社長による社員への暴行の一部始終が防犯カメラに。舞台となったのは“スマイル企業”として自治体から認定を受けていた会社でした。

■“スマイル企業”でまさかの暴行

 3代続く札幌市の老舗の建設会社「花井組」の集合写真。道路工事や除雪など地域のインフラを支える企業です。ホームページには…。

花井組のホームページ 「社訓『礼儀正しく』『私ごとで人に迷惑をかけないこと』」

 「人に迷惑を掛けない」。そんな会社で信じられないような出来事がカメラに収められていました。

 泣き声を上げ、正座させられる従業員の男性。暴力を振るっているのは、この会社の社長です。

社長の妻 「やめなって、そういうの」

 社長の妻が止めに入りますが、その後も暴行は続きます。今度は耳や髪の毛をつかんで頭を揺らし、さらには椅子を持ち上げて殴り掛かろうとする様子も。

 現場は会社の社員寮。会社のホームページには「さっぽろまちづくりスマイル企業」「札幌市ワーク・ライフ・バランスplus企業」など数々の認定を市から受けていると書かれています。

 その場には社長の妻のほか、会社の常務も居合わせていましたが、暴行は約1時間にわたって続いたといいます。

被害に遭った男性 「ひざ蹴りをおなかにくらって、体勢を崩して前かがみになったところを左手で平手打ちみたいな感じで殴られて『ふざけんな、俺に刃向かう気か』と言われながら、主に顔面を左右蹴られたり殴られたり、20回前後ですかね」

■“暴行”きっかけ コイの世話?

 なぜ、ここまで激しい暴行を受けたのか。発端は「ニシキゴイの世話」でした。

被害に遭った男性 「コイの世話をしていたんですけど、社長の妻に何か『取って』と言われた。僕も声を荒らげて『分かった』と言ったら、その一言が社長の気に障っちゃって」

 カメラ手前にある水槽で飼育されているのは大量のコイ。日常的な世話は社員がやらされていて、この日は男性が水槽の掃除を命じられたことに不満気な態度を取ったところ、暴行が始まったというのです。今回、暴行を受けた男性は全治約3週間のけがをしました。

被害に遭った男性 「左耳が聞こえづらかったり。首も痛めたり、馬乗りになったりもあったので、股関節とひざとかも痛かった。何でここまで俺がされないといけないんだろうというのが一番。それを身近で見ている上司はなぜ止めないんだろうと」

 さらに、暴行の後に社長から言われたのは、このことをなかったことにするかのような言葉でした。

被害に遭った男性 「(社長から)『俺も忘れるから、お前も忘れろ』と暴力をされた後に言われた」

■退職後も“脅迫電話”

 男性は先月、警察に被害届を提出。そして会社を辞めました。しかし、退職した後も社長側からは脅迫のようなメッセージが男性のもとに届いていたのです。

社長の親族からの留守電 「電話出れ!お前いい加減にしろよ、まじで。本当にさらいに行くぞ、お前」

 男性以外の従業員にも日常的に行われていたという社長の暴力行為。9日、かつて勤めていたという別の男性を取材すると、社長への「絶対服従」という社内の異様な風潮が見えてきました。

 ANNが入手した会社のグループLINE。従業員は朝起きると、必ずあいさつのメッセージを送ります。

花井組の元従業員 「まず朝、起きたら会社着く前に全員が入れるLINE。これは休日だろうが連休だろうが平日だろうが、毎日」

 さらに、社長からのLINEには仕事中や車を運転している最中であっても即、返信を求められたといいます。

花井組の元従業員 「今回、明るみに出たようなことは許されることではないので、これをきっかけに改めてほしいというよりは、もう今さら改められるようには思えないので、しかるべく処分を受けてほしいなと思う」

■会社を直撃すると…

 一連の暴行について、会社を直撃すると…。

花井組 常務 「弁護士に聞いて下さい」 「(Q.会社としてお答えできるのは?)一切ないです」

 しかし、花井組は8日、関係企業に対してこのようにメッセージを送っています。

花井組のメッセージ 「事実と異なる点が多くあり、大変遺憾に思っています。現在、顧問弁護士に依頼し、示談に向けて進行中ですのでご安心下さい」