未来の消防士を育成する宮城県消防学校が、全国でも珍しい独自の長期カリキュラムで新人隊員を育成しています。
4月、宮城県の11消防本部に採用された消防士106人が、仙台市青葉区の宮城県消防学校に入校しました。
末永孝太朗さん「小学生の頃に海で溺れていた友達を助けた際に感謝の気持ちを伝えられ、その時に感謝されることの大切さやうれしさを学んで消防官を目指しました」
佐藤七海さん「身近にいた女性救命士の方がすごい格好良いなと思って、消防を目指しました」
消防学校の1日はあいさつ指導から始まります。授業は1時限50分で、1日7時限です。消防に必要な法令などを学ぶ座学をはじめ、消火活動に必要な訓練を重ねます。宮城県消防学校では、全国でも珍しい独自のカリキュラムで新人隊員を育成しています。
岡本裕子教務主任「宮城県消防学校の特色として初任総合教育という、まず基礎的なことを学ぶ初任科、救助救急の専門的な訓練を行う救助科と救急科を総合的に行う教育となっております」
新人隊員は寮生活を送りながら1年間、消火や救助に必要な知識と技術を学びます。全国的には初任教育として半年間学ぶことが一般的ですが、宮城県消防学校ではその後も半年間、救助や救急など専門的な教育を受けます。救助や救急まで学んだ上で現場に配属されるため、即戦力として活動できます。
独自の教育カリキュラムは、1996年に導入されました。1995年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに救急救命への関心が高まったことから、初任教育に加え救助科と救急科を組み合わせた教育が始まりました。
佐藤優斗さん「救助科が夢なんですけど、ポンプ車であったり消防活動というのは部隊の連携を図る上で必要になると思うので、幅広く技術や知識を生かしていければ」
午前中は、ポンプ車操法の訓練です。ホースの扱い方や放水時の角度など、消火活動の基礎を身につけます。午後は4時間、3つのグループに別れて救助の訓練です。
更に、ロープの正しい扱い方と結び方を学ぶ結索訓練のほか、約9メートルの三連はしごを使った救助訓練では、はしごの設置や昇り降りといった基本動作に加え、隊員同士が安全を徹底できているかどうかも確認します。
そして、訓練の中でも難易度の高いロープ渡りは体のロープを巻き付け、建物と建物の間を渡ります。高い所や川の中州などに取り残された人を救助するために必要な技術です。
佐藤優斗さん「初めて高所での渡過訓練を行ったんですけど、今回は困っている要救助者の方であったり傷病者の方のことを考えて、絶対に渡り切ってやろうと気持ちが出て最後まで渡り切ることができました」
谷藤駿平教官「最初の渡過訓練は、なかなか1回で渡れない学生もいたと思います。ただやはり要救助者は待っているというところで強靭な精神力、諦めない気持ちを養っていただきたい」
厳しい訓練を終えた新人隊員たちにとって、夕食の時間はつかの間の休息です。夕食後は自由時間ですが、新人隊員たちは夜もトレーニングに励みます。
「背中を使うことが多いので、ロープを引いたりとか懸垂は大事だと思います」
この日は、初任教育のメインイベントである強歩訓練です。過酷な現場を想定し防火衣を着用して水が入ったリュックを背負い、宮城野区の宮城県消防学校から若林区の震災遺構荒浜小学校までの往復29キロを歩きます。
最高気温は23℃、風を通しにくい防火衣を着用すると体に熱がこもり、想像以上に体力を奪われます。途中、要救助者に見立てた仲間を担架に乗せて声を掛け合いながら運びます。疲労が限界に近付いても、前を向き笑顔で声を掛け合います。仲間と励まし合いながら、歩みを止めることはありません。
出発から約10時間、106人全員が誰1人欠けることなく29キロの道のりを歩き切りました。
古川華子さん「足が結構重くなって疲れているんですけど、私はきついって思うとどうしてもきついって気持ちに引っ張られて気持ちが下がってしまうので、だからこそ自分で声出しながら自分のことも周りのことも鼓舞するように意識しました」
猪狩豪之さん「疲れました。長距離をみんなで歩くことは初めてでしたが、声を掛け合いながら助け合いながら走れたことが今回の収穫です」