新型コロナワクチンの後遺症です。接種が進む一方で、接種後の体調不良を訴える人も少なくありません。ワクチン後遺症の実態と救済の現状を取材しました。

 ワクチン後遺症に苦しむ30代女性「みんなで健康で病気に立ち向かおうと思って受けて、たまたま私だったっていうのがあったのかもしれないですし、でもなんでなんだろうってやっぱりすごい思いましたね」
 2021年7月に新型コロナワクチンを接種した宮城県内在住の30代の女性。接種の翌朝から3日ほど38度以上の発熱に加え、頭痛や倦怠感、全身の痛み、下半身の痺れなどが続きました。3週間ほど経ったころ、体に更なる異変が現われました。

新型コロナワクチン後遺症に苦しむ女性

 ワクチン後遺症に苦しむ30代女性「朝、目が覚めたら体が動かなくなっていて、立ったり歩いたりっていうのも全然できなくなってしまって、家族呼んで肩借りないと歩けないような状態で」
 ワクチンを接種する前は持病もなく健康だった女性。全身の関節が熱を持って腫れ始め、複数の病院で検査を受けましたが、明確な原因は分かりませんでした。
 ワクチン後遺症に苦しむ30代女性「ワクチンを受けてから(体調が悪い)っていう話はしたら、(医師に)ワクチン関係ないよって言われたので、ああそうなんだとは思って、でも自分の中ではそれ(ワクチン)以外考えられなかった」

 膝には水がたまり、曲げ伸ばしするたびに激痛が走りました。痛みに耐えながら、仕事を続けようとしましたが、職場での理解を得られず、退職せざるを得ませんでした。
 ワクチン後遺症に苦しむ30代女性「もう辞めた方が良いんじゃないっていうふうに促されてしまって。100%の労働ができない自分が荷物になってしまうのかなとか、いろんなことを考えていったら痛みで寝不足の状態で仕事に行っていたので、もう疲れてしまって、辞めてしまおうって思いました」

 8カ月間にわたり関節炎の治療を行い、痛みは少しずつ改善しました。しかし、息苦しさや動悸、頭痛やめまいなど、さまざまな症状にも悩まされるようになりました。
 ワクチン後遺症に苦しむ30代女性「どんどんどんどん具合が悪くなって寝たきりの状態が続いていて起き上がるのもやっとの状態だったので、このまま寝たきりになるのかなって思いました」

ワクチン後遺症とみられる患者の治療

 医師「めまいとか頭痛もないの?大丈夫?」
 女性「すごく落ち着いてきていて」
 現在は、ワクチン後遺症とみられる患者の治療を行うクリニックに通院しています。3カ月ほど治療を続け、体調は日常生活に支障のない程度まで回復しています。

 厚生労働省によると、国内のワクチン接種回数は、6月12日までに約2億8000回と推定され、医療機関から副反応の疑いで報告された事例は3万4120件、このうち7460件は重篤な副反応があったと報告されています。
 宮城県内での接種は、5月末時点で約520万回行われ、副反応の疑いが395件報告されています。

国の救済制度

 国の救済制度では、ワクチン接種後に医療機関での治療が必要になったり、障害が残ったりした場合に、その健康被害が接種を受けたことによるものだと認められると、医療費や医療手当などの給付が受けられます。
 申請は、本人や家族が必要な書類を自治体に提出し、都道府県を通じて国に届け出ます。その後、予防接種や感染症などの専門家で構成される審査会で因果関係を判断する審査が行われます。

 女性は、5月に申請し判断を待っています。
 ワクチン後遺症に苦しむ30代女性「正直、先生(医師)には難しいんじゃないかなというお話はいただいてて。ワクチンを打ってすぐアレルギー症状が出たとか、明らかなものじゃない限りは、相当難しいと思うよとは言われました」

 厚生労働省には、6月23日までに全国の自治体を通じて2815件の申請があり、このうち認定されたのは849件です。その多くはアナフィラキシーや急性アレルギー反応など接種直後に現われる可能性のある症状です。
 医療問題に詳しい坂野智憲弁護士「アナフィラキシーは必ず出る、出現しうるというのは共通認識ですね。あとは心筋炎も(発生確立が高いと)言われてますけどね。それ以外のことはほぼ分っていないので、そもそも医学的な説明をすること自体が困難だと」

救済制度のハードルは高い

 医療問題に詳しい坂野智憲弁護士は、新型コロナワクチンの副反応に関してはまだ十分な情報がないため、接種後に現れる可能性が高いとされている症状以外は、医学的な因果関係を説明することが難しいと指摘します。
 また、医療機関の受診証明書やカルテなど多くの書類をそろえる必要があり、申請までのハードルが高いとした上で、この制度の在り方を見直す必要があると話します。
 坂野法律事務所坂野智憲弁護士「みんなのために一部の人が被害を受けたんだからみんなで救済しましょうよと。なるべく救済本位に運用がされるべき制度ではあるんですよね」

 ワクチン接種から1年半。女性が今、望むことは。
 ワクチン後遺症に苦しむ30代女性「数が少ないにしてもワクチンを受けて苦しんでいる人が現状がいるんだよっていうことを認識してもらいたいなと思います」