日ムードが過度に高まることを避ける配慮があるとみられる。12月13日は、日中関係が大きく緊張した出来事とも重なる。2012年9月、日本政府が沖縄・尖閣諸島の国有化を発表した後、同年12月13日には、中国国家海洋局の航空機が、尖閣諸島の魚釣島沖で日本の領空を侵犯する事案が発生していた。
中国とロシアが、日本周辺で軍事的な連携を強める状況が確認された。統合幕僚監部によると、12月9日、核兵器が搭載可能であるロシア軍の長距離戦略爆撃機「ツポレフ95(Tu95)」2機が日本海から東シナ海へ進出した。これに中国空軍のH6爆撃機2機などが合流し、編隊は沖縄本島と宮古島の間を通過した。10日には、日本海上空では航空自衛隊の戦闘機6機と、米空軍の「B52戦略爆撃機」2機が戦術訓練を行った。12日付の朝日新聞は、今回参加したB52は在日米軍基地には配備されていない機体で、訓練参加は米国側の意向によるものと報じた。12日には、小泉進次郎防衛大臣とヘグセス米国防長官が電話会談を行った。会談では、中ロによる軍事的行動について、「地域の平和と安定に資するものではない」との認識を共有し、日米間で緊密に意思疎通を図り、連携していく方針で一致した。
防衛省によると、中国海軍の空母「遼寧」は12月6日から12日にかけ、艦載戦闘機やヘリコプターの発着艦を計260回行った。100回を超える発着艦が確認されたのは初めてで、中国が空母3隻体制(遼寧、山東、福建)となって以降、日本近海でこれほど集中的な活動が確認されたのも初となる。こうした中、12月6日には、中国軍のJ15戦闘機が、航空自衛隊のF15戦闘機に対し、2回にわたりレーダー照射を行った。1回目は午後4時32分頃から約3分間、2回目は午後6時37分頃から午後7時8分頃まで、約30分間に及んだ。
防衛省関係者によると、当時は十分な距離と高度差があり、「ねじれの位置関係」にあったため、直ちに衝突の危険がある状況ではなかったという。空自出身で元F15操縦士の内倉浩昭統合幕僚長は12月11日、約30分にわたる断続的なレーダー照射について、「自身の経験では例がなく、今般の状況であれば、大変なストレスを感じていたと思う」と述べ、現場への心理的負荷の大きさを示唆した。小泉防衛大臣は7日午前2時、1回目の照射から約9時間後に事案を公表した。朝日新聞は10日、防衛省内では、危険度を踏まえ対外公表に慎重な意見もあったが、小泉防衛大臣が公表を見送った場合、将来の対応に影響を及ぼしかねないとの判断があったと報じている。
日本政府は、オーストラリア、ドイツ、イタリア、NATOなどとも情報を共有し、懸念を伝達している。中国による軍事的な威圧行動は他国にも及んでおり、米AP通信は今年2月11日、南シナ海上空で豪空軍機に対し、航空機が敵のミサイル攻撃から身を守るために使用する「フレア」が発射されたと報じた。また、仏AFP通信は7月8日、紅海上空で独軍偵察機に中国艦がレーザー照射を行ったと伝えている。米国は日中双方との関係維持を重視する姿勢も崩していない。米ホワイトハウスのレビット報道官は11日、「トランプ大統領は高市総理と非常に良好な関係を築いており、日本は重要な同盟国だ」とした上で、「日本との強力な同盟関係を維持しつつ、中国とも良好な関係を構築できる立場にあるべきだ」と述べた。トランプ大統領は11月10日、米FOXニュースのインタビューで、中国との関係について問われ、「中国は我々の友人と言えないのではないか」との質問に対し、「多くの同盟国であっても、友人とは言えない」と述べた。そのうえで、トランプ大統領は、「中国以上に貿易で我々を利用してきた」と不満を示しつつ、「私は中国と良好な関係を築いている」と語り、対中関係を一律に対立構図で捉えない姿勢を示した。
中国の王毅外相が各国への働きかけを強めている。12月2日、王外相はモスクワでロシアのショイグ安全保障会議書記と会談した。ロシア側はこの席で、「一つの中国」原則を断固として堅持する立場を改めて表明し、台湾問題に加え、チベット、新疆ウイグル、香港を巡る問題についても、中国の立場を支持すると明言した。8日には北京で、ドイツのワーデフール外相と会談した。王外相はこの中で、「ドイツと違い、日本は戦後80年が経っても、いまだに侵略の歴史を徹底的に反省していない」と発言し、日本の歴史認識を批判した。そのうえ、「一つの中国」政策を堅持する重要性を強調した。
★ゲスト:小原凡司(笹川平和財団)、峯村健司(キヤノングローバル戦略研究所) ★アンカー:杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)