コメの平均価格が再び4000円を超えるなか、今、新米を巡って業者とJAの間で熾烈(しれつ)な争奪戦が繰り広げられています。「コメの産地」で起きている異変を取材しました。

■新米「盛り放題」大行列

 ふっくらとして粘り気が強い、炊き立ての新米。千葉県木更津産の「コシヒカリ」です。

 地元の農家と契約して新米のご飯を提供する飲食店。コンセプトは“地産地消”です。

 人気のメニューは、海の幸が盛りだくさんの定食。ただ、これまでご飯の大盛りは無料だったのが、今月からは有料で110円に。新米の価格高騰が影響しています。

舵輪 野口利一オーナー 「今季から値段の調整は入って2割から3割値上がりしている。地域のものを使う理由の一つとして、地域の再生産できる価格、農家と正しい適正価格で取引できれば問題はない」

 訪れた人たちは、とれたての新米の味をかみ締めます。

埼玉県から来た50代夫婦 「すごくうれしい」 「新米が食べられるのはうれしい」 「偶然だったけど、すごくおいしい。今年、新米初めて。きょう新米買った」 「直売所で」

 祝日の「道の駅」には、新米を求めて朝から多くの観光客が。皆さんのお目当ては、新米の「盛り放題」です。

東京から来た夫婦 「コメ盛り放題を500円でできるので、普通よりも安いので来た」

 1回500円で5合の升に新米が盛り放題。制限時間は1分です。

 東京から来た夫婦が挑戦。50代の妻は、ぱらぱらと升の四隅にコメを乗せる作戦に。新米の重さを計ると…1キロ以上を500円でゲット。

東京から来た人(50代) 「いっぱい取れてうれしい」 「(Q.新米の値段は?)高い。500円で食べられるとうれしい。家に帰っておいしく食べる」

 盛り放題イベントの新米は、千葉県のオリジナル品種「粒すけ」です。道の駅では、5キロ4860円で売られています。

 1キロあたりは972円なので、500円で1キロを手に入れられれば、およそ半額。

30代の人(横浜から) 「新米だと値段が高いと思う。これは安い」

 全国のスーパーでのコメの平均価格は6月上旬以来、4000円台に上昇。5キロあたり税込み4155円です。

■過熱する“新米争奪戦”コメ産地で異変?

 青森県内では、銘柄米「はれわたり」の収穫が行われています。JAと契約する農家は、新米の価格高騰を手放しで喜んではいません。

JAと契約 石澤光さん 「どこまで消費者がついて来てくれるのかが今後、心配。消費者あっての生産者だから食べてもらわないことには、コメが来年作れなくなるのが一番怖い」

 JAなどの集荷団体が農家に一時的に支払う前払い金が、今年は全国的に高騰しています。新潟をはじめ全国有数のコメどころでは、3万円台が続出。去年に比べて、およそ1.5倍から2倍に膨れ上がっています。

 産地では、民間業者を含めた新米の熾烈な争奪戦が繰り広げられていました。

石澤光さん 「概算金だから(民間業者が)その上を出すのが当たり前。結局、業者間で(取引価格が)上がっていく。この米価が正しいと思っていないから、もちろん下がるべきだけど極端に下がりすぎるのが怖い。概算金2万5000円前後で収められる政策が欲しい」    概算金を決める集荷団体の一つ、「青森県米穀集荷協同組合」の齋藤専務はカメラ取材に応じ、苦しい胸の内を吐露します。   青森県米穀集荷協同組合 齋藤猛専務 「集荷団体は全農(JA)やうちの組合だけではない。他にもいろいろコメを扱う人たちがいて、その人たちは2つの団体の価格が出た後、それに上乗せして農家を回る。『うちはこっちより高くする』と」    こちらの集荷団体では当初、青森県産の「はれわたり」と「まっしぐら」の概算金を去年より1万1000円高い2万6000円に設定していました。

 ところがその後、4000円を上乗せし、3万円の大台に乗せます。その訳は。

齋藤猛専務 「2万6000円の概算金であれば、また去年の二の舞い。出荷契約している農家の76%しかコメが集まらなかった。あとの24%は庭先で消えた。高い方に流れてしまった」

 きっかけは、“令和の米騒動”と呼ばれたコメ不足です。

 記録的な猛暑の影響などを受け、去年の夏ごろには店頭に並ぶコメが消えました。その結果、新米の価格競争が起き、JAなどの集荷団体に平年よりもコメが集まらない事態となりました。

齋藤猛専務 「(これまでの)概算金は安すぎたと思う。農家はコメを作るためには燃料も資材も高騰しているなか、我慢してコメを作ってきた。私たち集荷団体も安すぎたのは反省している。再生産できないという金額だったので。農家の人たちに保証ということでまず安心させて、その後、状況を見てまたプラスするなどの手段で今年は」