地域猫は、飼い主はいませんが不妊などの手術を受けて地域の人やボランティアに見守られながら暮らす猫です。無責任に命を増やさず、猫を守るために活動するボランティア団体です。

 東北有数の繁華街、仙台市青葉区の国分町では夜遅くまでにぎわう街の片隅に息づく小さな命があります。誰にも飼われてはいませんが、ある人たちに見守られながら暮らしている猫です。

 世話をしているボランティア団体の日本ネコスクは、国分町を根城とする30匹ほどの猫の餌やすみかを管理しています。メンバーの伊藤昇さんは、駐車場管理の仕事をしながら猫の面倒を見ています。
 伊藤昇さん「この猫はトラです。おっとり猫ですね。どこかで飼われてた猫だと思うんですよね。駐車場のみんなはお客さんも朝来るとおはようで、帰りはバイバイってしていくので、幸せな猫ですね」

地域猫を守る

 寒くなる時期を前に、猫のハウスの衣替えです。
 伊藤昇さん「夏用の冷たいシートなので、中を掃除しながら暖かいシートに取り替えていきます」

 国分町周辺に猫のハウスは約30カ所あります。狭くて暗い場所を好む猫に合わせて設置するため、人1人が入るのも一苦労です。
 伊藤昇さん「猫ちゃんも汚い所は嫌だと思うので、きれいに暖かくしてやるのが1番。人間がやらなければ、猫ちゃんはできないので自然に行動、自分で行動してやらないといけないなっていう気持ちですね」

 日本ネコスクには約40人のメンバーが所属し、その職業は居酒屋の店主や不動産経営者など様々です。活動をSNSで共有することで、猫たちを24時間見守っています。
 ハウスの衣替えが終わると、地域の清掃活動にも参加します。猫たちが暮らす環境を守るため、吸い殻などを丁寧に拾っていきます。

猫が暮らす環境を守る

 この日、午前3時にメンバーが国分町に集まりました。最近見掛けるようになった子猫を地域猫にするため、捕獲を試みます。
 地域猫活動が目指すのは、数が増えすぎて人間の目が行き届かずに飢えや寒さなどで命を落としてしまう猫を無くすことです。このため、地域に住む猫を捕まえ不妊や去勢の手術をした上で元の場所に戻します。

 捕獲器の下に匂いが強いチキンを置き、おびき寄せる作戦です。約2時間後に猫が入ったとの一報があり駆け付けると、子猫が入っていました。
 落ち着かせて朝を待ち、地域猫活動に協力する動物病院に連れて行きます。
 動物病院では採血して病気の検査をした後、不妊手術をします。
菅原動物病院菅原康雄院長「みんなやっぱり同じ命だもの。命あっての物種だけども、やっぱりそこは命を大切に長く1日でも長くしていかないと」
 子猫は生後3カ月から4カ月ほどの雌で、しばらくはメンバーの自宅で保護し健康状態に問題が無ければ外で地域猫として見守っていきます。

 日本ネコスクが発足した5年前には、国分町周辺に50匹ほどいた野良猫は活動によって現在は30匹以下に減りました。
 場所の提供など住民の協力が欠かせない地域猫活動ですが最初は理解が得られず、野良猫に餌をやって増やしているのではないかといった誤解も多かったといいます。

 しかし、街の清掃などを続けてきたことで徐々に理解が広がり、今では地域猫活動のため募金箱を置く店も増えています。
 「こういう街だと猫も集まりがちだし餌をあげる方もいらっしゃるので、地域猫を保護する活動の方がちゃんと見てらっしゃるっていうのは、働いてる私たちも安心だなっていう感じはします」

地域猫と共生を

 地域猫活動は、自治体も推進しています。仙台市では、飼い主のいない猫の不妊去勢手術に1匹当たり最大9000円の助成金を出しています。
 活動で野良猫の繁殖が抑えられたこともあり、仙台市の動物管理センターに収容される猫の数は、10年間で5分の1以下となりました。

 また、地域猫活動に取り組む町内会からは猫のふんなどの苦情が大幅に減ったという声も寄せられていると言います。
 仙台市動物管理センター釜谷大輔所長「地域猫活動に対する正しい知識を認識いただいて、活動に取り組む希望があれば是非まずはいろいろご相談いただきたいと思ってます」

 日本ネコスク井上規夫理事「どうしても一緒に生活をしなきゃいけない、一緒にこの街で商売もしなきゃいけない、であれば少なくとも環境だけは良くしていった方が国分町にしては住みやすいんじゃないかなと。街の中で普通に猫が安心して歩いてる姿を観光客の方が見て、いい街だねって思われるようにしたいなと思っています」
 尊い命を無責任に増やさず守るための地域猫活動は、周りの理解を得ながら活動を続けていくための努力が続きます。