新型コロナ感染者の急増で保健所の業務はひっ迫した状態ですが、支援するために設けられた宮城県の部署も限界が近づいています。現場で何が起きているのか、密着しました。

 保健所の業務を支援するため、7月13日に宮城県庁の17階に設けられた疫学調査センターです。
 毎日、県庁内の各部署から派遣された職員約30人が、県内にある7つの保健所と支所が担当する感染者について調査しています。
 事務スタッフ「これから調査する案件。今は150件くらいですね」

宮城県の疫学調査センター

 職員には、初めに発生届と言われる書類が配られます。感染者の連絡先や症状、基礎疾患や同居家族の有無などの情報が記されていて、記載内容に誤りがないかや症状に変化がないかを電話で確認していきます。

 保健師「症状が出始めたのは21日の木曜日でよかったですか?保育園は行って帰ってきてから?途中から症状?夜?熱は最高何℃までいきましたか?結構一気に行きましたね」
 こちらは保健師の資格を持つ職員で、子どもが感染した親から聞き取りを行いました。
 症状や何℃まで熱が出たのか、咳や体の痛み基礎疾患の有無など50以上の項目を詳細に聞き取り、その場で入院は必要ないと判断し自宅療養としました。
 保健師「慣れない環境ではあるのでどう対応したらいいか迷ったりもするが、その時その時でたくさん対応しなければならない人が待っているので。緊急対応が必要な方にすぐ対応し医療につなぐことができるように気を付けて色んな聞き取りをしている」

保険士の資格を持つ職員も

 このセンターには、保健師の資格を持つ職員も他部署からの応援として参加していて、健康観察や療養先の決定、療養解除などをその場で判断しています。
 患者1人の聞き取り調査にかかる時間は約30分。終わったらすぐに次の感染者の調査に取り掛かります。聞き取りを終えた後のデータ入力などもあり、1人が1日に対応できるのは7人から8人が限界です。
 一人一人ケースが違うため作業量は膨れ上がり、遅い日では夜8時まで電話が離せない事もあります。

 膨大な仕事量に、これまで保健所の業務に携わったことのない職員からは戸惑いの声も聴かれました。
 秘書課からの応援職員「保健福祉というかコロナの関係で感染者とお電話する機会がなかったので、改めて保健所の業務が大変なんだなと今、実感しながら毎日お手伝いさせていただいている形ですね」
 7月下旬から県が管轄している仙台市以外の地域でも連日1000人以上の感染者が確認され想定を上回るペースで感染が拡大したため、保健所の支援で設けたこのセンターでも人手が不足しています。

支援のためのセンターも人手が不足

 陽性確認から調査の電話までに3日程度経過することが多く、ほとんどの感染者は発熱や頭痛など多くの症状が落ち着いていて「いつ外に出られるのか」という問い合わせが多いということです。
 「8月1日で療養解除の見込みではあるんですけど、最後の3日間ですね、症状が改善しているかどうかをフォーローアップセンターに報告いただいた内容で確認させていただいて、最終日に解除しますという連絡が行くと思います」
 療養解除までの流れや手順を知らない人も多く誤って外出しないよう丁寧な説明が欠かせないということです。

 そして、こんな指摘も。
 宮城県新型コロナ調整室渡辺一晃総括室長補佐「調査の着手が若干遅れ気味になっていることで、患者さんへの連絡が遅かったということでのお叱りの言葉であったり、そういった声がけっこう届いております。本当に必要な支援を必要としている方への着手が遅れてしまうこともありますので、まずは事務が滞らないようないろいろな工夫を重ねてきているところではあります」

 県は電話での調査には限界があるとして、高齢者以外については携帯電話のショートメール機能を使った簡易的な調査に切り替える予定ですが、それでも感染者の急増に対応しきれるかどうか分からないということです。
 宮城県新型コロナ調整室渡辺一晃総括室長補佐「県庁全体での応援を借りながら、なんとか数をこなしているところでございますが、確かに職員の中にはだいぶ限界を感じている者もおり、ちょっとそこは心配しているところであります」

 調査の中で感染した方から多く質問されるのは、「もう症状はない。療養解除はいつになる?」という内容です。
 感染者の療養解除は、発症した日から10日経過。その最後の3日間、平熱が保たれていてかつ、呼吸器などに以上が無ければ療養解除となります。
 例えば、発症日が8月3日だった場合は、8月13日までの10日間の療養が必要となり8月11日から13日までの3日間平熱でかつ、呼吸器に異常がなければ療養解除となります。
 続いて濃厚接触者についてです。同居家族が感染した場合は濃厚接触者となります。現状では5日間、自宅待機が必要で家庭内で部屋を分けるなど感染した家族と接触しないことが必要です。
 県の担当者は、どうしても外出する必要がある場合は感染対策を徹底し外出してほしいと話していました。