忘年会のシーズンですが、気づかないうちにアルコールハラスメント、アルハラの加害者にならないよう、定義や危険性を改めて整理します。

 「飲め飲めとか強要されるようなことですかね」「会社とかであるようなイメージが強かったりしますね」「じゃあちょっと(飲みに)行こうよって言って、来ないと出世に影響することがあるよとか言って、ありそうじゃないですか」

 忘年会や新年会など、職場での飲み会が増える季節に問題となるのがアルコールハラスメント、アルハラです。
 一気飲みや依存症など、アルコールに関連する問題の解決などに取り組む認定NPO法人ASKの代表、今成知美さんです。
 今成知美さん「アルハラは飲酒にまつわる人権侵害という意味ですね。命に関わるケースもあるということ、そこが大事なポイントなんですけど」

 ASKが提唱したアルハラの定義、その5つを教えてもらいました。
 1つ目は、飲酒の強要です。集団ではやし立てるなどして心理的な圧力を掛け、お酒を飲まざるを得ない状況に追い込むことです。たとえ1対1でも1杯であっても、相手の嫌なものを無理に勧めればハラスメントに該当します。

 2つ目は、一気飲ませです。グラスや瓶に入ったお酒を一気に飲み干す一気飲みや、早飲み競争をさせることです。場を盛り上げるために大量のお酒を飲むことで、急性アルコール中毒によって死に至る場合もある非常に危険な行為です。

 3つ目は、意図的な酔いつぶしです。参加者を酔いつぶすことを意図して飲み会を行うことで、傷害行為にも当たります。

 4つ目は、飲めない人への配慮を欠くことです。本人の体質や意向を無視して飲酒を勧めるほか、宴会に酒類以外の飲み物を用意しなかったり飲めないことをからかったりすることも含まれます。

 5つ目は、酔ったうえでの迷惑行為です。アルハラは、人にお酒を強要することだけではなく自分の飲める量を超えて飲酒をした揚げ句酔って絡んだり、暴言や暴力、セクハラ等の行為をすることも含まれます。

 アルハラのほとんどは、こうした行為が複数絡み合って起こる場合が多いということです。
 「風邪をひいてるときに誘われてきょう飲めませんと言うと、アルコール消毒しに行くぞって言われて行きました。今は変わってきているので強要することもないし、断っても怒るような文化はないかなと」

 アルハラの中でも特に悪質なのは、命にも係わる過度な飲酒の強要です。東京消防庁が発表した急性アルコール中毒による搬送者数の推移では、管内だけでも毎年1万人近くの人が急性アルコール中毒によって救急搬送されています。年代別に見てみると、20代が半数近くを占めています。

 その理由として、経験の浅さから自分の適量が分からず過度の飲酒をしてしまうことなどが考えられます。一緒に飲んでいる周りの人も、節度ある飲酒について注意を払うことが重要です。

 被害者の多くはお酒を飲みたくないはずですがそれでも飲んでしまう、その背景には何があるのでしょうか。
 「断りにくいと思う、上司からだと断ったら次に会いにくい」「日頃お世話になっているので断らないほうがいいかな」「飲まないと、腹を割って話ができないっていうケースが会社では多いんですよ、飲む人はよく気心知れるでしょ。残念ながらそういうことは関係すると思いますよ、人選する時にも」

 アルハラが起きやすいのは、職場の飲み会など上下関係がある場面です。
 今成知美さん「日本って飲みニケーションって言いますよね。なので飲むことがコミュニケーションの大事なツールになっていて、職場では仕事の延長だったり飲むことが当然っていうような認識がまだあるんじゃないかと思うんですよね」

 周りから直接の勧めがなくても、その場の空気に影響されて飲んでしまう場合も多いということです。
 「僕はちょっと合わせて多めに飲んじゃうことありますね」「やっぱり楽しくなった時ですよね。盛り上がって楽しくなった時、抑えて飲もうと思ったつもりなんだけど、ついつい飲んでしまって」

 アルハラの認知は進んでいますが、一方で自分が加害者であることに気づかない無自覚のアルハラもあります。
 今成知美さん「例えば、乾杯と言えばビールでしょって言って何も聞かずにみんなのビールを注文しちゃう。それがアルハラだとは思ってなくて、良かれと思ってやったっていうことになってるわけですね。何でお前飲み会に来なかったんだよ、ということもアルハラになっちゃう」

 今成さんはお酒を飲めない人に限らず、全ての人が飲まない選択をできる環境を整えることが重要だと話します。
 今成知美さん「(主催者や司会が)ノンアルオッケーです。特にお酒は勧めないし、お酌もし合いません。自分のペースでやってくださいって冒頭で宣言しちゃう。飲まない選択肢が普通であってほしいと思っていて、お酒、別に飲んでもいいんですけど、飲まない人もいるわけですよね。だから両方が共存できるようになってほしいと思っています」