世界最長のナイル川を悩ませる問題に地元の漁師が立ち向かっています。ごみを資源に循環させる取り組みをエジプトで取材しました。
かつて古代文明を育んだ豊かな水源・ナイル川。11カ国にまたがり、世界で最も長い河川は今、ある問題に悩まされています。
ボートが川岸に寄ってきましたが、近くに来るとよく分かります。このように多くのプラスチック製品が浮かんでいるのが確認できます。
ボートを操るのはエジプトで漁師歴45年のモハメドさん(63)です。本業のかたわら、「プラスチックハンター」と呼ばれる回収業者として、川に捨てられたプラスチックごみを集めています。
漁師歴45年 モハメドさん 「早起きして他の漁師より先に漁に出れば、1日に約10キロから15キロのプラスチックごみを回収できる。追加収入のおかげで娘の結婚式費用も捻出できた」
集めたプラスチックごみは「Very Nile」という支援団体が品質に応じて、1キロ=90円ほどで買い取っています。驚いたのは、回収されるその量です。
Very Nile マヘール・モハメド副代表 「ご覧のように、これは私たちがたった1週間で回収したプラスチックです。このブロックは1つで60キロあります」
月に合わせて30トンのプラスチックを回収しているといいます。
ナイル川をきれいにしたいと、2018年から始まった取り組みですが、当初は漁師たちの理解を得られませんでした。
マヘール・モハメド副代表 「皆、漁の代わりにごみを集めているのを見られることに抵抗があった。汚染とそのリスク、それを防止・削減するためどう協力できるかを説明しました」
魚が獲れない時期も稼ぎが安定するほか、ボートの修理なども「Very Nile」が支援するため、いまでは、およそ300人の漁師が「プラスチックハンター」として活動しています。
ナイル川が流れ込む地中海では、水揚げされた魚のうち92%からマイクロプラスチックが検出されたという調査もあり、こうした活動は海の環境改善にも一役買っています。
捨てられたプラスチックを再利用する取り組みも進んでいます。
Reform Studio マリアム・ハゼム氏 「私たちのもとには、このような状態でプラスチック廃棄物が届きます。形状を整えて、製品の材料として直接使用します」
「Reform Studio」はエジプト伝統の機織りの技術で糸状に裁断したプラスチックを綿やポリエステルとともに加工していき、バッグや家具に生まれ変わらせています。
Reform Studio ヘンド リアド氏 「食品包装の廃棄物から新しい生地も開発しました。チョコレートなどの包装を見ると、包み紙の内側に光沢のある素材が使われていた。この素材を活用して生地を作ってみたんです」
商品は耐久性にも優れているほか、水にも強いという特徴があります。
カラフルな商品が並んでいますが、例えばこちらのバッグ。タグには「86個のプラスチックを使った」と表示されていて、消費者にも分かりやすくなっているんです。
マリアム・ハゼム氏 「私たちはプラスチックを再利用することで、マイナスの影響を環境的にプラスに変えている」
ヘンド リアド氏 「廃棄物ゼロを目指しています。もちろんそれは容易ではありませんが、工場で発生する廃棄物の量をできる限り削減するよう努力していきます」
環境問題への貢献が注目され、国際的な賞を獲得するなど評価が高まっています。中東だけではなく日本でも商品が購入でき、消費者には「持続可能な社会とは何か」を問い掛けています。