養殖のカキが広島県などで大量死して問題となっていますが、宮城県でも水揚げしたカキのうち7割近くが死んでいる海域があることがkhbの取材で分かりました。海水温の上昇などにより、カキが死んでしまう被害は深刻となっています。こうした事態を打開しようと、女川町では卵を持ちにくくするなどして生存率を高めた三倍体と呼ばれるカキの試験養殖が始まっています。
女川町で20年以上カキを養殖している高泉元幸さんです。2年物のカキの出荷時期を迎えましたが、水揚げしてみると。
高泉元幸さん「分かりやすく言うと、死んでんですよね。他にも株あるんですけど、死んでいるんですよ。4個中2個、中身が無い」
例年10トンほどのカキを出荷していますが、海水温の上昇により2024年は半分ほどが死滅し2025年は3分の1が死滅と、苦しい年が続いています。
高泉元幸さん「水温が養殖する上で限界水温があるのかな。暑さに一番強いものがカキだと思っていたんですよ。そのカキが死ぬくらいなので」
死滅を引き起こす要因の1つと考えられているのが、過剰な放卵です。
カキは海水温が高い夏場に放卵しますが、この時にエネルギーを消費しています。近年は、海水温の上昇でひと夏に何度も放卵を繰り返すようになり、体力を失って暑さに耐えられなくなっています。
こうした事態を打開するために、高泉さんは三倍体と呼ばれるカキの試験養殖に取り組んでいます。
通常のカキは二倍体と呼ばれ、染色体を2組持っています。三倍体は、人工的に染色体を3組に増やし卵や精子を作りにくいことが特徴です。
このため三倍体カキは、夏場に放卵を抑えて体力を温存することができ、通常のカキより死滅を減らし、更に身の成長が進むと期待されています。
高泉元幸さん「環境変化に敏感になっていくしかない。対応して色々と勉強していかなければいけない。生産安定できることは、安定しないことには加工屋さんにしても消費者にしても安定して供給できませんので、生産を安定させるのが一番重要かなと思っています」