最大9連休となる“お盆休み”初日。山の日を前に最盛期を迎えた富士山で新たに死者が出てしまいました。番組では、出動が相次ぐ山岳救助隊を取材、カメラに写っていたのは、悪天候の中で続く過酷な救助活動でした(サタデーステーション8月9日OA)

■下山中に意識失う 新たな死者も

3連休初日の9日、サタデーステーションが向かったのは富士山の山梨側・吉田ルート5合目。

報告・小山颯ディレクター(9日・富士山・吉田ルート5合目) 「外国人観光客など、多くの方でにぎわっています」

2日後に山の日を迎えるこの3連休。子ども連れなど初めて富士山を登る人も多く、登山客数はピークに達していました。

宇都宮から来た小学2年生(10) 「いっぱい写真撮って宇都宮に帰りたい」

アメリカからの観光客 「下山したばかりだけど、信じられない光景だったよ」

9日早朝の富士山・山頂では…深い霧に包まれ、気温2.4℃の厳しい寒さ。山梨側では8日、8合目付近を下山中だった男性が体調不良を訴え、意識を失いました。同行していた妻が近くの山小屋に助けを求めますが、その後、死亡が確認されました。

■出動相次ぐ緊迫の山岳救助

一方、静岡側の富士宮ルート9合目。標高3460mの山小屋に常駐しているのが、静岡県警の山岳遭難救助隊です。9日朝も、9.5合目付近を登山中、体調不良により動けなくなった広島市在住の40代女性を救助。登山客数がピークの今は救助要請も多いといいます。番組が同行取材したのは、21年目のベテラン・武藤隊員と5年目の渡邊隊員です。

静岡県警山岳遭難救助隊 武藤諭隊員(50) 「もしもし、武藤です、登山者の人が…はい」

外国人登山者がケガをしているといいます。救助隊によると、今シーズンの登山客のおよそ半数は外国人。今年から規制が強化され、軽装の外国人登山客が減ったといいますが、ケガ人は後を絶ちません。

静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊束紗隊員(36) 「痛い?腫れているね」

左足の膝を打撲。自力で歩けるそうなので一晩様子をみて一緒に下山するかを検討するそうです。

■この時期増える子どもの“高山病”

また、夏休みのこの時期、たびたび見受けられたのは、高山病の疑いで体調を崩す子どもです。

男子中学生の母親 「登頂して(下山中に)頭が痛いって…」

9合目付近で倒れている男子中学生。すぐ横で母親が看病をしていました。血液中の酸素濃度を測ってみると…

静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊束紗隊員(36) 「血中酸素濃度が78、ちょっと低いから、呼吸を意識して…(水が)飲めるなら飲んじゃってください」

8合目の救護所に運び込まれたのは小学2年生の女の子。医師の呼びかけには反応しますが意識障害を起こしているため酸素マスクを装着します。

救護所の医師 「しっかり酸素を吸ってね」

体が冷えないよう重ね着をして温めます。この救護所では去年、診療した人のおよそ3割が20歳以下でした。

救護所の医師 「何か異変に元気ないなとかっていうのを(親が)気づいてあげることが大事」

■天気急変 前日との気温差は約20℃

そして、注意が必要なのは天気の急変です。 今年は雨が少なく、晴天続きだという富士山。しかし、油断していると天気は突然変わります。取材3日目。強風に加え、横殴りの激しい雨が降り、視界も非常に悪い状態です。気温も前日と比べると、その差はおよそ20℃。

静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊束紗隊員(36) 「どこまでいきますか?危ないんでやめてください、もっと風強くなるから」

9合目に宿泊している登山客の多くは「ご来光が目当て」しかし、この悪天候に救助隊の2人は、登山の中止を呼びかけます。ところが、ここで予期せぬ事態が…

報告・矢谷一樹ディレクター(7日 富士山・富士宮ルート9合目) 「8合目や7合目から登ってきた皆さんが9合目に待機しているため、山小屋は混雑しています」

下からの登山客で9合目の山小屋は大混雑に。

静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊束紗隊員(36) 「上の山小屋も閉まっているので避難する場所がないので、これで救助要請があっても救助に行けないので」

■風速30m以上 悪天候で“緊迫の救助”一部始終

必死に登山の中止を呼びかける隊員。そんな中、救助要請の連絡が…

静岡県警山岳遭難救助隊 武藤諭隊員(50) 「山頂で動けなくなっている人がいるようだと」

悪天候の中、どうやって山頂まで向かったのか分かりませんが、70代くらいの高齢男性が1人で動けなくなっているというのです。命に関わる事態のため、渡邊隊員が先行して山頂に向かいます。山小屋を出ると、辺り一面、霧に覆われていました。 あまりの悪天候に命の危険。隊員のボディカメラには、緊迫の救助の一部始終が収められていました。 山頂までの道は、先を見通すことができず、見えるのは足元くらいです。隊員は登山道から外れないようロープを掴みながら進んでいきます。救助要請があった山頂に到着すると先に到着していた渡邊隊員が男性の容体を確認していました。

静岡県警山岳遭難救助隊 武藤諭隊員(50) 「意識はあるの?」

静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊束紗隊員(36) 「意識はまだある、目は動いています、脈はあります」

男性は十分な装備をしていたにも関わらず、低体温症とみられる症状で受け答えができないほど衰弱。自力で起き上がることもできません。そのため渡邊隊員が男性を背負い武藤隊員が補助しながら搬送しようと試みますが、時折、風速30m以上の台風並みの強風が吹き荒れ、隊員を襲います。

静岡県警山岳遭難救助隊 武藤諭隊員(50) 「多分、我々も動けない…助けを呼ぼうダメだ、絶対運べない…」

このまま進むのは危険と判断。交代で9合目を目指していた別の隊員に無線で応援を要請します。応援が来るまでの間、救助隊の2人は男性の身体が冷えないよう必死に温めます。その後、無線で呼んだ2人の隊員と山頂の神社で働く数人のスタッフが合流。協力して男性を運びます。 風が少し弱まり、進んでいると、再び強風が…先導していた男性が煽られ、よろめきます。 他の隊員と交代しながら、なんとか男性を山頂の神社まで搬送。酸素マスクをつけるなどの応急処置をし、運搬用のブルドーザーで5合目まで搬送します。男性は隊員と一緒に下山。その後、病院に搬送されました。

静岡県警山岳遭難救助隊 武藤諭隊員(50) 「原因は暴風雨の中で歩いたことだと思います。下の町場で晴れの予報が出ていても富士山はまるで違いますので悪天候のときは基本的に登らないということですね」