盆栽22個を盗んだとしてベトナム人の男が逮捕されました。今、各地で急増している外国人による盆栽の窃盗。その狙いを専門家に聞きます。

■“被害1億円超”全国で相次ぐ

 グレーのTシャツを着たマスク姿の男。窃盗容疑などで逮捕されたベトナム国籍のファム・ミン・ドゥック容疑者(30)です。

 ファム容疑者が狙ったのは日本伝統の生きた芸術「盆栽」でした。

被害に遭った男性 「朝来たら、ごっそりなくなっていた。あれ、おかしいなって思ったら、その他のところがダーッと。自分で良かったものが全部(盗まれていた)」

 被害に遭ったのは東京・昭島市の園芸店。ファム容疑者は去年12月に盆栽22点、67万円相当を盗んだ疑いが持たれています。

 警視庁によりますと、ファム容疑者は別の実行役2人が盗んだ盆栽の運搬役でした。そして、さらに別の人物からこんな指示を受けていたといいます。

指示役 「価値がないと判断した盆栽を茨城県の川に半分捨て、残りの半分を指定した空き地に運べ」

 つまり、今回の事件は“組織的な盆栽窃盗”の可能性があるのです。

 盆栽の窃盗事件は全国で相次いでいて、去年1年だけでも被害額は1億円を超えているといいます。

 なかでも増えてきているというのが複数人による犯行です。

 棚に置かれた盆栽を次々と下ろしていく怪しい人影。栃木県内で盆栽が盗まれる瞬間を捉えた映像です。被害は一晩で24点、総額800万円相当。

 別の角度の防犯カメラ映像を見ると、雨の中、傘も差さずに歩く2人組が確認でき、複数人による犯行だったことが分かります。

 さらに、熊本県内でも被害総額が1880万円にも上る窃盗事件がありました。

 実行犯とされているのがベトナム国籍の男3人です。

■外国人に狙われる“盆栽”なぜ

 盗まれた盆栽はどこへいくのか。

春花園BONSAI美術館 小林國雄園主 「私の家でも盗まれた。ベトナムに仕事で行った時、私が盗まれた盆栽が店にあった。仕事に行った先にあってびっくりした」

 盆栽界の巨匠・小林國雄さんも手塩に掛けて育てた作品が盗まれたことがありました。

春花園BONSAI美術館 小林國雄園主 「恐らくは窃盗に入るのは1人じゃない3人以上で来ている。どこもある程度、塀で囲ってあるから短期間でとることは1人ではできません」

 犯行グループが組織的に盆栽を狙うのは大きく2つの理由があるからだと指摘。

 1つ目の理由は「足のつきにくさ」です。

春花園BONSAI美術館 小林國雄園主 「枝を切って形を変えることが簡単にできる。はさみと針金で作ることもできるし、ちゃんとした写真がないと(証明も)しづらい」

 そして2つ目の理由が「世界的な盆栽ブーム」です。盆栽の輸出額は5年間で約2倍に急増するなど今、世界で盆栽が注目されています。

春花園BONSAI美術館 小林國雄園主 「とにかく世界で盆栽がものすごく人気があるから、すぐ売れるということもある。盗んだものがすぐ売れる。海外に出ると日本人は諦めてしまうし、足が付きにくいので盗みやすいし売りやすいため盆栽が狙われている」

 12日、送検されたベトナム国籍のファム容疑者は「運搬役」を担っていて、組織的な盆栽窃盗事件だとみられています。警視庁は実行役と指示役などの捜査を進めています。