仙台市中心部にあるアーケードの天井に人知れず置かれている1台のオルガン。このオルガンを15年以上にわたり演奏し続ける男性を取材しました。

 仙台の中心部にあるアーケード、マーブルロードおおまち。1996年に改装工事が行われ、アーケード入口の天井には、空中ステージが常設されました。
 おおまち商店街振興組合早川清俊事務長「音と光の調和のある商店街ということで、音ですとオルガン、光としてはステンドグラスみたいな調和のとれたものを両サイドの入口のアーケードの両サイドに設置しました。やっぱりせっかくの機会なので、皆さんにも聴いてもらおうということで月2回ほど実施しています」

アーケードの天井にオルガン

 鍵盤楽器奏者斎藤めぐむさん「アーケードをご通行の皆さん、こんにちは。30分ほどですが、生の演奏をお楽しみいただけたらと思います」
 仙台市出身の鍵盤楽器奏者、斎藤めぐむさん。
 鍵盤楽器奏者斎藤めぐむさん「もう15年以上やっている感じですね。なんかアーケードに住んでるんじゃないかっていう変な話ですけど、いつも弾いているよねって言ってくださったりして」
 演奏を聴いた人「素晴らしい」「良いです。楽しみにしてるんですよ」
 鍵盤楽器奏者斎藤めぐむさん「普段はやっぱり、お仕事とか食事とか買物とかいろんな思いで歩いてる方がたくさんいると思うんですけど、その日常の中で音を聴いてもらう。音楽が添えられるっていうのは、不思議な感覚ですよね」

鍵盤楽器奏者 斎藤めぐむさん

 4歳からエレクトーンを習い始め、高校卒業後は、宮城県を中心に演奏会や音楽講師として活動してきました。商店街が公募したクリスマスコンサートで演奏したのがきっかけで、2004年から18年もの間、毎月商店街で演奏し続けてきました。

 東日本大震災、コロナ感染症拡大など、社会情勢やその時々の状況で演奏は中断。2011年3月19日にも演奏会を予定していました。
 鍵盤楽器奏者斎藤めぐむさん「震災があったことで、自分が音楽をやっていていいのか、それもありますし、実際演奏する気になれない、楽器を触る気になれないっていう時期がちょっとありました」

 仙台市の実家で被災しためぐむさん。先の見えない状況に不安を募らせていたある日のこと。
 鍵盤楽器奏者斎藤めぐむさん「夜、ラジオから音楽が久しぶりに聴こえてきた。ずっと自分も緊張感のある中で生活していたので、そこで音楽が流れた時には非常に涙が出るほど、うれしかったというか、自分も音楽を欲していたんだなと感じました」
 おおまち商店街振興組合早川清俊事務長「震災直後は当然ほとんどのお店が閉まってます。お店がどこか開いてないかって雰囲気で歩いているからシーンとした感じで歩いてましたね」
 鍵盤楽器奏者斎藤めぐむさん「(商店街に)街に音楽、もういいんじゃない?やってもいいんじゃない?というか、やっぱり必要なんじゃないですか?と言っていただいたので」
 おおまち商店街振興組合早川清俊事務長「とにかく演奏やってみるかっていう、こっちも恐る恐るですよ、正直な話。歓迎されるのかされないのかという状態で、めぐむさんとも、どうなるかなって心配しながら。でも、あれはやっぱり、やって良かったのかなっていう気がしますけどね。やっぱり立ち止まって聴いてくれる方が多かったです」

商店街で演奏会

 鍵盤楽器奏者斎藤めぐむさん「事務長さんはじめ、商店街の方たちが演奏を求めていただいているので、長く続けさせていただいているんだなと思います。帰ってくる場所みたいな感じで、お休みしている期間とかもあそこにまた行きたいなって感じる場所なので、戻ってこれる自分の居場所というふうに思っています。