黒板をキャンバスに作品を生み出していく黒板アート、宮城県大崎市にある強豪校の挑戦です。

 巨大な黒板をキャンバスにチョークだけを使って描く黒板アート、10年前からは高校生が腕前を競う黒板アート甲子園も開催されています。この大会で3年連続最優秀賞に輝いた実績を持つ強豪、大崎市にある古川黎明高校の挑戦の夏が始まります。
 部長氏家寧音さん「甲子園優勝です」

 数十時間をかけて黒板に巨大なアートを描く黒板アート。古川黎明高校の美術・陶芸部は、全国約200校が参加する黒板アート甲子園で毎年入賞を果たしている強豪です。
 古川黎明高校美術・陶芸部顧問佐々木真先生「割と創造的でクリエイティブな子たちが多いのかな、という気が学校全体としてあります。みんな対等にお互いに意見を言い合って作っているから、これは黒板アート向きではあるのかなと」

黒板アートの強豪校

 それぞれの個性や想像力が特色の古川黎明高校は、部員を2チームに分けてそれぞれで出品します。このうち、部長や副部長を中心に組まれるチームでは、副部長の提案で海洋ごみをテーマに設定しました。

 きれいな海にごみが散乱していき、やがて人の手により再生していくというストーリーです。
 副部長高橋明南さん「海の生き物たちを守りたいとか、今後もあり続けてほしい思いがある。黒板アートを通して私たちにも何かできることや、メッセージを伝えられたらいいなと」

 夏休みの最中に行われた制作では、教室の黒板を借りて行うため日中の3日間という限られた時間で仕上げなければなりません。粉チョークのほか、発色の良い油性チョークも使い指で塗り広げていきます。
 部長氏家寧音さん「ちょっと汚いですね。オイルチョークが粘り強くてやりにくくて」

 巨大な黒板にひたすら海と砂浜の下地を塗る作業で制作開始から1時間、油性のチョークの量が足りないことが判明しました。
 部長氏家寧音さん「色が違う所があると動画にすると変な感じになる。できれば同じチョークを使いたいなって思って、でもあっちとこっちの1個ずつしかないので」

限られた時間で制作

 1年生部員が店舗に在庫を確認しましたが、思うような回答は得られず。この日はいったんある分で作業が進められることになりました。
 休憩をはさみ、作業開始から6時間。部員にも疲労が見え始めます。

 ベースの上から光の当たる箇所に白や黄色を重ね、奥行きを演出します。画面のチェックや顧問からのアドバイスを基に、調整と重ね塗りを繰り返します。
 開始から8時間。全体の大元となる海辺の景色が出来上がったところで、3日間のうちの1日目が終了しました。
 部長氏家寧音さん「出来は60点ぐらいです。雲と海の色をもうちょっと明るくしたいのと、砂はまあこのままでいいかな。空の色をもう少し濃いめにしたいです」

 8時間×3日、24時間かけて出来上がった作品。制作過程を撮影し動画部門に出品しました。社会問題に切り込む古川黎明高校の黒板アートは、これだけにとどまりません。
 同じ大崎市にある下伊場野小学校の全校児童は、わずか8人です。2026度から近隣の小学校と統合し廃校となることが決まっています。

小学生の思い出作り

 少子化の影響により、大崎市では2014年度以降小学校の統廃合が6回行われています。古川黎明高校の生徒にとっても決して他人事ではありません。小学生の思い出となるよう、下伊場野小学校の黒板で黒板アートを制作することになりました。
 副部長高橋明南さん「私の出身の小学校もかなり人数が少ない学校だったので、もし自分の出身の小学校も無くなってしまったらすごい悲しいな」「卒業した後でもこういうことがあったと思いだせるような懐かしいと思えるような体験、黒板アートにしていきたいです」
 学校だからこそできる黒板アート。青春を黒板に描き続ける古川黎明高校の挑戦はまだまだ続きます。

 閉校となる小学校で小学生とコラボする黒板アートの制作の様子は、27日の特別番組で生中継でお伝えします。khb開局50周年記念あすとつながるテレビ~宮城がもっと好きになる日~は27日午前10時30分からの放送です。