超高齢化社会を背景に重要性が高まっている、緩和ケアについてです。宮城県北部を中心に在宅診療に取り組む診療所と緩和ケア病棟を持つ仙台市の病院が連携して、緩和ケアを担う看護師を育てる取り組みが始まっています。

 看護師鈴木実咲さん「測りますよ。血圧も134の88で良さそうです」
 大崎市にあるやまと在宅診療所の看護師、鈴木実咲さんです。登米市出身で、看護師になって6年目。大学を卒業後、東京の大学病院の救命救急センターなどに勤めていましたが2022年4月、宮城県に戻って在宅診療の道を歩み出しました。
 医師や診療アシスタントとチームを組んで、大崎市や美里町などの患者の元を訪れています。

 利用者「今はですな、車いすに乗ってちょっとリハビリの練習をしてるんですよ」
 やまと在宅診療所看護師鈴木実咲さん「そうなんですね。訪問リハビリさん、入ってましたっけ?」
 利用者「訪問リハビリも入ってます。自分で」
 やまと在宅診療所看護師鈴木実咲さん「自分でも」
 在宅診療を利用している人「まあ、やっぱり良いですね。随分違います。(通院していた時と比べて)全然、体が楽になったんですよ、ええ」
 やまと在宅診療所看護師鈴木実咲さん「やっぱり近いので、患者さんと家族と私たちが。なので、自分が親身になれるというか、やっていてそこはすごくやりがいがあります」

 鈴木さんが働く診療所を運営する医療法人社団やまとは、東日本大震災の被災地支援をきっかけに2013年4月に設立されました。
 登米市や大崎市など8カ所の診療所を拠点に、医師が都市部と地方を行き来しながらチームを組む形で約2000人の在宅診療を担っています。
 超高齢化社会を背景に近年、在宅診療のニーズは高まっています。
 医療法人社団やまと田上佑輔医師「一歩、東京とか都市部を出ると、ほとんど医者がいないような地域が日本に多い中で、この東北では特に求められるのが僕たちにとって在宅診療でした」

 厚生労働省によると、在宅診療を利用した人は2012年には1カ月平均48万3000人でしたが、2020年には81万9000人と年々増えています。
 また、内閣府の2018年の調査では、60歳以上の約半数が最期を迎えたい場所として自宅を挙げています。
 このような中で、重要性が高まっているのが、患者や家族の痛みや苦しみを和らげる緩和ケアです。

 仙台市宮城野区にある光ヶ丘スペルマン病院。9日、ここで緩和ケアに関する勉強会が開かれました。
 光ヶ丘スペルマン病院は、1998年に宮城県で初めて緩和ケア病棟=ホスピスを開設し、早くから終末期の患者のケアに力を入れてきました。
 2022年11月に病院を運営する財団法人の理事長に、在宅診療所やまとの田上佑輔医師が就任。緩和ケアなどの分野で連携していくことになりました。

 この日の勉強会のテーマは、エンゼルケアです。患者や家族の尊厳を守りながら、その人らしい看取りを迎えるためのケアで、亡くなった人の姿を生前に近づけるように顔にメイクを施したり、体の状態や身だしなみを整えたりします。
 講師を務めるのは、光ヶ丘スペルマン病院の緩和ケア病棟の看護師佐藤あづささんです。
 光ヶ丘スペルマン病院看護師佐藤あづささん「エンゼルケアというと患者さんのお体の話だけと思いがちですけれども、エンゼルケアの中にはご家族のケアも入っています」

 この勉強会には、やまと診療所の鈴木さんも参加。亡くなった人の体の変化に応じた対応の仕方や、エンゼルケアに臨む時の心構えなどを学びました。
 やまと在宅診療所看護師鈴木実咲さん「私が足りない在宅の知識ってたくさんあって、その中の一つが緩和ケアで在宅でも緩和ケアをされている患者さんはいっぱいいるで、これからも緩和ケアについて勉強していきたいなと思います」

 講師の佐藤さんは、通算21年にわたってこの病院の緩和ケア病棟に勤務。2009年には、日本看護協会の緩和ケア認定看護師の資格を取得しています。
 緩和ケアについて専門的な知識と経験を持つ緩和ケア認定看護師は、全国に2596人。宮城県では39人が認定を受けていますが、まだまだ少ないのが現状です。
 緩和ケアの質を高めるには、看護師の果たす役割が重要です。
 光ヶ丘スペルマン病院看護師佐藤あづささん「看護師の基本的な看護ケアの知識として、緩和ケアというのはやはり必要かなと思うんですね。穏やかに少しでも過ごせるようにっていう範囲が広いっていうんですかね。看護師がすごい活躍できるというか、やりがいを持って働けるところだなって思います」

 緩和ケアを担う看護師の育成へ。在宅診療所と病院との連携は、病院のホスピスから一時的に自宅に戻る人や自宅からホスピスに移る人の生活の質の向上につながると期待されています。
 光ヶ丘スペルマン病院看護師佐藤あづささん「在宅で緩和ケアがどういうふうに行われているのか私も知りたいですし、(病院の)スタッフのみんなも知っていくことで在宅の患者さんの様子とかを考えながら病院での生活のお手伝いができるのかなと思う。
みんなで患者さんにとって良いと思える緩和ケアが考えていけるようになりたいなと思います」