加齢や高血圧などで持続的に腎臓の働きが低下する慢性腎臓病、通称CKDについて便秘の治療薬がその悪化を食い止めることを東北大学の研究グループが世界で初めて臨床試験で確認しました。

 慢性腎臓病CKDは国内で約1500万人、成人の7人から8人に1人がかかると推計される病気です。

 進行すると透析が必要になるほか脳卒中などのリスクも上がりますが、これまで根本的な治療法はありませんでした。

 東北大学大学院の阿部高明教授らの研究グループは、CKD患者の多くが便秘を併発することに注目し、動物実験を経て便秘薬のルビプロストンをヒトに投与する臨床試験を行いました。

 国内の9医療機関でCKD患者118人を対象に、この薬を24週間にわたって1日16マイクログラム投与するグループ、その半分を投与するグループ、偽薬を投与するグループの3つに分け、それぞれの血液や便を調べました。

 その結果、ルビプロストンを投与したグループでは腎臓の機能の低下が抑えられたことが確認されました。

 この便秘薬によって腸内環境が変化し、細胞に中にあって臓器が働くエネルギーを作り出すミトコンドリアが活性化したことが影響しているということです。

 阿部高明教授「腎臓は血液をろ過したり、あるいは要らないものを出すという臓器で非常にエネルギーを使っていますので、細胞のエネルギーを増やして腎臓の機能を強化することができたのではないかと思います」

 今後、ルビプロストンが腎臓病の治療薬として国に承認されれば、腎機能を保護する根本的な治療が実現し、透析患者の減少も期待されます。

 阿部高明教授「今回の薬のデータを基にいち早く治験をやって、患者さんに届ける努力をしたいと思っています」

 今後、2年から3年程度の治験を経たうえで、承認を目指すということです。

 紹介したルビプロストンは、現状あくまでも慢性便秘症の治療薬です。

 今回の試験に使ったのは日本で流通していない少量のカプセルで、日本で処方されるルビプロストンを便秘の症状が無い腎臓病患者が服用すると、下痢を起こして更に腎臓の機能を悪化させる恐れがあるため注意が必要です。