5月10日に、宮城県が公表した新たな津波の浸水想定を詳しく見ていきます。東日本大震災の被害を超える可能性を示し、防災対策の見直しを求める内容となりました。

 東北大学災害科学国際研究所・今村文彦所長「3.11を経験したので、あれが最悪だと我々は思っているわけだが、それは将来の状況を見ると違うということをまずは見ていただきたい」

 津波から命を守る行動の強化につなげようと3つの地震モデルから示された津波浸水想定。津波は満潮時に地盤沈下が起き、防潮堤や水門などが壊れた最悪のケースが想定されています。

 こちらが、今回示された沿岸15の市と町の津波の最大の高さです。

最悪のケース想定 気仙沼市本吉で22.2m 多くの市町で10m超

 気仙沼市本吉の22.2メートをはじめ、三陸で20メートル前後と予測され、多くの市と町でも10メートルを超えるような津波が想定されています。

 津波の第1波が到達する時間は、気仙沼市と石巻市が最も早い21分。三陸では30分以内に到達し、仙台湾では1時間以内と予測されました。

浸水面積は東日本大震災の1.2倍 9市町の役場は浸水想定

 浸水面積は、県全体で391平方キロメートルと東日本大震災の1.2倍。こちらの9つの市と町は、役場の浸水も想定されています。このほか、多くの自治体でかさ上げ地や集団移転先の一部も含まれました。

 石巻市のぞみ野の住民「(津波が)来ないと思ってきたのでね、今、これで言われても何ともね、対処しようがないっていう」

南三陸町の浸水面積 東日本大震災の1.38倍 一部の緊急避難場所も浸水 

 こちらは南三陸町の津波浸水想定図です。青い線までが東日本大震災時の浸水域です。南三陸町では、住民は山を切り開いた高台に移り、商業施設や工場をかさ上げした平地に配置する「職住分離」を進めてきました。

 今回の想定では、震災の1.38倍に当たる13.8平方キロメートルが浸水する恐れがありますが、集団移転先への浸水域の拡大はありません。

 それでも志津川地区では、10メートル以上20メートル未満の浸水が想定され、一部の緊急避難場所に水が押し寄せるとみられています。

石巻市の浸水面積 東日本大震災の1.16倍 二重堤防の内陸側でも一部浸水

 次に、浸水面積が最も広い石巻市を見てみます。

 市中心部の沿岸には、高さ7.2メートルの防潮堤に加えて、3.5メートルほど盛り土した都市計画道路を整備することで、二重防御を進めてきました。     

 しかし、石巻市全体で震災の1.16倍となる84.9平方キロメートルが浸水。都市計画道路の内陸側でも一部で、5メートルから10メートルの浸水が予測されています。

 齋藤正美石巻市長「津波のために防潮堤を非常に高くしたからと言って、それがどれだけ機能するかというのは一概には結論は出せないと思います。ここまで津波が来るんだよ、だから逃げなくちゃいけないというのを一人一人がしっかりと認識していただいて、避難先の確保をどうするか、その方が現実的じゃないかなと私は思います」

仙台市の浸水面積 東日本大震災の1.03倍 避難所6カ所が浸水

 続いて、仙台市です。浸水域の拡大は1.03倍と大きく変わらなかったものの、避難計画の見直しが必要になりました。

 津波は仙台東部道路を越え、国道45号やJR仙石線の陸前高砂駅周辺にまで及ぶとされています。また、6つの避難所も浸水域に入りました。

 宮城野区の市民「(避難するなら)市民センターって思ってたんですけど、それがまた津波がまた来るっていうのであれば、また違う所に避難しなきゃいけないので、他にどこがあるのかとか、(避難所を)増やしてほしいという希望はあります」

 今回の想定は最悪の条件をベースにしたとはいえ、住民は不安を広げ、多くの面で新たな課題を突き付けています。

村井知事「避難を軸に津波防災地域づくり取り組む」

 村井知事は、「沿岸の市・町と緊密に連携しながら丁寧に対応するとともに、避難を軸とした津波防災地域づくりにしっかり取り組みたい」とコメントしています。

 沿岸全域の津波浸水想定図は、県のホームページで公表されているほか、khbのホームページにも掲載していますので、災害時の備え、そして避難行動に役立ててください。