民間のアイデアや技術を活用して自治体の抱える課題を解決する、官民連携が広がっています。私たちの身近な所でも様々なかたちで成果が現れています。
仙台市太白区の東四郎丸小学校は、災害時に自宅に戻れなくなった人が一時的に滞在したり生活したりする場所として、仙台市の指定避難所になっています。
中津川夏帆記者「玄関にはボックスが設置されていて、大津波警報が発令されるとボタンを押せば学校の鍵が取り出せるようになっています」
機器の名称はIoT避難所キーボックス、中には校舎の職員用通用口の鍵が入っています。普段は開けられませんが、全国瞬時警報システム=Jアラートで大津波警報などの情報が発信されて、避難所の開設が必要となった際にインターネット経由で情報を受信しキーボックスの鍵が開きます。
特に津波の浸水想定エリアにある避難所では迅速な避難が求められますが、これまでは鍵を持った教員や市職員が到着するまで避難所を開設できず、先に避難してきた住民は避難所に入れないまま2次被災するリスクがありました。
この課題を解決したIoT避難所キーボックス、兵庫県に本社を置く情報システム関連の会社が開発しました。元々は遠隔操作でボックスの鍵を開ける製品を販売していましたが、Jアラートとの連携による自動化や停電に備えた自治体からの要望を受けて、バッテリーの搭載など機能を追加しました。
DXANTENNA辻真一さん「Jアラート連携というのは、我々が全然想定してなかったニーズです。他の自治体も同じような課題があって、どちらかというとそちらのJアラートと連携できるという方に、他の自治体の方々が結構反応を示されたということが大きな点ですね」
仙台市と兵庫県に本社を置く企業を結びつけたのは、仙台市が進める防災とIT技術を掛け合わせたBOSAIーTECHという事業でした。
仙台市イノベーション企画課小池伸幸課長「色々な防災現場を企業と一緒に視察したり、仙台市をはじめ近隣の自治体をフィールドにして色々な実証実験を行ったり、そういったところを通じてテクノロジーを活用して、新しい解決策を企業と一緒に生み出していくということを目的にしています」
避難所の鍵が入ったボックスは現在、仙台市の指定避難所4カ所に設置されていて、2025年度は更に3カ所で導入されます。仙台市だけではなく、北海道や青森県の自治体でも導入が決まっています。
自治体と民間企業の連携で課題を解決する官民連携は、双方にメリットがあります。
仙台市イノベーション企画課小池伸幸課長「自治体側としては企業からの新しい視点を防災や関連課題に対して知ることができる、企業にとっても自治体の課題はなかなか外から見ていると見えにくいのではないかなと思うので、新しいソリューションの開発に生かしていただければありがたいなと思います」
企業側は、自治体の要望に沿った製品開発は売上拡大につながりやすいと話します。
DXANTENNA辻真一さん「自治体の反応を見て、これは商品にしてもちゃんと売ることができると確信が取れるところと合わせて、実際に自治体の方が採用されるところのプラスアルファを使って、システムを展開していきたい」
今回は仙台市独自の事業から実現した官民連携ですが、国も積極的に支援に取り組んでいます。内閣府が解説しているプラットフォームは、自治体と民間企業をオンラインでマッチングする仕組みです。自治体はプラットフォームに今抱えている様々な課題を登録し、それに対して民間企業や団体は課題の解決につながる独自の技術などを提案します。
17日には仙台市の中小企業活性化センターで、対面型のマッチングイベントが開催されます。自治体と民間企業が直接意見交換できるイベントで、宮城県や仙台市など23の自治体が参加予定で、エントリーを受け付けています。詳しくは、「官民MEET宮城」で検索してください。