高市新政権にとって試金石となるのは物価高対策です。高止まりが続くコメ問題に、どう取り組んでいくのでしょうか。(10月25日OA「サタデーステーション」)

■前政権のコメ政策を“転換”

24日に発表された最新のコメ5キロの平均価格は、前週に比べて109円高い4251円で、5月に記録した最高値の4285円に迫っています。新米が流通し始めた今もなお、高止まりが続いています。

コメ担当大臣こと、小泉氏から引き継ぎを受けた鈴木大臣は、どのように対応しようとしているのでしょうか。

鈴木憲和 農林水産大臣(24日 閣議後会見) 「直接備蓄米を出し入れすることによって、価格に影響を与えるということをやるのではなく、政府がどの価格帯が良いとか悪いとかを言うべきではない」

石破政権では…

石破茂 総理大臣(5月  党首討論) 「米は3000円台でなければならないと思っております。4000円台などということはあってはならない」

石破政権では、高騰するコメ価格を抑えるため、備蓄米の放出などで、5キロ3000円台を実現してきました。今はまた4000円台に逆戻りしていますが、鈴木大臣は。

鈴木憲和 農林水産大臣(24日 閣議後会見) 「国の責任はやはり需給の安定。(価格は)最後はマーケットで決まっていくと思いますし、私としては基本的には、“生産者の皆さんが再生産可能な価格”というのが、まず1つの指標になろうかというふうに思っています」

どういう事なのか、コメ政策に詳しい専門家に話を聞きました。

宇都宮大学農学部 松平尚也助教 「生産現場、あるいは自民党農水族の主張と近い方針。買う現場(消費者)よりも作る現場(生産者)に近い発言を繰り返している。“価格の高騰対策”については、後退するんじゃないかということが指摘されています」

前政権が舵を切った増産の方針も、事実上転換となります。コメの生産量は今年、およそ748万トンになる見込みで、需要量を大きく上回る見通しです。そんな中、関係者によると、農水省は来年の生産量の見通しを、需要と同じ711万トン程度に減らす方向で調整しているということです。

宇都宮大学農学部 松平尚也助教 「コメの生産量が減るんじゃないかという受け止めが出ますので、コメ価格が高止まりしてるので、減ったらもっと高くなるんじゃないかとかですね。そうした説明不足の感がありますね」

■生産者も“高止まり”を心配

過剰な生産による、コメ価格の暴落を防ぐ目的もあるようですが、高止まりが続く状況に不安を感じている生産者もいます。

ライスボーイ 工藤隆正社長 「やっぱり高いんじゃないですか。やっぱりみんな(買い)控えるんじゃないですかね」

青森市で、コメの生産と販売を行う工藤さん。新大臣は、「需要に応じた生産が基本」といいますが。

ライスボーイ 工藤隆正社長 「需給バランスとるのは国の仕事だけども、(もととなる)その数値とか統計も確かなのかなと」

農林水産省 渡邊毅事務次官(8月) 「コメは足りている、ということで、ずっと申し上げたことにつきまして、誤っていたいうことで、この場をお借りしてお詫びを申し上げたいと思います」

今年8月、農水省は、コメの需要量を見誤っていたと謝罪しました。「コメ不足」が、価格高騰の大きな要因だったのです。

ライスボーイ 工藤隆正社長 「農協が集荷できる数というのが減っていますので、いま大きい農家も結構直売しているし、コメの在庫を持っているし、もっと統計の出し方、データを精査して正確でないと、また同じことになるから、そこに気を付けなきゃダメ」

群馬県のコメ卸業者は、来年も高止まりが続くのではと不安を訴えます。今のコメ価格の高止まりの大きな要因として、JAがコメを集荷する際に農家に支払う概算金が、去年より3割から7割程度、高くなっている点があげられます。

金沢米穀販売 金澤富夫社長 「“来年も増産する”のであれば、来年の夏ごろJAさんが概算金を発表したときに、今年ほどの凄い高値ではないんじゃないかというふうな考え方がありましたが、(方針転換で)分からなくなりました。不透明になりました。米価は」

宇都宮大学農学部 松平尚也助教 「増産してもコメ価格が高止まりしてしまうという背景には、政府の統計とか政策への信頼性が、非常に信頼できないような状況というのが大きな要因としてある。需要に応じた生産といわれても、この不安感に対応するようなメッセージを出してないというのが大きな問題かなと思う」

■“おこめ券”配布 実現性は?

高島彩キャスター 「お米の価格がなかなか下がらない中、鈴木農水大臣は、おこめ券や食料品などの商品券といった対策の方がスピーディーだし必ず届けられる、と意欲を示していますが、すぐに実現できるのか気になるところですね」

板倉朋希アナウンサー 「その点について、第一生命経済研究所の熊野英生さんにうかがったところ、『おこめ券配布の良い点は、自治体には過去に物価高対策などで商品券を配った経験があり、既存のシステムを使えば簡単に配布できる。早ければ年内にも実施できるのではないか』ということでした」

高島彩キャスター 「すでに自治体の中には、独自の判断で『おこめ券』を配布しているところもあるようですが、どういった形で配布するのがいいのでしょうか?」

板倉朋希アナウンサー 「熊野さんは、『不公平感を生まないためにも、子どもの有無や収入で区切らず、例えば一人2000円分などの形で全世帯に配布するのが望ましい』とおっしゃっています。また配布の頻度については、『コメ価格の高止まりが続く可能性が高いことから、おこめ券の配布も定期的に続ける必要がある。ただし財源を考えると。1年間限定など、出口を決めて行うことが重要』と指摘しています」

高島彩キャスター 「お米は主食ですから公平にというのはよくわかりますけれども、おこめ券の配布については柳澤さんどうお考えですか?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏 「おこめ券は、高いお米を買う時の足しにはなるとは思うんです。でもおこめ券でコメの値段が下がるわけではないですよね。財源の問題もありますし。これでは米の値段が高止まりしてしまうのではないかと、誰しもがそう思うのではないか。そもそも今回の米騒動の原因はコメ不足だったんですよね。ですから石破政権は備蓄米を放出したり、あるいはこれまでの事実上の減反政策を増産にかじを切るという方針を打ち出したんですが、鈴木農水大臣が言ってることはその方針の大転換なんですよね。そうなると、もともとコメ問題が抱えていた流通も含めた“根本的な解決のメド”が見えてこないと思うんです。それを考えると、やはり消費者も十分に納得できるような丁寧な説明がまだまだ求められると思います」

高島彩キャスター 「“根本”という意味では、流通の見直しもありますし、そもそもの収穫量の予測、需要と供給のバランスの見極めも難しいと思いますが」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏 「今年も最初は収穫量が減るんじゃないかという不安があったんですが、量も増えたし結構質もよかったと。自然が相手ですから見通しは立てにくいとは思うんですが、今回のおこめ券の問題だけではこういった不透明な問題に対する答えにもなっていない、ということがあるんですよね」

高島彩キャスター 「すぐにできる支援と長く続く安心のどちらも重要ですが、いずれにせよ暮らしに寄り添う仕組みというものを考えていただきたいと思います」