年末の風物詩「築地場外市場」が12月は観光目的で訪れることは控えるように異例の呼び掛けを行っています。東京・築地で今、何が起きているのか現地を取材しました。

■なぜ?築地「観光客来ないで」

つきぢ松露 齋藤賢一郎社長 「中学、高校くらいの時は築地も昼12時から1時くらいになると、店の前でキャッチボールができるくらいだった。買い物しづらい街になったという声が一番心が痛い」

40代の人 「以前から買っている人にしたらすごく迷惑。商売屋さんが一番大変」

 混みすぎる年の瀬の築地に異例の対策が取られることになりました。

築地食のまちづくり協議会 寺出昌弘副理事長 「12月は人がすごい。『安全性の面で自重して』と(いう意味で)。決して『来ないで』というわけではない」

 一体、どういうことなのでしょうか。

大将 「なんでおすすめしてるか分かる?よそには出ない酢だこだから」 客 「お正月までもつ?」 大将 「もちますよ」

 年末の空気が徐々に漂い始めた築地場外市場です。

60代の人 「(築地の)常連です。観光客用にお店が変わったから手間取っている」

 “築地の常連”が特に混雑について感じていたのが…。

60代の人 「年末は来られない。一回カニを探しに12月31日に来たけど入れなかった。年末来るのはちょっと…」 「もうない」

 おととし12月の築地場外市場の通路はぎゅうぎゅうで前に進むのもやっとの状況でした。

築地食のまちづくり協議会 副理事長 寺出昌弘さん 「年末12月は一般の人たちの買い出しの月にしたい。観光客には申し訳ないが違う時に来てもらえないかと発信」

 築地場外市場では、この12月に初めて「食べ歩きやツアー・ガイドを控えてほしい」と呼び掛けているんです。

築地食のまちづくり協議会 副理事長 寺出昌弘さん 「築地は道が狭い。一方通行の道がないので、どうしても動けなくなる道がある」

 混雑の対策として観光業界に呼び掛けるもので、一般客の買い出しはこれまで通り歓迎だといいます。

60代の人 「(Q.昔来ていた人が足を運ぶきっかけになりそう?)私たちも1年ぶりくらいなので、なぜかと言うともうすごくて観光客とか(が多くて)買えない」 「久々に来て少し買えたからうれしい」

 一方、観光客が多く訪れる店の本音は…。

観光客が多く訪れる店の人 「(Q.観光客は年末を控えてほしい?)控えてほしくない」 「(Q.観光に来てほしい?)うん、皆そう言っている」

 16日も築地のグルメは外国人観光客の目的地。

カナダからの観光客 「おいしい」 「びっくりするほど。バンクーバーでもすしはあるけど、日本のすしは別物」

 マグロの握りを絶賛するカナダ人ファミリーは築地の「新しい呼び掛け」に賛成か、反対か…。

カナダからの観光客 「私たちはそのことを何も知らなかった。ツアーには申し込んでいないし自分たちで歩き回っているだけ」 「ガイド付きのツアーや観光よりも安全の維持はより重要」

 マグロの握りを味わう皆さんにも話を聞きました。

アメリカからの観光客 「おいしい!」 「旅行を計画する際に、この魚市場を多くの人たちから聞いた。素晴らしいところで楽しかったって」

 築地を楽しみにきたアメリカ人ファミリーは…。

アメリカからの観光客 「もし観光客たちが聞いたら動揺するでしょう」 「複雑なことだと思う。観光の規模が大きくなると、来る人の数も増えてくる。私たちもマイアミから来ていて同じような状況はある」

 まだ12月半ばということもあり、16日の築地はさほど混んでいませんが、おととしの12月末にはこの混雑ぶりです。ただ、1980年代も変わらぬ混み具合に見えます。

警察(1986年) 「大型トラックの運転手さん、左折できません、直進して下さい」

■“異例の対策”分かれる賛否

 昭和から続いていた年の瀬の築地の大混雑。異例の呼び掛けを店の人たちはどう受け止めているのでしょうか。

 1999年出店の鮮魚店の大将は…。

鮮魚店 斎藤水産 斎藤又雄さん 「観光客、外国の方が多いので、ちょっと来づらいという意見も多々ある。観光客の方も築地というブランドを覚えてもらうにはいい」

 築地で90年以上の精肉店も…。

精肉店 鳥藤 鈴木昌樹社長 「普段はにぎやかでいいと思う。本来、楽しんでいってもらいたいとやっていきたいけど、年末はね…生鮮品を買ってほしいので難しい、本当に難しい」

 創業から100年、築地を見てきた玉子焼き店は…。

玉子焼き店 つきぢ松露 齋藤賢一郎社長 「日本の文化として正月用品を築地で買いそろえてくれるお客様に対し、少しでも買いやすい状況のために、ちょっとご遠慮いただきたい」

 異例の呼び掛けはなぜ、今年だったのでしょうか。

築地食のまちづくり協議会 副理事長 寺出昌弘さん 「昨今、客層が変わり、インバウンドや観光客が年末もいらっしゃる。来てもらってもいいが絶対総数がすごい人になってしまう。一般のお客様を含め、安全に買い物ができなくなる」

 一方、これまで通り歓迎だという「一般客の買い出し」。そのコツも教えてもらいました。

築地食のまちづくり協議会 副理事長 寺出昌弘さん 「『朝一番のいいものを』と皆行列になる。昼すぎにゆっくり来て買い物をするのがコツ」