東日本震災によって住民同士のつながりが途絶えてしまった宮城県名取市閖上で、地域コミュニティ再建のため大きな役割を果たしてきた交流拠点、閖上サロンが12月末で役目を終えます。

 災害公営住宅の1階にある閖上サロンには、住民たちの笑い声が響きます。

 住民「お茶飲み場所。愚痴こぼし。この場所で話すのは楽しいよ」

 津波で多くの家が流され約750人が犠牲となった閖上地区では、避難生活が長期化し住民同士のつながりが途絶えました。

 2017年、復興住宅の完成と共に閖上サロンが誕生しました。

 住民「まだ慣れないから周りに誰入っているか分からないけど、こういう場所を設けてもらって誰かに会えるかな、知っている人に会えるかなと思って」

 閖上サロンでは、手芸やスポーツなど様々なイベントを定期的に開催して一度失われたつながりをもう一度作ってもらおうと交流を後押ししてきました。

 サロンの運営に当たってきた、菊地麻理子さんです。

 名取市サポートセンター菊地麻理子さん「皆さんにとってコミュニケーションの手をつなぐ人たちを増やしていく場所だったのかなって思います」

 住民「みんな被災して初めて8年前に入ったんだここにね。その時やっぱりみんな寂しい顔していたよね。それでみんなでここで塗り絵したりトランプしたり」「顔見知りとかも一部はいるけど、名前分からないとか最初はね」

 住民たちはサロンでの交流を通じて、徐々に心を通わせていきました。

 「コロナの時にみんなベランダに出て体操をやったことかな、頭に残ってるのは」

 感染対策のためサロンは閉鎖になり、代わりにベランダでテレビ体操をしました。

 名取市サポートセンター麻理子さん「ベランダに出てきていただいて、私たちが団地の下で指揮をとりながら体操をするとそこの方も出てきてくれた、元気そうだねっていう見守りができた」

 復興住宅の完成から住民たちを支え続けて8年が経過し、国からの交付金の打ち切りを理由に、閖上サロンは26日で閉所を迎えます。

 住民「思い出の場所。やっぱり無くなるってことは寂しいですよね。作り物を教えてもらったりほんと楽しかったです」「サロンに今までおんぶしていた。今度はおんぶしないで、自分たちでなんとか立ち上がんなくちゃなんないわけだ。色々な遊び事とか年寄り向けの何かを考えながら、今からやっていかなきゃならないんじゃないか」

 菊さんも寂しさを感じる一方で、これまでの活動を通して住民たちの変化を肌で感じています。

 名取市サポートセンター麻理子さん「皆さんの拠り所だったのかなととても感じましたね。皆さんにありがとうって言ってもらえて。何とか自分たちでやっていこうって言ってくれているところもあるので、そこがうまくつながってくれたらいいなと感じています」

 閖上サロンで紡いだ絆は、これからも住民たちの心を支えていきます。