色鮮やかな南国の魚が泳ぐ海…きのう23日、東京湾で番組が撮影した映像です。そして北海道では、これまであまり獲れなかったブリの漁獲量が桁外れの伸びを見せています。年々厳しさを増す猛暑がもたらす“海の異変”。北海道から沖縄まで、日本中の海を取材すると、私たちの食卓の未来が見えてきました。

■奇跡の“特大サンマ”「脂のって美味」

関東で40℃に迫る危険な暑さを観測したこの日。東京都心でも、今年1番の暑さとなりました。各地で異常な猛暑が続く中、北海道・根室市では… (山本将司ディレクター)「午前3時半です。大量のサンマがいま水揚げされています。」 岸壁のトラックに次々と運ばれる、秋の味覚“サンマ”。この週末も港は活気づいていました。近年、不漁が続く状況の中、今年は一転、初水揚げは173tと去年の2.6倍です。 (漁業関係者)「去年よりは最初のほうはもう結構上がってきているので、比較的、今年多いのかなという期待はありますね。」 さらに、注目されているのがその大きさです。 (魚信 浅野昌英代表)「食べ応えが違います。特大(サイズ)ばかりなので。魚焼き器も火を上げるくらいなので。今(8月)がもう本当に旬になっちゃいましたので、いつも9月に入ってからなんですけど。」 (仙台水産 本郷淳部長)「今年入ったサンマは、約10年ぶりに入った大きなサイズのサンマ。“奇跡のサンマ”といえるくらい大きいサイズのサンマが入ったと思っております。」 例年よりも大ぶりで脂がのっているという初サンマ。サンマの漁獲量が15年連続No1の根室市では… (三重からの観光客)「やっぱり大きいですね、今年は。去年も来ていたんですけど」 (地元住民)「私はやっぱりね、塩焼き。お醤油かけて大根おろしで食べます」 とれたてのサンマを目当てに、全国から客が訪れていました。 (東京からの観光客)「脂がのっていて美味しいんですよ。」

■北海道“ブリ豊漁”漁獲量10年で倍

漁獲量が変化している魚は、サンマだけではありません。 近年、北海道で豊漁が続いているのが“ブリ”です。 これまで北海道ではほとんど水揚げされていませんでしたが、直近の10年間で、漁獲量は倍増。今年も既に水揚げが始まっています。 とれる魚の変化に、北海道の水産加工場では対応に追われています。 (兼由 濱屋高男社長)「(ブリは)北海道ではもともととれていない魚ですから、普段食べている魚ではないので、どうすればいいかという部分はあった。」 根室市にある兼由は100年以上続く老舗ですが… (兼由 濱屋高男社長)「やっぱり全体的に北海道で昔とれていた魚が、この10年でとれなくなったというのが現実ですよね。ブリの水揚げが増えていますので、加工品としてラインナップの中に入れたいなと思い開発しました。」 試行錯誤の末、先月から販売を始めたブリの加工品。10年前まではサンマのみでしたが、漁獲量の変化に応じて、34種類まで増やしました。 (兼由 濱屋高男社長)「やっぱりサンマだけでは会社が成り立たないと思いまして、色んな魚が揚がったらそれにチャレンジしていく」

■“海の異変”可視化「魚の分布変わる」

北海道で獲れる魚が変化している“海の異変”。一体、何が起こっているのでしょうか。 海面水温の変化と海流を可視化した特殊な地図を見てみると…太平洋側の暖かい海流部分が“黒潮”。北から冷たい海水を運んでいる青い部分が“親潮”です。去年と見比べると、暖流の「黒潮」が北海道の近くまで入り込んでいて、高い水温で覆われています。 今年は、北海道の根室近海に、例年より水温の低いエリアがあることが分かります。この現象に、専門家は… (三重大学 地球環境学 立花義裕教授)「冷たい水が北海道に入ってきたので、冷たい水温をサンマは好むので、サンマのとれ高が上がってきたと思います」 しかし、海面水温の変化は一時的なものだと立花教授は言います。 (三重大学 地球環境学 立花義裕教授)「日本全体を見ると今年の夏の海面水温っていうのは観測史上一番高いんですよ。水温が上がっていくと魚の分布が変わります。南方系の魚が北に上がってきます。北方系の魚はもう日本近海から消えていきます。」 海面水温を見ると、特に北海道周辺が赤く、平年より高くなっています。これがブリなどの比較的暖かい海水を好む魚が、今まで見られなかった海域で獲れる一因だとみられています。

■東京湾に“南国魚”サンゴも「勢力増」

海水温上昇の影響は、全国各地に…。 東京湾で、“海の異変”の一端を見つけました。地元の海を知り尽くしたダイバー歴22年の岡本さん。 (沖ノ島マリンスノー 岡本正和さん(51))「南方圏のサンゴとか魚が増えていますよね。6、7年前くらい前から結構大きく変わってきているかなって」 シュノーケリングツアーに同行し、東京湾の海中を見てみます。 (草薙和輝アナウンサー)「思ったよりも暖かいです。ちょっとヒンヤリするくらい。」 この日の海水温は28℃。 (草薙和輝アナウンサー)「東京湾とは思えないような綺麗な青い魚が泳いでいます。東京湾にこんな青い魚が泳いでいるんですね。」 足がつく浅瀬にも、色鮮やかな魚たちが集まっています。 その中には、縦縞模様の「オヤビッチャ」や、青く輝く「ソラスズメダイ」など南方の海で見られる魚も。 (岡本正和さん)「(昔は)南方系の魚が急に死んじゃうんだけども今、越冬してこっちで産卵して繁殖している」 海の変化は魚だけではありません。これは9年前の映像。カジメなどの海藻が海中を揺れていますが、それが今では…見る影もありません。 (草薙和輝アナウンサー)「50年この館山の海ご覧になってきた中で今の状況ってどう見ていますか?」 (岡本正和さん)「海藻は昔から比べて全然なくなっているし、魚はカラフルになってきているし、全部もう南の方(になっている)」 さらに海を進むと姿を表したのが… (草薙和輝アナウンサー)「このあたりサンゴが見えますね。まだ沖合そこまで遠くまで来ていないんですけども。」 海中には平たく丸いサンゴが点在しています。 (岡本正和さん)「(サンゴは)もう6年ぐらい前から徐々にテーブル系の丸い皿みたいな(サンゴが)増えてきちゃって、それがどんどん勢力増している状態ですよね。」 近年、東京湾の沖では、サンゴの群生地が急拡大しています。

■沖縄“世界一”サンゴ「7割死滅」も

一方、サンゴの種類が世界一豊富な海として知られる沖縄の海はどうなっているのでしょうか? 沖縄本島中央部、西海岸に位置する恩納村。2018年にはサンゴの村を宣言するなど、サンゴの保全再生活動が盛んな地域です。 30年に渡りこの海を見て来たプロの水中カメラマン広部さんは大きな変化を感じているといいます。 海岸から約1km。サンゴが生息するエリアの海を見てみると… (プロ水中カメラマン 広部俊明さん)「この辺は全部死んじゃっています…ここも死んじゃっています。段々魚の数も少なくなってきていますね。」 一面、藻に覆われ茶色く変色したサンゴ…これは完全に死滅した状態だといいます。本来、サンゴの周辺で見られる魚の姿もまばらです。 (プロ水中カメラマン 広部俊明さん)「去年からサンゴを見ていると70%くらいのサンゴが死んでいるのではないでしょうか。」 これは同じ場所で7年前撮影された映像。この時点では壮大なサンゴ礁が一面に広がっていました。この風景が一変したのが去年… 一面、白くなったサンゴ。これは白化現象といわれ、海水温の上昇などの原因により、サンゴ体内の褐虫藻が弱り白く変色してしまう現象です。 この状態が長く続くとサンゴは死んでしまうと言われています。サンゴは約25℃~28℃が適正水温と言われる中で近年、海水温が高い状態が続いてしまったことがサンゴに大きなダメージを与えた原因と見られています。この様な現状に専門家は… (三重大学 地球環境学 立花義裕教授)「海面水温というのは年々上げってきています。魚は動きますから当然居心地のいい(水温の)場所に動きますから。動けないような種類の魚介類というのは減っていくというわけですね。日本の近海から消えていくというわけですね。」 10年前の漁獲量と比べると、“魚の異変”は各地でみられています。北海道ではスルメイカも減少。岩手ではサケ、長崎ではサワラの漁獲量が減っています。 Q.(日本の)食生活にも影響が? 「非常に大きいですね。北海道付近は本州でよくとれる魚に変わってくる。北海道で元々とれる魚、あるいは昆布などがダメになると思います。(昆布がダメになると)日本食の旨味というのが消えてしまう、これは非常に食文化に大きな影響だと思う。」

8月24日『有働Times』より