22日に発生した岩手県大槌町の山林火災は、延焼が続いています。現地を取材したkhb東日本放送の中島秀太記者に聞きます。

 山火事が発生した翌日の23日から27日まで、岩手県大槌町で取材に当たりました。現場で感じたことを、3つのポイントにまとめました。延焼の拡大、生活への影響、避難行動です。

 まずは、なぜここまで延焼が拡大したのか。気象条件や特有地形が影響していました。
 中島秀太記者「大槌町の現場です。山の斜面を火が下りてきていることが分かります。建物のすぐ近くまで火が迫っていて、危険な状態です」

 22日、大槌町の2か所で発生した山林火災は発生直後から一気に延焼が広がりました。大槌町の消防団で初期消火に当たった芳賀潤副団長は、延焼拡大の一因に当日の悪条件を挙げます。
 大槌町消防団芳賀潤副団長「ものすごい音ですよ。杉がバリバリバリと焼けてワーッと煙と炎が立ち上がる。風と乾燥。注意報が出るような状況で、ましてや強風で悪い環境がそろってこれくらい延焼している」

 発生翌日の23日からは、緊急消防援助隊として宮城県からも第1陣として26隊90人が現地入りし、活動に当たった人たちは、地形の特徴による消火の難しさを指摘しています。
 名取市消防本部熊谷優消火隊長「山肌が急だということが活動の支障となっている。消防用ホースが進入できる箇所であれば一気に火点を攻撃する。ホースが進入できなければ、ジェットシューターを背負い人海戦術で消火に当たっている」

 様々な悪条件が重なって延焼が拡大してしまい、焼損面積は28日午前6時時点で1633ヘクタールと拡大を続けています。
 延焼を拡大させた原因は、乾燥と風で一気に広がる(乾燥注意報・強風注意報発表中)、急斜面が多く人が近づきにくい、消火栓から出火地点が離れているという点が消火活動の妨げとなっていました。

 仙台市消防局が今回現場に投入した海や川から水をくみ上げて2キロ先まで水を届ける特殊な消防車や、人や機材を載せて山の細い道でも走れる小型車両も駆使して、2025年2月の岩手県大船渡市での山林火災など教訓を基に、活動に当たっていました。
 ただし26日まで雨が全く降らなかったことや、急斜面で機材を駆使しても地上からは近づけない場所があったことで延焼を食い止めきれず、長期化しています。

 現地の人たちの生活に影響が出ています。町一帯に充満する煙に焦げ臭いにおい、時間帯によっては数百メートル先がはっきり見えないこともある中で、コインランドリーの利用が増えています。
 中島秀太記者「大槌町にあるコインランドリーです。こちらでは外に洗濯物が干せず洗濯機や乾燥機ほとんどが埋まっています」
 乾燥機の利用が増え、時間帯によっては待ち時間が発生していました。
 利用者「乾燥機をかけに来たんですけど外が煙と灰ですごいので、ちょっと外に干せないので」
 煙は健康被害のリスクもあります。マスク無しでは歩けない状態で、実際にの煙でPM2.5の濃度が上昇しいました。

 学校の休校が続く中、子どもたちの居場所を作ろうと大槌町のNPOなどが避難所の一角に遊び場を設置しました。子どもたちへの支援が不足した東日本大震災を教訓に、大槌町の関係機関で事前に支援のネットワークが構築されていました。東日本大震災の教訓が、迅速な支援につながっていました。

 要配慮者や災害弱者の支援については、火の手が迫る中100人余りの利用者を迅速に避難させた高齢者施設があります。
 大槌町浪板海岸のホテルには、大槌町2カ所の特別養護老人ホームから利用者115人が集団で避難していました。発生当日の22日夜に施設に火の手が迫り、施設の判断で2つの施設の利用者を集団でホテルに避難さました。

 施設を利用していた56人は、建物に火の手が迫り山火事発生当日の22日午後8時ごろ、別の高齢者施設に避難しました。ところが、風向きが変わって施設の利用者と一緒に115人がホテルへと2次避難することになりました。
 堤福祉会防災担当芳賀新さん「ほとんどの利用者が歩けない。車いす車両も、数が限られている。1人ずつ乗せて、何十往復したか。利用者からはどこに行くの?と話をされて、逃げている最中。受け入れてくれたのがホテルだったので、ホテルに泊まリにと笑いながら不安にさせないように」

 全員が避難を終えたのは、日付が変わって23日午前2時ごろでした。
 避難した施設利用者「火事といえば、ドキドキしてくる。どうなるのって、最初はね。避難してもらえれば、ありがたいと思ってね。お手数掛けるけどね」

 しかし、ホテルには介護設備が無く延焼が長期化したことから、3日後の25日には更なる避難を決めて沿岸部の大船渡市や陸前高田市など、受け入れ先の施設へ分散して避難しました。
 社会福祉法人堤福祉会芳賀新さん「利用者の人を受け入れてくれて大変感謝しているので、早く鎮火して皆、戻る日を。それまで頑張る」

 当日のうちに利用者を避難させ3日後には分散避難させたことについても、東日本大震災の教訓が生かされていました。施設では定期的に利用者たちの避難訓練を実施し、更に岩手県の同じ高齢者施設との間で災害時の受け入れ体制を事前に構築していたということです。
 こちらの施設では、2025年の大船渡市での山林火災で、逆に大船渡市にある高齢者施設の利用者を受け入れていました。

 小さな火種がすぐ燃え広がる危険性、延焼したら止められない、岩手県と地形が似ている。今回の山林火災の理由は特定されていませんが、火の不始末などに十分注意する必要があります。
 東日本大震災で大きな被害を受けた大槌町では、至る所で震災の教訓が生きていたことが印象的でした。