農林水産省が来年のコメ政策を方針転換し、生産量を減らす方向で調整していることが分かりました。価格はどうなるのでしょうか。

■“増産”から方針転換へ

鈴木憲和農水大臣(43) 「(Q.小泉前大臣は『コメ担当大臣』、鈴木大臣は…?)山形県には『はえぬき』というお米がある。私は農水省出身ですから『はえぬき大臣』です」

 自らのことを地元・山形県のコメから“はえぬき大臣”とする鈴木憲和農水大臣。強調したのは「価格」ではなく「量」を重視したコメ政策です。

鈴木憲和農水大臣 「備蓄米を放出するべきだったのは去年の春先から夏にかけて。その時期に量の不足に対応するべきだった」

 「5キロで3000円台でなければならない」とする石破前総理のもと、小泉氏は随意契約の備蓄米を放出し、積極的にコメ価格に介入していました。

 しかし、鈴木農水大臣は「価格はマーケットのなかで決まるべきもの」と話し、備蓄米は価格を見て放出するのではなく、コメが不足した時に放出する考えを示しています。

 価格高騰には「おこめ券」などによる補助で対応できるとしています。

石破茂総理大臣(当時) 「今後の政策の方向性を次のように明確にします。増産にかじを切ること」

 石破前総理が示したコメの増産も事実上の方針転換です。

 今年の生産量は例年を大きく上回る748万トンになる見込みですが、関係者によりますと、来年の生産量は711万トン程度とする方向で調整しているといいます。

鈴木憲和農水大臣 「今の状況は不足感があるという状況ではないと思っている。そういう状況のなかで来年については安定的な生産に向けて需給バランスを取れるような生産の目安を示していく」

 鈴木大臣が目指すのは“増産”ありきではなく「需要に応じた生産」です。

■「コメ生産量減」で価格は?

 新たな方針でコメの価格はどうなるのでしょうか。コメ価格の専門家に農水省の生産量見通しについて聞くと…。

流通経済研究所 折笠俊輔主席研究員 「米価が高いからといって生産量が増えると、供給量が増えすぎて価格が大暴落となってしまう。誰ももうからない世界になってしまうので、そういう点をある程度調整するように」

 価格の下落を懸念する生産者に配慮したといいます。そのうえで、価格については…。

流通経済研究所 折笠俊輔主席研究員 「令和8年(2026年)産以降が、鈴木大臣が打つ政策が効いてくる。需要量に合わせた生産がおっしゃる通りにできるなら、米価としては5キロあたり3000円台」

 ただ、それには条件があります。

流通経済研究所 折笠俊輔主席研究員 「なぜ令和のコメ騒動が起こったかというと、需要に合わせて生産をしていたが、供給量・生産量の予測と需要量の予測が間違っていたからコメ不足になって、令和のコメ騒動になった。需要量と供給量を今まで以上に精緻に把握できないと“令和のコメ騒動、再び”になるので、需要量と供給量をちゃんと把握する条件が(クリア)できれば安定していく」

■現場の農家は…

 では、農水省の生産量の調整はうまくいくのでしょうか。現場の農家に聞きました。

コメ農家 多田正吾さん 「“需要に応じた生産”は良い話だが、結局『もち米』や『酒米』でも(飼料用米などの)値段が安ければ、需要に応じた生産はしない。今の状態なら主食用米を作らないとカネにならない。(主食用米の生産量は)簡単には減らない。もっと増える」