7月30日に発生したカムチャツカ半島沖の地震に伴う津波では、各地で車での避難による渋滞が発生し課題となりました。多くの自治体は徒歩での避難が原則としていますが、住民からは車避難についても検討してほしいという声も出ています。

 須田義一カメラマン「石巻市日和山では、高台へと避難する車の列ができています」

 宮城県石巻市でも、高台にある日和山公園の周辺で渋滞が起きました。

多くの自治体は、原則徒歩での避難を呼び掛けますが現実的には難しいという声もあります。

 石巻市渡波地区では、東日本大震災で住民519人が犠牲になりました。津波避難対策協議会の会長を務める阿部和夫さんは、高台まで遠い地区からの徒歩避難の難しさを訴えます。

 阿部和夫さん「真冬の2月で気温が氷点下だと、体がどうしても固くなっている。老人や子どもを背負って、手をつないでというのは(難しい)」

 地区の約5500世帯を対象に行ったアンケートで避難の方法について聞いたところ、徒歩が1876人に対し車が2035人と車で避難すると答えた住民が上回りました。

 「徒歩で避難しろと言われても高齢者を抱えていて完全に無理」「高齢者続出の時代に徒歩避難は考えられない」と高齢化を理由にする人が多くいました。

 住民からは「山を削ってでも3000台程度の車が停められる駐車スペースが必要」「とにかく車で逃げられる体制を考慮してほしい」といった切実な声が上がります。

 専門家は、高齢化などで車で避難せざるを得ない人が増えれば渋滞を防ぐことは難しく、対策も限られると指摘します。

 東北大学災害科学国際研究所佐藤翔輔准教授「本当に車が必要な人は誰かを細かく決めることが1つ。地域の中での合意や共有を合わせてやっていくことが、これから車による避難や渋滞を低減していく、軽減していく唯一の方法なのかなと思います」

 車避難について石巻市とも話し合っている阿部さんは、震災を体験したからこそ感じる車で避難したいという住民たちの本音も語ります。

 阿部和夫さん「避難所の狭さや環境の劣悪さがネックだと思っています。そこに行きたくないという。プライバシーを守れない」

 避難所の環境はあまり改善されておらず、阿部さんは避難所に行きたくない人が減らなければ、車での避難者も減らないと考えています。

 石巻市は、とにかく命を救うことが第一でそのためにも徒歩避難の原則を理解してほしいと話しますが、阿部さんは現実を見据えてほしいと訴えます。

 阿部和夫さん「ただ単に徒歩避難。しかも48時間いて後は自分で歩いてどこかに行けとと。東日本大震災を経験した市町村の話ではないと思います」