再生可能エネルギーについてです。発電時に温室効果ガスを出さない利点がありますが、大規模な計画をめぐっては、地域住民との合意形成が各地で問題になっています。こうした中、環境への負荷が小さい小規模な発電が注目されています。

 宮城県最南部にある丸森町の耕野地区。ここにある民有林で、東京の合同会社が大規模な太陽光発電所を計画しています。出力は2万4000キロワット。事業区域は約55ヘクタールで東京ドーム11個分に当たります。

 この計画をめぐっては、大規模な森林伐採や土地の開発が避けられず、土砂崩れや井戸水の枯渇を招きかねないなどとして、住民による反対運動が起きています。
 耕野の自然と未来を考える会共同代表義高光さん「3年前のあの悲劇がまた起きますよ」
 丸森町では、2019年の台風19号で土砂崩れが相次ぎました。
 耕野の自然と未来を考える会共同代表義高光さん「この台風被害を受けた丸森町で森林切ってメガソーラーを置くというのは、それはおそらく正解じゃないんですよね」

大規模な太陽光発電計画

 11年前に起きた福島第一原発事故も爪痕を残しています。計画地の近くには除染で出た土が保管されたままです。
 太陽光発電を計画している東京の合同会社は、住民の理解を十分に得ることができないまま、6月下旬に着工する方針を住民に通告しました。
 地元と更に話し合うよう県から繰り返し指導を受け、着工を見送ってきました。

 地域住民との合意形成の難しさ。大規模な計画をめぐってはこの問題を避けて通ることはできません。

 ひっぽ電力目黒忠七社長「ちょうどこれで50キロワットですね」
 こうした中、注目されているのが小規模な発電です。
 耕野地区の計画地から南東へ十数キロ。筆甫地区にある中学校跡には、太陽光パネルが並んでいます。町民ら7人が50万円ずつ出資してつくった、ひっぽ電力が2016年に稼働させました。
 ひっぽ電力目黒忠七社長「いろんな農業がどんどん落ち込んでいって、米もほとんど作る人がいなくなった。じゃあ開き直って自給自足だと。電気まで自給しようという考えは(震災の前から)ありました」

小規模な発電に注目が集まる

 社長の目黒さんは、もともとは炭焼き農家でした。しかし、原発事故の影響で炭が売れなくなり、近隣の農家も更に苦しくなりました。
 ひっぽ電力目黒忠七社長「農業プラスアルファということで、手っ取り早く小さな太陽光発電を考えたんですね」

 目黒さんたちが手掛ける小さな太陽光発電所は、今では廃校跡や遊休農地を中心に13カ所に上っています。中小規模の設備なら無理なく置ける場所は都市部にもあります。
 笹かまぼこで知られる阿部蒲鉾店は、仙台市泉区にある工場で太陽光パネルの屋根などへの増設を検討しています。
 材料を混ぜたり、かまぼこを焼いたりするのに使う電気の一部を自前に切り替えることを考えています。

太陽光パネルの増設を検討

 東日本大震災直後の停電時に役立った自家発電の設備は、重油を使用していましたが、今後は、温室効果ガスを出さない再生可能エネルギーにこだわります。
 阿部蒲鉾店阿部賀寿男社長「(地球温暖化で)海水温自体が上がってしまってきている。(かまぼこの原料として)メインで使っているスケソウダラなんかはより北上しているので、そうしますと漁場までの船が移動する距離も非常に長くなってしまいます。環境問題にもいろいろしっかり取り組みながら、自分たちの使う原料も安定して使えるような環境をしっかり作り上げていかないといけないかなというふうに考えています」

 再生可能エネルギーを拡大すれば、有事への備えも強くできると阿部社長は言います。
 阿部蒲鉾店阿部賀寿男社長「(自家発電にかつて使った)重油も東日本大震災の時はたまたま補充した後だったので、まだ油がたくさんあったのですが、あの状況ですとなかなか補充できない状況ですので、再生可能エネルギーの方が良いかなあと」

 工場だけではありません。太陽光パネルを置ける場所は住宅やビルにもあります。
 東京都は、一戸建て住宅を含む新築の建物への太陽光パネルの設置を住宅メーカーに義務付ける条例改正を検討しています。
 住宅の価格を押し上げかねないといった反対論がある一方で、普及の起爆剤になるとの期待もあります。
 小池百合子東京都知事「いかにして東京という大CO2排出地において、エネルギーの観点からも気候変動対策としても(太陽光パネルの普及策を)かなえていくか」

 東京都の動きは宮城県も注視しています。
 県再生可能エネルギー室小林歩室長「そうした条例につきましては、当然のことながら当県もしっかり注目して、その状況を確認している。先日実施しました再エネなどの審議会がございますが、委員のお1人からそういった検討を県として必要なのではないかというご指摘をいただいています」

 売電している県内の太陽光設備は大小合計で約7万5000カ所。県は50キロワット以上の設備について、設置場所を規制する条例を10月から施行する一方で、駐車場の屋根やため池といった場所も最大限利用していく考えです。