女川原発2号機の再稼働をめぐり、重大事故が起きた際の避難計画に実効性が無いとして周辺住民が東北電力に運転の差し止めを求めた裁判についてです。

 仙台地裁は「避難計画に実効性を欠いていることをもって、直ちに運転の差し止めを求めることはできない」として住民の訴えを棄却しました。

 女川原発の30キロ圏内に住む宮城県の石巻市民17人は、原発事故が起きた際の県と石巻市の避難計画には不備があり、再稼働により人格権が侵害されるとして、東北電力に女川原発2号機の再稼働の差し止めを求めています。

 今回の裁判で、原告側は原発そのものの事故の危険性は主張せず、争点を避難計画の実効性に絞っていて、避難計画の不備が差し止めの理由になるかが注目されました。

 24日の判決で、仙台地裁の齊藤充洋裁判長は「人格権の侵害を主張するには、放射性物資が異常に放出されるような事故が発生する具体的な危険があることについての立証がなく、これを認めることはできない」と指摘。

 その上で「避難計画に実効性を欠いていることをもって直ちに運転の差し止めを求めることはできない。個別の争点について判断するまでもない」として、住民の訴えを棄却し、運転差し止めを認めませんでした。

 原告側は控訴する方針です。

 仙台地裁の前では、原告側が不当判決と書かれた紙を掲げ集まった支援者はため息を漏らしました。

 「本当に残念ですよね。悔しい。悔しいよね涙が出る」「危険を原告が立証しないから駄目だなんてね、避難計画がそもそも無くて良いみたいな言い方、許せない」

 原告団の原伸雄団長は、結審から半年後に出された司法判断に憤りと落胆の色を見せました。

 原伸雄原告団長「これはちょっと考えられない、想像だにしなかった判決でした。この避難計画の欠陥については是正する必要があると、再稼働の前に手を付ける必要があることぐらいは何らかの形で触れてもらえるんじゃないかと期待していた」

 原団長は控訴する方針を示すとともに、判決が指摘した原発そのもの危険性についても提訴する考えがあると話しました。

 原伸雄原告団長「こんな判決では、まさに裁判所自体が安全神話に浸っていて、事故は起こらないという前提」

 仙台地裁の判決について東北電力は「主張が理解された」とのコメントを出しました。

 東北電力佐藤正人法務室長「今般の請求棄却判決は、裁判所に当社の主張をご理解いただいた結果であると受け止めております。当社としては引き続き避難計画の実効性向上に向け、事業者としてできる限りの協力をしてまいります」

 東北電力は、当初の予定通り安全対策工事を11月に完了させ、2024年2月に再稼働させる方針ということです。

 一方、村井宮城県知事や原発の立地する石巻市の斎藤正美市長、女川町の須田善明町長は、それぞれが文面で訴訟の当事者ではないので差し控えるとしたコメントを発表しました。

 そのうえで村井知事は「原発周辺の防災体制について訓練を通じて継続的に検証・改善に努めていく」としています。