新型コロナにより冷え込んだ観光業に対する政府の喚起策、全国旅行支援が始まって間もなく1カ月です。にぎわいを見せる行楽地の影で、宿泊施設では人手不足や事務手続きの煩雑さによるスタッフへの負担が増え、離職者が増えたという声まで上がっています。

 日本三景松島の眺めが露天風呂から楽しめる、宮城県松島町の温泉宿ホテル絶景の館です。

 9日午後に訪ねると宿泊客の姿は無く、従業員や専門の業者が客室の清掃やエアコンのメンテナンスに追われていました。

 石川勇太社長「人手不足があるので、割り引きが始まる前から忙しくなったら大変だと思って、毎週水曜日は休みにしてメンテを込めて従業員の休み確保に臨んでいます」

 こちらの宿では、従業員25人の休みを確実に取るため、2020年に政府が行ったGoToトラベルの期間中に、毎週水曜日を定休にすることしました。

 石川勇太社長「コロナ前からうちは、客室は部屋食中心でやらせていただいていたので負担は正直変わりはない。やっぱり休みの確保だけ一番難しくなっている

 県ホテル旅館生活衛生同業組合が毎月行っている調査では、県内の宿泊施設の宿泊人数は10月、2022年度になって初めて新型コロナの感染が拡大する前の2019年の同じ月を上回りました。

 一緒に行ったアンケートでは、全国旅行支援をめぐり「問い合わせの電話が鳴りやまない」「煩雑な事務量が増加した」「人員不足で100%稼働できない」などといった声が多数寄せられました。

 中には「スタッフへの負担が増え、離職率が上がった」「人手が不足し忙しくて、離職する人が出てきた」という声も複数ありました。

 こちらの宿では、従業員の負担を考えて完全に休める定休日を設け対策をとってきたため、離職は防げていますが課題は残ったままです。

 石川勇太社長「フロント業務が増えてしまって。最初はお客様から遅いとかもうちょっと早くできないのとか結構言われていたが(最近になって客に)大変だということがやっと認知されてきた」

 制度が始まって間もなく1カ月が経ちます。全国旅行支援によって煩雑になった業務は今も続いていますが、多くの人に利用してもらいたいと対応しているということです。

 石川勇太社長「この割り引きがあって初めて来ていただいた方に、もう一度来てもらおうかと言っていただくために今励んでリピーターを増やしたいと思っています」