野菜の新しい販売方法が仙台市で始まっています。毎月定額で畑から好きなだけ収穫できる、野菜のサブスクです。物価高に苦しむ農家と消費者の双方にお得な取り組みです。

 大きなコンテナいっぱいに入った新鮮な野菜は、全てサブスクで取り放題です。サブスクは毎月定額で商品やサービスを使える仕組みで、これを野菜に応用したのが太白区の農家、斎藤実さん(38)です。

 利用者は採り放題もしくは定期便の2コースを選びますが、採り放題は毎日でもOKです。ほどんどの人たちが採り放題を選んでいます。値段は1カ月に7980円です。食べ盛りの子どもがいる家庭にとっては、コンテナいっぱいの野菜がいつでも好きなだけ手に入ることは魅力的です。
 斎藤実さん「利用者は色々ですね。子育て世帯も多いですし、引退したご夫婦もいるし。今までも定期便はあったけど、採り放題で差別化はできるという手応えはありました」

毎日採り放題

 自宅から車で数分という畑は、太白区中心部のJR長町駅から約2キロで住宅街の喧騒を離れた長町インターチェンジ近くの広瀬川沿いです。
 斎藤さんは、年間を通じて40種類ほどの野菜をつくっています。今の時期はハクサイやキャベツにブロッコリー、葉物野菜のホウレンソウや小松菜、特産のユキナなどが収穫できます。

 東京での会社員経験を経て29歳で地元に帰り、農家を継いだ斎藤さんが野菜のサブスクを始めたきっかけは、ここ数年の物価高騰でした。肥料や資材の高騰で農家の経営は悪化し、野菜の市場価格も乱高下し収入は安定しません。
 斎藤実さん「肥料もそうですが資材コストも上がって、この先を見据えると市場の価格も安定しない中、農家経営はこのままでは難しいという危機感を感じていました」

双方にメリット

 手始めに無人販売から始め、4月にはサブスクをスタートしました。サブスクには農家にとって前払いで安定した収入が確保できるメリットがあるいうことです。更に消費者自身による取り放題としたことで、収穫と発送が農家の手を離れ時間と手間を省くことができます。消費者としても野菜が安く手に入り、双方にとってメリットがあります。
 斎藤実さん「前年もそうだったんですが、キャベツが1玉1000円から1200円になってくると、消費者も野菜を食べなくなってしまう。それなら畑に植えてある物をそのまま採ってもらったほうが、食費の軽減にもなるのかなって」

 利用者には、安さのほかにも良い事があるようです。畑に収穫に来た太白区に住む理容師さんは採り放題コースを利用し、週2回ほど家族4人で食べる野菜を採りに来ます。
 キャベツやハクサイ、長ネギ、カブ、小松菜、水菜とコンテナいっぱいに収穫しました。野菜のサブスクは、自身が経営する理髪店の客で会った斎藤さんから直接紹介されたということです。
 「子どもたちに収穫体験をさせてあげたいと思って始めたんです。すごく楽しんでくれて。今は僕のほうが楽しくなっちゃってて。旬の野菜をたっぷり、何回も食べられるといういいところがありますね。初めて知ったんですけど、採れたての野菜は皮ごと食べられるんです。生で食べられるトウモロコシとか。サブスクをやってよかったですね」

 斎藤さんも利用者と畑で会い、作った野菜の評価を聞くことが励みになると話します。
 斎藤実さん「やっぱりうれしいです。市場に出荷していると、消費者の感想は無いので。そういった意味では、感想を毎回もらえてうれしいですね」

サブスク利用者に格安で販売

 サブスクの利用者には、手頃な価格で米も販売しています。ひとめぼれの玄米30キロが1万7000円と、5キロで4000円以上が当たり前になった今、3000円を切る値段が魅力です。

 開始から8カ月が経った野菜のサブスクは収入の柱の1つになり、斎藤さんは手応えを感じています。
 斎藤実さん「せっかくやるからには利用者の皆さんに楽しんでもらえるように、子育て世帯の食費軽減を目標に掲げていたので、それを達成できるように採れたてのおいしい野菜を食べて楽しんでもらえたら一番いいなと思います」