女川原発2号機で重大事故が起きた際の避難計画に不備があるとして、周辺住民が東北電力に運転の差し止めを求めている裁判の控訴審で、仙台高裁は判決で「原告は避難計画で対処できない事象が発生する具体的な可能性を立証する必要がある」として、原告の訴えを棄却しました。
女川原発の30キロ圏内に住む宮城県石巻市の住民16人は、原発事故が起きた際の宮城県と石巻市の避難計画には不備があり実効性がないなどとして、東北電力に女川原発2号機の再稼働の差し止めを求めています。
2023年5月の一審判決では、原告側が事故が発生する具体的な危険性を立証していないとして請求は棄却され、避難計画の実効性については全く判断されず原告側が控訴していました。
控訴審で原告側は「避難計画の前提は大事故が起きることであり、危険の具体的な立証をする必要はない」「検査場所の開設や避難に使うバスの確保ができず、住民は被ばくを強いられる」などと主張し、改めて避難計画の実効性について判断するよう求めていました。
一方、東北電力側は「原告側は事故が発生する科学的な証明ができていない」と、住民側に事故の危険性の立証を求めていました。
27日の控訴審判決で仙台高裁の倉澤守春裁判長は「原告側には、避難計画で対処できない事象が発生するという具体的な可能性を立証する必要がある」として、一審判決に続いて住民側の訴えを棄却しました。
原告団は今回の判決を不当な判決と批判する一方で、避難計画について全く踏み込まなかった一審判決とは異なり、計画の内容に踏み込んだ点を評価しました。
原伸雄原告団長「極めて残念な判決でありました。今後の戦いの武器にはなると思います」
小野寺信一弁護士「判決が避難計画の中身に入ったということは、他の避難計画を主張立証している他の弁護団や原告団にも大きな影響を与えるんだろうと」
上告については、30日に開催する脱原発弁護団の会議を経て決めるということです。
判決について東北電力は「主張が裁判所に認められた」とコメントしています。
東北電力法務室佐藤正人室長「請求が棄却されたという点においては、当社の主張が裁判所にしっかりご理解いただけた結果であると考えております。安全対策に終わりはないという確固たる信念の下、引き続き発電所の安全性向上や理解活動を積み重ねることで、1人でも多くの方からご理解いただけるように務めてまいりたいと考えてございます」
村井宮城知事は「国や関係する市町と連携しながら、原子力防災体制の更なる充実強化に取り組む」とコメントしています。
須田善明女川町長は「広域避難計画などの更なる実効性の確保・向上に向け、今後も継続的に国や県などと連携し取り組む」としています。
原告側の住民が争点としてきたのは、原発自体の安全性ではなく避難計画の実効性です。
2023年5月の一審判決では、運転差し止めを請求するためには原告側が事故発生の危険性を立証する必要があるとして、請求は棄却されました。避難計画の実効性については、全く判断されずに終わっています。
このため控訴審では、避難計画の実効性に加えて事故発生の立証責任についても争われ、原告側の住民は「立証をする必要はない」、東北電力側は「立証責任は住民にある」と真っ向から主張が対立していました。
控訴審判決では「原告側には避難計画で対処できない事象が発生するという、具体的な可能性を立証する必要がある」と一審と同様に指摘し請求を棄却しました。
避難計画については「臨機応変に決定し実施することを想定」「計画の判断の過程に欠落があるとは言えない」などと、内容に踏み込みました。