この春、東北で初めての公立夜間中学が仙台市に開設され、10代から70代の15人が新たな一歩を踏み出しました。最年長で72歳の女性の思いを取材しました。

 宮城県富谷市に住む西村むち子さん、72歳。4月から中学生になりました。
 西村さんが入学したのは、仙台市が南小泉中学校に開設した東北で初めての公立夜間中学です。
 11日に行われた入学式で、西村さんは新入生15人を代表し誓いの言葉を述べました。
 新入生代表西村むち子さん「一人一人がそれぞれの目標を持って達成できるように努力していくことをお約束し、誓いの言葉といたします」

公立夜間中学の入学式

 公立夜間中学は、家庭の事情や不登校、病気など様々な理由で十分に学べなかった人の学び直しの場です。現在、南小泉中学校を含め17都道府県で44校が設置されています。

 西村さんは青森県出身。地元の小中学校を卒業した後、雑貨店で働きながら定時制高校を卒業しました。
 西村むち子さん「時間までにその勉強をやりなさいという指導ばっかりだったから、意味が分からないまま次のページ、次のページって進んじゃって分かってないですね」

 結婚し宮城で暮らすようになってからも「もう一度、学び直したい」との思いがありましたが、家事や育児に追われ、かないませんでした。
 転機が訪れたのは、2022年6月です。市民団体が開いている仙台自主夜間中学との出会いでした。

 ここでは、現役や退職した教員らがボランティアで読み書きや計算など基礎的な内容を教えています。学んでいるのは10代から80代の約60人です。西村さんは、印刷工場で清掃の仕事をしながら月に6回ほどの授業に通いました。
 西村むち子さん「とにかく教えてもらったことに対して分かるんですよ。先生が一から教えてくれるから。すごいな。ありがとうございます」

勉強の楽しさを知る

 勉強の楽しさを知った西村さん。公立の夜間中学に通えばもっと学ぶことができるのでは、と考えるようになりました。
 西村むち子さん「次、大学に行きたいなという思いが頭の中にちょっと入っていたんで、基礎から中学校の勉強をして基礎からもう一回学び直して。せっかくのチャンスだからやってみようかなって」

 公立夜間中学の入学式を翌月に控えた3月下旬、仙台自主夜間中学の教室に、勉強に励む西村さんの姿がありました。
 西村むち子さん「毎日5分でもいいから続けると頭が、脳が冴えるんですよ。(公立夜間)中学に行ったら、若い人よりも時間がかかるかもしれないけれど、継続は力なりって、ああ、こういうことかなぁってちょっと思いました」
 スタッフ「すごい寂しいんですけど、一つはむち子さんが新しい場所でよりいろんな人と勉強していくって思うと、それがもっといいだろうなって思うので、是非応援したいですし、頑張ってほしいなって思います」

 南小泉中学校の夜間学級では、生徒は平日の夜に昼間の中学校と同じ教科を学びます。個別指導や少人数のグループによる授業も取り入れて、一人一人のペースに合わせた学びの場を目指します。3年間での卒業が原則ですが、6年まで在籍できます。
 南小泉中学校五十嵐秀樹校長「ここに集まった方々は、理由はそれぞれ異なっていても学び直したいとの思いで集まった方々です。思いを同じくした仲間と共に学び合い、互いに支え合うことで、ご自身が得られるものも、大きく深いものになっていくのではないかと思います」
 新入生「(公立夜間中学ができて)ありがたいかなって一言では感じます。このタイミングでこの学校に入学できたのは運命かなって気がします」

決意を新たに

 入学式を終えた西村さんは、決意を新たにしていました。
 西村むち子さん「まだどきどきしてますけど、自主夜間中学で休まないで頑張ったのは皆さんのお陰だから、ここに通うのもなるべく休まないようにして勉強したいなと思います。若い人と同じように頑張って、そしていい意味でのライバル、勉強のライバルとして頑張りたいなって思いました」